ホシノモリト
北上貞二
第0話 記録と記憶
正直、自分の目を疑ったよ。俺はこのままだと世界が終わると思ったね。
大規模な戦闘の跡、崩壊する街、転がる死体。そして、神々しくも破滅的な光を放っているデカい怪物が、静かな唸りを上げているんだ。
今でこそそれがセネス、しかもクイーンだって事は分かっているが……。ああ……クイーンは死の寸前だったと思う。
そして、クイーンの近くにもう2人。1人はただ泣き叫び、もう1人は何か黄金?のようなオーラを纏って、クイーンと対峙してた。
クイーンをあと一歩まで追い詰めていたんだよ。英雄でも王国兵でもない、齢10も満たないただの子供がね。
なぜクイーンにとどめを刺すのを遮って、俺がその子供の救助を優先したのかって?
……良くない予感がしたんだよ。ただそれだけさ。 正しい決断をしたのかはわからない。でもあの光はきっと、世界を……。
―元王国兵の証言―
グラン・セネスの襲来、それは人類にとってあまりにも大きな影響を与えた。我々の知らない、広大な世界があることを学んだ。そして如何に小さな世界で生きていたのかも学んだ。我々は正しい決断を下せたのだろうか。正しい道を歩んでいるのだろうか。
我々はこの転換期をどのように乗り越えないといけないのだろうか。
正解はない。だが、我々なりの答えを見つけなければならない。
―遺跡から見つかったある書物の一部分(作者不明、大部分は欠損)―
満身創痍、身体の感覚はない。眩い光に包まれて、ただ目の前の敵を討つだけ。
憤怒、憎悪、その感情に支配され、身を任せていたつもりだったが、案外、頭は冷静さを保っているみたいだ。状況を俯瞰して見る。あたかも幽体離脱のような感覚になる。
後方、聞き慣れた声。泣き叫んでいる。そしてもう一つ、枯れた叫び声。
「なんだ……?この光は!?少年!!大丈夫か!!今向かうぞ」
ああ、心配しなくていい。もう全て終わらせる。
さらなる光に包まれて、巨悪に拳を振りかざす。
―とある少年の記憶―
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