第28話 ハーフエルフの長くなるお話 ①
私達の両親がこの星に辿り着いたのは、私達が生まれる少し前の事だったそうだ。
船団を組んでの航行中に不調をきたした私の両親達が乗った船は、船団を離れて一番近くにあった星系の第三惑星である水と緑豊かなこの星に不時着した。
不幸なことに、不調の原因のみならず不時着時の破損から同乗したエンジニアでは再び飛び立てるまで修理することは出来なかった。
船団との通信が途絶えるギリギリの距離まで救助依頼をかけたが、スケジュール上救助隊の派遣は出来ないと結論付けた本船団の通信に絶望した乗員たちは、次の船団が近くの星系を通過するまでコールドスリープで待つことを選んだ。
次の船団の通過予定は約一万年後。
こんな辺境の地まで派遣されるのは滅多に無いことだから仕方ないとはいえ、長すぎる待ち時間だった。
勿論、無人と言う訳にはいかない。
誰かが保守と通信要員として残らなければならない。
定時連絡が途絶えれば全滅として扱われ、要救助リストから抹消されてしまう。
その為に生まれてきたのが、『私達』だった。
船長で純粋種エルフである母と、エンジニアとして同乗していた獣人である父と。
誇り高きエルフが、やむを得ぬ事情とはいえ『雑種』を生むことなど勿論あり得ず……
人工授精と人工子宮から、私達兄弟姉妹は生まれた。
エルフ同士だと、人工受精からの人工子宮では成長しないことは過去の経験から証明されていた上に、純粋種エルフの寿命では救助が来るまで生きながらえる事は困難だったから。
『雑種』である私達兄弟姉妹は、過去の事例から長命であることが『確認』されている。
純粋種エルフで数千年。
『雑種』が、数万年。
エルフの成人とされる十二歳の年まで、不時着した船体と設備の保守や通信手段、生き残るための術を叩き込まれた私達は、コールドスリープに入る母と父を見送って長い『任務』に着くこととなった。
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