episode"4"

episode4.1




          ♒︎













 ポラリス集落を襲撃してからまる一週間が経った。こちらもあまり模倣アンドロイドや対兵器ロボット、そしてMETSISの仲間を消費するわけにはいかない、ということであの数で襲撃したが——




「……想像以上に被害を出せていなかった。何より戦闘員が使っていた武器……あれは——」


「どうしたよサダル。そんな考え込んで」




 少し考えつつ呟いていると、アルデスがこちらに来た。どうやら相当考えているように見えたらしい。




「いや別に、そんなに考えてないさ。どうかしたか?」


「……他のMETSIS、どこにいったんだろうなぁ、って。ほら、今の今まで連絡ついてた奴も、パッタリ途絶えただろ?まさか、ハルみたいに——」


「いや、それはないだろう。もしそれなら、あの場でハルとルミナ以外にも居たはずだ。METSISの戦闘力は人間を遥かに凌駕するもの。であればあそこに居ないのは不自然だ」


「……?そ、そうか。アタシ、頭良くないからなぁ~……それで、次のアテはあるのか?」


「……少し兵器集めに勤しむとしよう。テレスもあの有り様だからな。不用意に集落を襲って、返り討ちにあったなんてことがあれば、計画が歪むからな……それで、ルーノは?」




 サダルがそう聞くと、アルデスは奥にある民家の一部をグッドサインで差した。




「テレスにつきっきりさ。アイツ、まさかテレスがあそこまでやられるなんて考えてなかったらしいぜ……それにしても、テレスがあの様だ……いよいよ箱とのタイマンが楽しみだぜ……!!」


「ふふ、死ぬなよ?」


「誰に言ってんだ。このアルデス様がそう易々と負けるわけねぇんだよ」


「ははっそうか。期待しているよ」


「へへっ、任せな!」
















 ——占領した"シリウスの集落"にて、グータッチを交わす二人。その側で、既に"アルコル"は動いていた——。


















——そして、あの襲撃から三週間が経とうとしていたある日、ルミナとクレスだけ別行動として、山岳地帯へと赴いていた——。














「ハァハァ、ルミナ……ちょっと休憩しよう」


「ハァハァ、そう、ですね……それにしても暑いですね」




 両者ともに汗をかき、火照った身体を冷やすために木陰に入り、休憩をする。


ルミナが服の中にも風を入れようと服をパタパタさせる。そして碧髪を掻き分け、耳にかける。


その仕草に、クレスは少しだけいや、だいぶ穏やかではない。そんなクレスにルミナが話しかける。




「クレス、かなり顔が赤いですが……大丈夫ですか?」


「えっ!?い、いや……なんか凄い暑いな、今日」


「そうですね……まだ目的地まで遠いですから、ゆっくり——いや、なるべく急ぎましょう」


「……ああ、そうだな!」














——この二人が別行動しているのは、サザンクロスがルミナに話したあの"イルミナ・メルトウェル"が理由である——














 朝日が昇り始める中サザンクロスからルミナに告げられたのは、自身のモデルとなった人物が生きている、ということであった。


そもそも自身を作った博士に娘がいることすら知らなかったルミナからすれば、告げられた内容は驚きのものであった。




「私達の集落は、他の集落とは違う文化そして、違う技術で構成されているのは、見てもらえれば分かると思う」


「……はい」




 そこで一息つき、サザンクロスは朝日を見つめる。




「私が少年であったある日、未来視によってこの集落にあるアンドロイドがやって来ることが分かった。そしてそれがMETSISであることも……」


「METSIS、ですか?」


「ああそうとも。その存在を、あの一冊で知っていた私にとって衝撃的なものだった。まさか数百年の時を経てなお、健在しているとは思っていなかったから」


「そして、この集落にMETSISが来た……」




 静かに頷くと、話を続ける。




「彼女は、自分が何処から来たのか。そして彼女の暮らす場所でどのような技術を使っているのか、ということだけを伝えて帰っていった……彼女がなぜここに来たのか、そしてなぜ私に技術を伝えたのか、今も分からないでいる」


「不思議な、話です……まるで何かに導かれているようですね……」


「全く、その通りだ。でもその情報、技術を無駄にするわけにもいかなかったから、この集落でその技術を使っている、というわけだ。それを改良したのが、あの金属質の箱、"アルシス"なんだよ」


「アルシス……」


「このアンドロイド達との抗争が終わったら、是非行くと良い。METSISが言っていた、山岳地帯の少し開けた場所にあるという、その村に」


「……」




 この時、ルミナには言いようのない感覚が纏わりついていた。やがてその感覚が、ルミナに口を動かさせた。




「……いえ、すぐに行ってきます」




 その発言に、サザンクロスが驚き宥める。




「どうしたんだ急に?……それに——」


「言いたいことは分かります。私が別行動をして、万が一アンドロイド達——サダル達が攻め込んだ時、どうしようもありません。でも!……今、行かなければダメ、なんだと思います」


「……君には、それが分かるのかい」


「いえ、でも……何故だか、そう感じるのです」




 その言葉に、サザンクロスもルミナも黙る。




「……そうか。なら、行くかどうかは私以外にも他の……君の仲間にも相談してから行くと良いよ。なんの相談もなしに、行かれても困るだろうから」


「そうします」














——その後、ルミナはタウリー達にもその事を話し、一通り驚かれた後、話し合ってルミナとクレスが向かうことになったのである——














 山岳部を登り、時に降りながら目的地へと進んでいく。進んで行くごとに、自然が深まっていく。


夜になったらクラウドが開発し直した収納庫で一晩明かす。その間ご飯を食べながらルミナとクレスは雑談した。アンドロイドとの抗争など忘れて——。


 やがて朝になり、また昨日と同じように歩き出す。ただ、これを続ける。


朝になったら歩き出し、ご飯を食べたり休憩をしたりしながら、しかし早く目的地に着くために少し、急ぎながら進む。


そして夜になったら収納庫で一夜を過ごす。そんな毎日。


 そして六日目の朝、歩き出そうと収納庫の扉の先に現れたのは——




 酷く強い、雨であった。


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