あたしの可愛いお姫様

南雲 皋

第1話 むかしばなし

むかしむかし、それは我儘なお姫様がおりました。

私のモノは私のモノ。貴方のモノも私のモノ。

世界中の全てを手に入れても満足しないくらいに我儘なお姫様は、それはそれはたくさんの人から恨まれていました。

お姫様が何かおかしいぞと気付いた時にはもう遅い。

そこは既に断頭台。

文句のひとつも言う前に、お姫様のアタマとカラダは別れ別れになってしまいましたとさ。


「そしてそのお姫様が私ってわけ」

「うそくさ」


 あたしの目の前に転がる汚い岩みたいな、ボールみたいな、毛玉みたいなソレは、どこからどう見たってお姫様には思えない。

 拾った木の枝でツンツンと突いてみると、ガウガウっと噛み付かれそうになった。

 なるほど、口と歯はあるらしい。


「ま、とりあえず持って帰ってみっか」

「きゃっ! ちょっとアナタ、もっと丁寧に扱いなさい!」

「はいはい」

「ふがっ、鼻に指が入ってるわよ!」

「あぁ、そこが鼻なのね」

「湯浴みよ! 湯浴みをさせなさい!」

「うるさいなぁ、捨ててくよ?」

「そんなことが許されるとお思い?!」


 とある夏の始まりに、あたしはとても面白いモノを拾ったのだった。

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