コドク

朝霧逸希

ある意味夢小説

 鏡の中の様な全てが反転した世界。

「俺ァこれ持ってきたぜ」

 銀の保温シートや食料などを両手に抱えて友人は俺達に笑いかける。

「いいじゃん!俺はこれ!」

 もう1人の友人もついで言う。

 笑いながらショッピングモールの大きな駐車場を歩く。このショッピングモールに来たことはないのだろう。見覚えはあるが内装は分からない。自宅から二十キロメートルほど離れたところにあるショッピングモールに似ている気がしたが、あまり気には留めなかった。

 昼寝に最適そうな、日が当たるはずもないのに何故かソーラーパネルが置いてある高架下へ入ろうとした。


──────所変わって。


 歩く。記憶は曖昧で、まるで夢でも見ているかのような感覚だ。トンネル、その上には線路がある。自分の背丈に合わせ、その半分程の高さしかない。今はもう動いてはいないだろう。

「君達は座敷童子かい?」

 気がつくと俺は少年と少女に問う。彼らだけ白黒で、色がない。

 見覚えがあるようで見覚えがない道を歩きながら。トンネルをくぐると周囲の色も無くなった。

 防災頭巾をかぶり煤が顔に付いて……


 ああ、こいつらは戦争の……


「違うよ、”イチゴンアシ,,さ」

 なにかに気付いたと察した瞬間、返答が来た。

「イチノンアシ?」

 良く、聞き取れなかった。

「カラカサだよ〜」

「イチゴンアシ。」

「じゃあ妖怪ってこと?」

「うん!」

「おい!」

 少年が少女に存在を隠すかのような素振りを見せる。

「こいつら、妖怪だってさ」

 恐怖心からか、友人に言葉をかける……


 こちらをじっと見つめている。



 何も言わず、じっと、ずっと。


 俺は目線に気づきながら、恐怖心を隠して。




 謎は謎のまま



 俺は目を覚ます。

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コドク 朝霧逸希 @AsAgili_ItUkI

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