告られ損の憂鬱

ししおういちか

少女にとって、SNSが子守唄

 カーナビがあるのなら、恋愛ナビがあってもいいのかもしれない。少なくとも私は、AIが選ぶ相性抜群の相手に興味がある。


 何故かって? 望まない相手からの愛は恐ろしくストレスだから。


 確かに私は顔が小さいし、各パーツは左右対称かつ均等にまとまっている。喜怒哀楽ははっきりとしていても基本的に相手を立てるし、髪だってヘアアイロンがなくてもサラサラの直毛だ。


 でも、そういうものだと諦め始めていた。男は目の前にある「面白いもの」「可愛い子」「エロい身体」に夢中だ。

 

 あの情欲的な視線と表情が本当に嫌。そのくせ、神様は暴力まで男に与えた。


 たまに、そうじゃない人がいる。精神年齢が追いついてきている男。


 だからこそ、女は数少ない男に群がる。「今まで何回会話した」「同じ中学」「部活で一緒」


 空気を少しずつ、引き寄せていく女は誰か。判定のない勝負で、何となく勝者とみなされた子が、選ぶ側になれる。


 一回ぐらいは、私だったこともあるのかもしれないけど。


 残念ながら「みんなが気になるあの男」というのは、自分を見ていないパターンが多かった。


 いや、違うか。そもそも選び放題なんだろう。


「一生お米しか食べてはいけません」なんて言われても、ラーメンやハンバーガーが選べるなら食べるに決まっているじゃない。


 そして、一番のカップルにならなかった私は、二番以下の男に選ばれる。


 おめでとうと言われた。ありがとう、また体の中に黒い何かが溜まっていく音が聞こえる。


 そういえば、今日はハロウィンか。


 あーあ、思考停止してバカになりたい。そうすれば、「ハロウィンってウザくない?」なんて友達にこぼした後、変わった子だって思われずに済むのに。


 冗談じゃない。


 あんなとこに行ったら、また告られ損になるよ。

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告られ損の憂鬱 ししおういちか @shishioichica

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