本編
リビング
テーブルには様々な料理が置かれている。
父と弟が座っている。
母、張り切って料理を出す。
母
「鯛めしです!」
父
「力付くぞ!」
弟
「……つらい。」
父
「天使は強くなくっちゃな。」
弟
「父さん……。」
父
「戦いに備えて食え!」
母
「近くの道場、予約しましたよ!」
二階から身体のバランスが奇天烈な兄が出てくる。
父、妙に鍛え上げられた兄の腕を誇らしく触る。
父と兄、弟の方を見る。
弟
「遂に僕の番が来てしまったのか……。」
兄、弟の隣に座る。
兄
「天使の宿命だ。」
弟
「父さんの趣味でしょ?」
兄
「……。」
豪勢な食事が並ぶが、置かれた食器は一人分。
母、父の隣に座って夫婦で弟を見つめる。
母
「たんとお食べ。」
父
「小さいと勝てないぞ。」
兄、小声で弟に囁く。
兄
「疲れより我に返った時が勝負だぞ。」
兄、弟の肩を叩く。
妙に筋肉質な腕が弟にめり込む。
弟
「天の神に言ってくれた?」
兄
「取り敢えず頑張れ! だと。」
弟
「タチ悪いな……。」
兄
「血筋だろうね。」
弟
「……つ、辛い。辛すぎるぅうぅうぅうぅ!」
弟、勢い良く逃げ出す。
追い掛けない一同。
公園
ベンチに友と座る弟。
弟
「天使って皆こうなの? 違うよね、虐待だよね?」
友達
「虎に勝つなんて無茶だよなぁ。」
弟
「たかが天使なんだよぉ、僕は。」
友達
「力無しのな。」
友達、笑う。
弟
「翼、捥ごうかな。」
友達
「手っ取り早いかもだけど、また生えるよ。逃げられないって。」
良く見ると翼がボロボロになっている友達。
弟
「友よ、私に考えがあるのだ。」
友達
「大層だな。」
弟
「……父を倒す!」
友達
「強いぜ? お前の父。」
弟
「天使の輪を捥ぐ!」
友達
「とんだ堕天使だ!」
弟
「……戦うぞ、僕は!」
友達、真剣な弟の為に頭を捻る。
友達
「力試しってテイにすればイケるかも。」
弟
「……強いかなぁ。」
友達
「敵は最強と謳われても引退した身内だ。きっと隙はある。」
弟
「取り敢えず、挑むっ!」
勇んで公園を出る弟。
友達、祈りながらもクスクス笑う。
日の暮れた公園
ボロボロになった弟が戻ってくる。
弟
「タチが悪いよ……。」
友達
「父討伐は無理だったか。」
弟
「つらい……。」
俯く弟。
涙がポロポロ溢れる。
友達
「天使には、乗り越えなきゃならん壁がある!」
熱血ノリを繰り出して励ます友達。
悲劇のヒロインで応える弟。
弟
「飛びたい、大空高く……!」
友達
「……。」
弟
「逞しくなんてなりたくない。私は天使なのだから。」
弟、涙を流したまま宙に舞う。
涙と月明かりで翼がキラキラと光る。
遠い目で見上げる友達。
友達
「父も天使だよ? 何処までも飛んでくるよ?」
弟
「強えぇ。」
力無く降りてくる弟。
友達
「天使の宿命だ、諦めろ。」
弟
「……虎の方がマシかぁ。」
友達
「だな。」
弟、祈りのポーズをしながらブツブツ言う。
弟
「痔、爆発しろ。
ヅラもバレろ。
電子マネー使えなくなれ!」
友達
「どんな呪いだよ。」
小さな二人の背中を月明かりが照らす。
(終わり)
天使は憂鬱 @yuzu_dora
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