第7話 美しい天使様との再会
《7話》
【ナハス裁判所】
フィーゴとソニアの後に続き、俺も裁判所の中へと入る。なんだかんだ此方の世界に来る前も含めて裁判所の中へと入るのは初めてな気がしている。
(ほぇー…やっぱ立派な建物だなぁ…)
自分自身そこまで誰かを訴える、誰かに訴えられるというような経験をせずに生きてきた。法律を多少勉強した記憶はあるものの実際裁判になっても活かせないであろうレベルだ…。
それにここは天界…''天使"が法だ。
フィーゴからは証言者としては君の知っている事を話せば問題無いとは言われたが…やはり不安は大きい。
(にしても裁判所というよりもはやホテルだなここ…。マジで金かかってそうな内装だ…)
裁判所に入り、二人の背後によそよそしくついて行ったまま3階に上がると右手に〈シエル家控室〉と書かれた部屋がありフィーゴは軽くノックをする。
すると扉の向こうから「はーい、空いてるよ〜」と聞き覚えのある声がする。
扉を開けフィーゴが入ると俺とソニアもそれに続く
中に入ると、そこは空港の高級ラウンジのような部屋が広がっていた。
[真紅の絨毯が引いてあり…大理石のテーブルに、見るからにフカフカしてそうなソファーに…明らかに何か表彰を受けたなというような勲章までガラスケースの中に飾られている…]
こういったところまで手と金がかかってそうでもはや子供みたいな反応になってしまう……
しかしその視線は一瞬にして俺が"一目惚れ"をした美少女天使の方へと移る。フィリスは扉が開くと小走りでコチラに向かってくると、そのまま軽く俺の手を両手で包み込んでくる。
そして俺の手のひらに軽く撫でるように触れながら…
「おぉ、ディガル君!私の為にわざわざ天界まで来てくれるなんて嬉しいね〜♪」
──相変わらず、破壊力の凄まじい笑顔と動作である…。正直こんなものときめかない方が普通だ、少し俺は緊張しながら
「うん、そりゃフィリスが極刑だなんて聞けば来ないわけにはいかなかったから……」
「そっか〜…あ、そういや兄とソニアが失礼な事しなかった?はるばるシエル家の邸宅にようこそ…♪ま、ゆっくりしていってよ。って言っても後1時間くらいで裁判始まっちゃうんだけどね。」
と、確かに極刑だと言われてるとは思えない態度で話しかけてくる。
俺は妙にフィリスとの2度目の対面でドキドキしているが…、極刑だというのにフィリスはあまりにも精神的に強すぎるんじゃないかと感じる…
「いや、フィーゴには色々助けられたよ、ここに来る前に何度も…それにフィリスには命を救われた訳だから、こんな事しか出来ないけれど、俺が証人をすることで恩返しできるのなら出来る限り助力したい…!」
と我ながら上手く返答できた気がする、ヨシ、決まった…!
さて、フィリスはどんな返答をして来るかな……と考えた俺にフィリスは意外な返事をしてきた。
「ハハーン、なるほどね?これは流石のフィリス"ちゃん"も惚れちゃうかもね〜なんて♪あ、でもディガル君、今の君は危うく操られかけてたよ?」
「へ……操られ…?そんな状況だとは一切思わないし、感じなかったんだけど…」
マジで自分自身そのような心当たりは……いや、ある!思っきしある!さっきの…!
「私結構"目"が良いからねー、発動前のそういう術とか割と見抜けちゃうんだよね、さっきあからさまに握手したのはそれを無効化したのもあったってワケ…♪」
「そんな一瞬で術を解除出来るものなのか……?」
「フフン、ま、私みたいに回復が得意だとチョチョイのちょいッ、かな〜♪」
エッヘン♪というように少しドヤ顔のような顔で笑うフィリス。駄目だ…フィリスが惚れちゃうかも~なんて冗談で言ってたが、その前に可愛さで俺が先に惚れるっての…!
後ろでフィーゴとソニアが明らかに俺が照れて顔が赤いのを見ながらニヤニヤしてる気がするが……まあ良いだろう…。
「んじゃ、役者も揃った事だし話を始めようか」
とフィーゴが話を始める。長いながらも裁判についてフィーゴから淡々と内容が伝えられる。
軽く要点をまとめると…
・まずは現当主のフィリス達の両親は別件があって来られず、裁判の責任者はフィーゴに全任されていること
・相手はルクス家ではあるが、他の熾天使の御三家の一つミスタ家が絡んでいる可能性があること
・裁判の勝率は約7~8割で、基本的には無罪だろうということ
・ただ、フィリスは勿論のことイレギュラーである俺もミスタ家の狙いになる可能性があること
・万が一フィリスが極刑になった場合、熾天使の加護の力を剥奪されるだけで無くフィリスは"魔界へと追放処分"とされる。
熾天使の加護を失えば、熾天使は長くは生きられ無い為そのままでは命を落としてしまう。
→時間でいえば、数時間は生きていられるものの…身内であるフィーゴやソニアは裁判所内で追放処分の手続き等でほぼ軟禁状態にされて助けに行くことはおろか、下手に動けば共謀罪にかけられる可能性があるらしい…
そうなれば俺が魔界に戻り、フィリスを助けるしかない。俺は"イレギュラーな存在"だからか、詳しくは後からフィリスが話してくれるが彼女を助けられる可能性があるらしい──
・基本的に裁判所の法廷内にある結界の中では能力は使えない。しかし、その外であれば話は別だ。仮に戦闘になればフィリスとフィーゴ、ソニアが主に戦う事になる。俺は戦闘慣れしていない為、なるべく戦闘に巻き込まれないよう今いる控室の結界の中へ逃げること
の6つである。俺はあくまで証言者として呼ばれたが、最悪の場合自分も罰せられる可能性があり…フィリスが魔界送りにされる…か。マジで色々情報量が多いし、意外と責任重大だな……
とにかく裁判が上手くいくことを祈るしか無いだろう……。
────作戦会議も終わり時間となった。
「ま、私的にはなんだかんだ何とかなると思うけどね〜?さっさと裁判終わらせて、ディガル君に魔界案内してもらわなきゃ。でしょ?」
「あ、あぁ!勿論案内するよ、ただフィリスが極刑にならずにってのを追加するけどな?」
「それは当然だ…今の天界で妹を失えばそれこそ熾天使、いや天使全体で見ても大きな損失だ。勝つぞ?」
とフィーゴが改めて伝え直す。
「えぇ…勿論」
「おう!」
「んじゃ、行くよ〜?」
俺は緊張しながらも、前を歩くフィーゴ、横にいるフィリスやソニアが居れば少し安心出来る気がする。
さあ、裁判に勝って4人で打ち上げをしたいものだ…!
《7話完》
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