能力発動

「き、霧山さん?! なんで能力者ってことを喋ったんですか?!」

 廿月はつきは声を裏返りながら、突っ込む。


「え? 別にいいだろ? そんなにやばいことなのか?」

「やばいですって! 俺たち能力を隠した方がいい。ということを話していたというのに」


 銀髪の男達は焦っているところ。華南かなんは気にせず、しゃべる。

「へぇーそうだったんですね。この子たちも能力者。それは頼りがいあります!」

 彼女は気にしてないようだ。そのことに廿月はつきは疑問を述べた。


「……。なんで黒墨くろすみさんはなんとも思ってないんでしょうか?」

 彼は霧山さんに質問する。


「ここの町ではアニメの能力は認められてて。皆オープンで発動しているんだよ」霧山さんは笑いながら彼らに伝える。

「……そうだったんですね。知らなかったです」

「オレちゃんたちの無知さが身にしみるぜ」彼女は腕に顔を隠すように恥ずかしがる。


「そうそう。だから安心して能力を発動してもいいんだぞ」社長は拳を作り、自分の胸を軽く叩いた。


「……結構一般人に気を遣ってたんだが、無意味だったな。オレちゃん」


 悠輝ゆうきは肩を下げてなんとも言えない状況になる。


「まぁまぁ。公共の場で使ってもいいってことで、ところで、黒墨くろすみさん達は……」


「まて廿月はつき。ここは私が。では、どのような要件で……」社長はスイッチが入るように仕事モードになる。


「はい、私探している人がいまして」

「探している人?」


「昔。働いていた人に会いたく、最近ここに住んでいるみたいなんですよ」

「なるほど、そうだったんですね。でも私たちに頼まなくても……」


「それが、場所がわからないんですよ……。会いたくても会えなくて」

「それは困りましたね。でも大丈夫ですよ。私の従業員たちが探してくれます」


 社長はそう語るも、廿月はつきは腕を組んで唸っていた。


「うーん。でも。ペットや迷子の子どもを探すことはあったけど。昔の知り合いを探すことはなかったからできるかな?」

 彼が悩んでいると悠輝は口を動かす。


「いままで。はっきーの能力でいってたもんな」

「そうですね。そのくらいなら探せるのですが。今回は難しそう……」


 彼はもうお手上げ気味だが、青色がはいった金髪女性は「ふふふ」と口角が上がる。


「ここはオレちゃんの出番だな」悠輝ゆうきは胸を拳で叩きながら離す。

「一ノ瀬さん。居場所ってわかるんですか?」


廿月はつきは心配そうにするも、彼女は人差し指で銀髪青年の口を抑える。


「あたぼうよ。オレちゃんを誰だと思っている。未来のビッグスターアイドルになる女さ。そんなのオレちゃんの能力で、余裕余裕~」と、悠輝は浮かれていた。


 

「ウィンピィを使うことはわかっていますが。俺、一度も一ノ瀬さんの能力の詳細知らないから未知数なんですよ」


「そうだな……。何回か、使ったことあったけど。親友に見せるのは初めてだっけ?」


「うーん。もしかしたら一回見たはず……だけど。覚えていなくて」


「だったら。今すぐ見せてやるぜ。幻想奇譚トゥーンアクション


 彼女はすぐさま能力を開示。そして、ウィンピィが飛び出してきた。

「うう……。人がいっぱいで怖いよー」オオカミはおびえている。


 突如。さっきまでなにもしなかった絵凛は言い出した。

「これがあなたの能力? なんかこどもっぽい」彼女は不満げのようだ。


「あっははは。こどもっぽいところもオレちゃんらしいだろ?」

「どこが!」絵凛えりは少し切れながら言葉を吐く。悠輝ゆうきの発言がなんだか鼻につくからだ。


「ここはオレちゃんに任せて。ゆっくりしてな。行きましょう。黒墨さん」

「ええ、頼りがいあるわ。えりちゃんは買ってきたケーキでも食べててね」


 悠輝ゆうきはそういうと華南かなんをつれて、何でも屋から出る。


 廿月はつきは一呼吸いれていると絵凛えりが彼に呼びかける。


「ねえ。廿月はつきさん……だっけ? お母さんのことが心配だから。私の代わりに見てくれないかしら?」


「別にいいんだけど。えりちゃんはいかないの?」


 その呼び方に絵凛えりはカンカンにぶち切れる。

 

「気安く『えりちゃん』というな! 私が言ってもいいけど、もし私のせいで何かあったら申し訳ないから。信頼できる強さがありそうなあなたに助けてもらいたいの」


「そうなんだ。でも。俺にそういうのはちょっとな……」

「つべこべ言わない! これは依頼主からの追加依頼よ! 私からもお金あげるから」


 彼女は財布を出し、二千円を彼に渡した。


「少なくてごめん。でも、私のたった一人のお母さんを守ってほしいの」


 廿月はつきは亡くなった弟のことを思い出した。絵凛えりのためにもなんとかしたかった。

「……別にお金なんてあげなくても、お母さんを助けるよ。俺もえりちゃんと一緒の考えさ。」


「だーかーら。私のことを『えりちゃん』と言うな! 言ってもいいのはママちん……。いやいや、お母さんだけだから!」


 彼は「わかった」と絵凛に伝え。悠輝ゆうきのところまで向かう。


 オレンジ髪の少女は見送りながら。(私がママちんと言ったこと。聞こえてないといいけど……)と、アゴに手を当て心配する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る