Cartoon Dual Action Roger
フォッカ
プロローグ
プロローグ 弟が亡くなった日
「
――――今日は最悪な日だ。
それもショッピングモールの二階で開催されているイベントである絵本のサイン会の最中。
弟だけじゃない、絵本の作者、子供、その親などがそいつによって
男性の殺人鬼は今も凶器であるナイフを振り回し、暴れている。何故か知らないけど、いや知らないほうが最も犯罪者らしい行動に違いない。
その建物にいる人々はパニックを起こし逃げ惑う。
地面には水筒やおもちゃなど子供が持っていたものを捨ててある。その親が必死に子を背負い落としたものだろう。
ただ逃げずに立ち止まっていたのは廿月たった一人。
「嘘だろ……、いやそんなはずはない……。だってさっきまで生きていた」
彼は混乱していた。それを呼び止める女性の声が聞こえる。
「はーちゃん! 早く逃げなさい!」
そう弟を亡くした少年の母親だ。彼女も現状に飲み込めずにいる。けど、また息子を死なせるわけにはいかない。精一杯声を出して13歳の少年に気が付かせるようにした。
「うぉぉぉぉ! 俺に殺されてくれェェェェェェェェ!」
少年は石のように動けなかった。母親の声は届いたけど行動に移せない。恐怖で足がすくんでいた。
だが、置いていた水筒を踏んでつまずき、バランスがくずれる。前方に倒れた殺人鬼は腹にナイフが刺さり驚く。パニックになったのかその場から離れ、ガラス手すりの方に向かっていた。
すると男性はその壁を上り、そのまま頭から飛び降りた。グチャりとグロい音が聞こえる。確実に即死だろう。
その瞬間、廿月は絶望していた。
「な、なんでこんな目に……。小象……夢なら覚めてくれよ」少年は目から液体を流し、感情の小雨が降り出す。
「……今回は特に大したことやってないな。被害が少なすぎる。まぁ次の計画でもっと大きくなるといいがな」
黒い影がショッピングモールから去る。
その顔には男らしい髭があり、色気を出しながらニヤリと笑う。
しばらくして勇ましい声が人々の鼓膜に響く。
「大丈夫ですか皆さん、このスーパーヒーローのバームクーヘンが来たからには安心してください」
まるでアニメのキャラのような人物が現れた。いや本当にインクの塊である二次元キャラだ。
また後から二人のキャラが現れる。胸のでかい女の子のアニメキャラも現れた。姿はメカニックな衣装を着ている。
「うーん、後の処理は、ぼくちん達に任せてください。バームクーヘンさん、パニッシュさん行きましょう」
そして隣にいたパニッシュさんらしいであろう、威厳のある魔王らしいキャラが立ち止まる。
「ほう、我がパニッシュに命令するとは。ニルポッパーも偉そうなこと言えるようになったな。褒めて遣わす」
「ふふ、ありがとう。そういうことで、みなさんは外に出てください。あとは、警察にはもう呼んでますから」
メカニックな少女、ニルポッパーはショッピングモールにいる人々を落ち着かせてその場から出すようにする。
「あとはラップスくんがいれば……。あっいたいた」
彼女は手を振り、ラップスと言われている。モコモコとした帽子をかぶっている少年に向かって手を振る。
「ラップスくん、この人たちを外に案内してくれない?」
少年は「わかりました」と頷き、
「案内って独特な匂いのある豆腐デザートのことでしょう?」
彼はさらっとボケる。
「それは杏仁豆腐よー!」ニルポッパーは少し声を上げる。
「違う……。あ、誘拐して閉じ込めることね」
またボケるラップス。それに突っ込んだのはパニッシュという魔王だ。
「それは監禁だぞ少年。またお得意なボケか? なんとも浅い知恵を持つものよ。あとでお仕置きしなければな」
「ひぃー“堪忍”して! わかった案内してくるからニルポッパー姉ちゃんや偉そうパニッシュには悪いことしてしまった。それじゃあねー」
帽子をかぶった少年はそのまま残っていた人を解放させる。
「ははは、ラップスくんは今日も面白いこと言うなースーパーヒーローである私としては好感度高いぞ」
バームクーヘンは高らかに笑う。良く見ると彼はアニメキャラと違う海外アニメの“カートゥーンキャラ”みたいだ。
どこかから靴の音が聞こえる。その正体はインクの塊でない血の通った生きた人だ。ショッピングモールにいるアニメキャラの管理人であろう。
「……ラップスは児童向け漫画の主人公だからな」
「児童向け……? 何言っているんですか? ただの少年ですよ」カートゥーンキャラはジェスチャーをしながら疑問に思う。
「はは、なんでもないよ。それじゃみんなショッピングモールをきれいにしなさい」
アニメキャラたちは一斉にショッピングモールの片付けをした。
この世界ではアニメキャラが現実世界で働いたりしている。ここも例外ではない。
サイン会のイベント“パーフェクトエレファントのエレフン”と言う絵本のキャラもインクを実体化して行われていたのだ。
廿月はまだ引きずっている。ラップスという児童向け漫画の主人公に案内されて外に出たものの、あの感じが頭に残る。
「うぅ、小象……小象……」彼はまた頬に水を垂らす。
13歳の少年の母親はなだめるために話した。
「大丈夫よ、はーちゃん。貴方のせいじゃないの。とりあえず、あとでハンバーガー屋さんに行こうね」
「……ごめんなさい、俺そう言う気分じゃないんだ。だからといって家には帰りたくない……」
「でも家に帰れば頼り甲斐のある兄妹がいるのよ。お父さんはまだ帰ってきてないからなんとも言えないけど、どうする?」
「……その店に行く。少し心を落ち着かせたい。食べる気はないけど、その場所にいるだけで大丈夫」
「わかった」と廿月のお母さんは言うと、そのままハンバーガー屋さんに向かった。
今日のハンバーガーの味は忘れないだろう。
後日、この事件はニュースに取り上げられた。
犯人を含めた死者7名、重症15名。と被害者数を淡々と話し、幼い子供が命を落としたことも告げる。
――テレビでニュースを見ていた廿月は何を思うのか。彼しかわからない。
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