秋桜学園妖使い部!
七瀬。
Prolog¦ メグルモノ
「……今回も、助けられなかったや」
《 》がここにたどり着いた時には、全て終わってしまっていた。彼女はもう息は絶えており少しだけ誇らしそうに上がってる口角と、悲しそうに頬につたっている涙が彼女の現状を物語っていた。頬につたる彼女の涙は、これから朝を告げる始まりの光でキラキラと反射しており、まるで泣きながら寝てるんじゃないかと疑うほどの美しく、綺麗、魅惑的な死に顔だった。
けれども、殺された痕跡はしっかりと残っている。
「……また毒殺」
彼女の横に転がっていた瓶から零れ出た液体が地面に置いたところには、焼けたように枯れ果てている。彼女が毒殺で殺されるのは、これで何十回目だろうか。
《》は、彼女の頬に付いている涙を持っていたハンカチでそっと拭き取ると、そのまま彼女の顔にハンカチを被せた。
……もう、何百回と繰り返していくうちに涙は枯れ果てた。初めのうちは姫里の死体を見る度に自分自身を忘れて泣きまくった。
けどそのうち、自分自身の無力さに何も言えなくなった。
悔しさで泣いている時間があれば、繰り返して姫里を救うためにやり直した方がいいと考えるようになった。
「ごめんね、姫里」
誰の耳にも聞こえない謝罪は、天国にいる彼女に聞こえているのだろうか。……次こそは、次こそは、と何回意気込んで繰り返して、失敗している《 》を許して欲しい。
「次こそ、絶対に救ってみせる」
制服のズボンに入れている、彼女から貰った赤いリボンが括りつけてある時計を取り出すと、その時計を強く握りしめた。
永遠の眠りについている彼女、姫里は《 》より何百倍も強く凛とした美しさを持っていた。そんな彼女は《 》の最愛の人であり、僕の一生を捧げて幸せにすると誓った人だ。だからもう同じ過ちを繰り返さない。姫里を不幸にする要因・死因は全部取り払う。それが、何百回も同じ景色を見続け、タイムリープを続けていても。
本当はタイムリープをすること自体もう辞めないといけないのは《 》が一番分かっていたものの、契約して得た力で《 》を救える希望があるのに、救わないなんていう選択肢は存在してない。
時計の針を回すためのツマミを引っ張り、くるくると回して時間を戻し始める。
この時計は普通の時計と違って、回し続けるとどこかでもう回らなくなる終わりの位置、所謂ループの起点の時間軸まで戻すことが出来る禁忌品だ。
《 》のことを取り囲むようにして薔薇の魔法陣が組み敷かれ始める。薔薇の魔法陣に触れた肌が、ピリリと静電気が走った感覚になるこの現象は、何百回とやってもなれたりしない。
でもこの感覚も、今はこれで終わり。
もう少しでツマミの終着点にたどり着くことで、《 》はまたタイムリープができる。早く生きている彼女に会いたい一心で回す手を急ぎ始めると、ふいに時計を支えていた方の腕を強く引っ張られ、反射的に引っ張った犯人の方へと振り返った。
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