第92話 テンプレ設定

「どうした?嬢ちゃん」


「え~と、おっさんの時のとは種類が違うんだけど、腹部に黒い疾患があるんだよね‥‥‥‥」  

 

 おっさんの時は、どす黒いタールの様な感じだったが、これはそれとは違う霞の様な感じだ。‥‥‥‥癌みたいなものかな‥‥‥‥問題はコレをどうするか。

 おっさん達の時は遠慮なく腹に手をツッコんだんだよね。まあ、あの時は気分がハイだったしな~。

 冷静になれば、躊躇なく腹に手を突っこむ所業はではできんよな。

 断末魔をあげていた隊員は、きっとトラウマが残っただろうしな~。かわいそうな事したな。


「おお、そうかそうか─────どれ、ワシが手伝ってやろう!」


 ドルクのおっさんは、ギルドの長が座っている椅子の後ろに回った。


「な、なんだ!?何をするんだ!?」


「なに、ワシもやられたんじゃ。大丈夫じゃ、心配なぞないぞ。すぐに終わるからな。ハッハッハッ」


 パツパツの筋肉と、にぃ~っこり笑顔を添えながら、長をがっつり背後から羽交い締めにした。


 ─────あ~そうですか。

 それしか自分にレパートリーがないから、しょうがないよね。─────うんうん。


 ─────その日、ギルド内に恐怖に慄く、野太い叫び声が響き渡ったのであった。



「‥‥‥‥『仙桃』美味しかった」


 晴天の中クリスティーナは、中庭でお茶を頂いていた。

 思いがけず前世の同郷と出会って、気を抜いていたが、今は市女笠風の帽子を被っている。日よけの意味もあるので、ある意味丁度いい。


「‥‥‥‥本当に美味かったですけど、レアアイテムですよね?あの人どこで採ってきたんでしょう?」


「『深淵の森』の中で採取したって聞いたわ」


「「『深淵の森』‥‥‥‥」」


 護衛二人はわかり易く震え出した。


「あの人マジであの森抜けて来たんっすね‥‥‥‥」

「マジパねぇ‥‥‥‥」


 下世話な下町言葉を呟く二人は、礼儀作法に厳しいサラにじろりと睨まれる。

 

「─────ん゛ん。 あの人異国から来たって聞いたんですけど、どこの出身なんでしょう?」


「そうですよね?なんか見慣れない服装でしたし。姫様は聞かれました?」


 はぁ─────い。来たよ~リオさん。ここは一つ私がリオさんの裏設定を確率しなければ。


「聞いたわよ?リオさんはね、海を越えたここから遠い、─────『東の島国』からここにたどり着いたのよ」


「‥‥‥‥」


「‥‥‥‥」


「‥‥‥‥」


 ‥‥‥‥あれ?皆の反応がない。 おかしいな?遠い島国から来たって事にすれば「なるほど~」「そうなんですね~」で終わる予定なのに。


「‥‥‥‥姫様‥‥‥‥それって‥‥‥‥」


「‥‥‥‥え、マジなの‥‥‥‥?」


「‥‥‥‥白いフェンリルいたよ‥‥‥‥」


 ───── 何?私が何かマズい事言った?


「ど、どうしたの、皆?」


「ひ、姫様。お忘れですか?あの、─────『言い伝え』」


「‥‥‥‥『言い伝え』」


 ‥‥‥‥あっ!─────あっ!あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーっ!!

 

 忘れてたっ!!─────ごめんリオさんっ!この世界では裏設定にならなかったっ!

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