第90話 プライスレス

テッテレ~♪


莉緒は『身分証』を手に入れた♪


「基本中の基本ですが、悪用は厳禁ですので。まあ、『特級』を持つ方にそんな人はいないと思いますが」


 顔色が非常に白い職員さんから、只今注意事項を聞いております。‥‥‥‥大丈夫かい。


「そこは、『紛失』とか『破損』じゃないの?」


「非常に耐久性に優れておりますので、破損は不可能と言われております。また、どこかに置き忘れたり、落としたりしても持ち主の手元に戻る仕組みになっております」


─────なにそのチート仕様。


「‥‥‥‥すごぃんだねぇ」


「大昔の仕組みなんですが、今では再現不可能な技術です」


 ほおおぉ、昔の人は凄かったのか、それともどこかの異世界チートマニアック野郎が作ったのか。

 自分にはできない芸当という事は、はっきりしている。

 私そういうのは、イマイチ萌えないんだよね~。


「これさえあれば町へ入る時も、手続きなしで入れますし~お金の振り込みなんかもできちゃいますよ~」


 ─────おお、じゃあおっさん達に頼らなくても、検問が突破できるってわけだ。

 それに、振り込み?ナニソレ、キャッシュカードみたいな物かな?よく聞けば、元の世界の、キャッシュレス決済みたいな感じで使えるらしい。

 おぉい、変な所で元世界の技術があるな!作ったやつ絶対あっちの世界の人間だろっ! ‥‥‥‥でも自分残高ゼロデス‥‥‥‥。


「普通の『身分証』は善人である証なんですが、『特級』はそれに加えて、相当の実力者と認めたという証なんです~」


「『特級』を発行できる権限を持っているのは、ギルトの長だけなんですが、この『身分証』を持っている人は、今はあまりいません。長としての資質も問われますので。‥‥‥‥昔、乱用されて審査が厳しくなったんです。長も初めて発行したんじゃないんでしょうか‥‥‥‥」


─────何という、プライスレス‥‥‥‥。


「でもコレ、何も書いてないよ?」


 ヒョイと掲げるプレートは正にカードサイズ。

 裏も表も何も書いていない、銀色カード。


「それに、『魔力』を通してもらいますと、色が染まって登録完了となります。─────自分も初めて見るので緊張しています」


「僕もですっ!こんな機会ないので、楽しみですっ!」


─────え、私がやるの? そりゃそうか。


 事務的だった職員の男の人が、平常心を取り繕いながらも、視線で何だが期待度が高いのが解るし、ウィル少年も目がキラキラしてる。


 ‥‥‥‥どうしよう、そんなに見つめられると緊張する‥‥‥‥。


「─────早くせんかっ!」

「間に合ったようじゃから、いいじゃろ」


 空気を読まないおっさんズが、扉を開けて乱入してきた。

二人も参加するの?と聞くと「ワシは後見人の一人じゃからの」「初見だからな、興味がある」とドカリと真正面に座った。‥‥‥‥ますます緊張する。


  ここで一つ問題があった。─────『魔力』てどう流すの?


 『魔術を発動する感じを、カードにしてください』


 ─────おう、『ナビ』ちゃん。急に出ないでよ、びっくりしたよ。『発動』する感じね、よしよし。


「ワフッワフッ (込めすぎるなよ。壊れるぞ)」


 うわん、シロ君信用ないなっ!ちょぃ~と流せばいいんでしょっ!


 皆にも見えるように腕を伸ばし、ちょぃぃぃ~と流し始めると、端からカードが黒く染まり始める。

 

 出来上がったのは、前世では縁もゆかりも、お目にも掛かった事のない『ブラックカード』。

 ただし、なんの文字も数字もない真っ黒カード。


「おお、『ブラックカード』じゃん。でも、色以外何もないのね」


 相対する人達を見れば全員、目も口も全開に開いて『カード』に一点集中している。

 どうした、皆?何かマズかった!? 反対側か!? こっちは裏で、表に色々出ちゃってる!?


 慌ててカードを返すと、キラキラと見慣れない白い紋様が、ユラユラ浮かんでいた。


─────何だ、このマーク? しかも、浮いてる? まさかのグラフィック?3D仕様?


 見知らぬ紋様はユラユラした後、目の前でふわっと煙の様に消えた。

 カードに残ったのは、ちょいちょい見かけたここのギルドのマークのみ。 


「これで、いいの?」


 ─────ピッと皆に見せると、おっさんズは無言で頷いた。

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