第83話 傷つくんですけど

「なるほどな。おかしな話だと思ったのだ。森の魔獣が人間に従うなど。しかも、集団でな‥‥‥‥この呪術具のせいか‥‥‥‥」


 只今私は、ギルドの応接室に来ております。

 皆が囲むテーブルの上には、真ん中にヒビの入った丸い石が置かれております。


「討伐に入った冒険者達は、その操られた魔獣に襲われた。そういう訳かの─────」


「ああ、アタイらも訳が分からなかったよ」


「いきなり周りから魔獣に襲われて─────あっという間だった‥‥‥‥」



 ‥‥‥‥只今自分は、会議と言う名の事情聴取に参加させられております。


 自分はその冒険者達とは顔見知りでもないし、その瞬間に居合わせた訳でもないので、イマイチ感情がついていかない。

 ‥‥‥‥自分が一回死んでるからだろうか?どうもこちらに来てから、元の性格とは違う感情にズレがある。

 前の自分ならば、容赦なく盗賊達を魔獣に襲わせるとか、大量の死体を目の前にして、平然としているとか‥‥‥‥ありえないよな。


 ‥‥‥‥どこか感情が欠如しちゃったのかな。


 丸い石を壊したのは、ちょっと怒られた。

 そのままにしてほしかったらしい。手に取った時から割れてたよ、と言う事後言い訳は、おっさんに通用しなかった。

 ─────だってそれメッチャ臭くなって、従魔達がおかしくなるよって説明したら、しぶしぶ納得してくれたけど。


「─────それで、嬢ちゃん。お前さんがそいつら相手したんだろ。どうなった?」


「全員掘った穴に落とした。そしたらイカれた野郎がコレ使って臭くなった」


「おかしくなった魔獣は?」


「シロ君と二人で、全部同じ穴に入れちゃったよ」


─────んで、ピッチリ蓋した。


 手で蓋をする動作をすると、あの時いた女冒険者達から、スッと距離を取られた。

 ちょっと~傷つくんですけど~。

 この二人、さっき部屋に入った時「お、無事だったんだね」にこやかに挨拶したら、盛大に恐怖の叫び声をあげてくれた。

 ─────なんでだよ。それでなんで、足がカクカクピルピルしてんの?怪我したの?と問いかけたら。


「─────け、怪我なんてありませんっ!」

「─────私達は冒険者なんです!決して筋肉痛なんかではないですぅ!」

   

‥‥‥‥筋肉痛だったんだ。冒険者として、筋肉痛はプライドが許さないのか‥‥‥‥なんかゴメン。


「‥‥‥‥中から這い出て、生還する可能性は‥‥‥‥」


「ガチガチのピチピチで蓋したから、百年ぐらいは余裕で開かないよ~」


─────今度はおっさんにドン引きされた。傷つくってゆってんじゃん~

 そういや、隊長さん達も同じ反応だったな。引くのが正解なのか~。


「それでは持ってた奴が誰か、確認できんな‥‥‥‥」


「持ってた奴?私は名前とか知らないけど、君達も見たよね?」


─────は?と二人が首をかしげるので


「いたじゃん。ハイテンションの─────」


─────ピンク教


 そう返事をしたら、おっさん二人は何やら一層難しい顔になり、二人だけで部屋に籠った。

 長くなると覚悟していた私は、喜んで部屋から退出したのである。

 ちなみに女冒険者の二人は、「アタシらはこの辺で!」とカクカクピルピルしながら、私から離れていった‥‥‥‥傷つくんですけど‥‥‥‥。


 解放された私とシロ君は、ウィル君と一緒に今度は大会議場の様な所に連れてこられた。 


 そこには、さっきいた受付嬢。


「記録を取りますので、こちらに出していただけますか?」


「‥‥‥‥」


「‥‥‥‥」


 ─────はっ!そうだった!わ、わ、忘れてなんかいませんよっ!

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