第81話 ブーイング再び

「‥‥‥‥く、くそ─────ぐぁぁ!!」


「なによ、あんたら大袈裟ねぇ~」


 わざわざ回り道をせず、道端に転がった男どもの上を、遠慮なくヒールで踏んでいく。

「踏み具合が悪いわね~」とグリッと踵に体重をかける。

 

 周りが若干ひいているみたいですが、シロ君に手ぇ出そうとしたよね?

 ─────お姉ちゃん、ムカついてるんですけど?


「テメェ!何しやがんだっ!!」


 ─────ゴッッと後頭部にヒールの踵を食い込ませる。 


「何って、アンタら窓壊したじゃん。ほら、弁償しなよ」


 ─────俺達はツッコまねぇ!

 引いた冒険者の間を、紙束を持った受付嬢が駆け抜ける。「やっやめとき─────」受付嬢を止めようとするが


「窓枠・ガラス代!合わせて十二マンです!!」


 彼女は逞しかった‥‥‥‥。


「オラ、十二マンだと。さっさと払いな。─────ああ、手伝ってやるよ」


 手の上には、いつの間にか財布らしき袋。それらの中身を勝手に開けていく。


「─────ちっ、この中身しけてんな。あ、こっち入ってるわ」


 受付嬢から差し出されたトレイのような物の上に、ぴちっと数えて積んでいく。─────単位?『ナビ』ちゃんから小っちゃい表示が出てます。


 一通り積むと、「この間壊されたテーブルと、椅子三脚分ですっ!」と書類のような物を追加で見せられる。─────はいはい。何か足の下でぎゃあぎゃあ何か言っているが、踵をめり込ませて黙らせる。


「うちは宿代もらってねぇ!」


 あや?何か増えましたぞ?


─────うちは食事代のツケが!

─────飲み代が!

─────薬品代が!


 いつの間にか、周りに人が増えてました。

 

「はいはい~。皆さん落ち着いてね~」


「何の騒ぎだ!」


「お主は一体、何をしとるんじゃ?」


 おっさんが、知らないおっさんを連れて現れた!

   

「修理代とツケ代回収してま~す─────ちっ、しけてんな」


─────カツアゲでは‥‥‥‥


 冒険者一同はそう思ったが、口に出す者はいなかった。

 ツケが回収できた街人は、毎度~とホクホク嬉しそうに退散していく。

 もらえる物が手に入れば、さっさと退散。商売人達は非常に逞しかった。


「長!長!回収できなかった修理代が入ってきましたっ!これで壁も直せますねっ!」


 るんるんと奥に戻っていく受付嬢‥‥‥‥。上司はただ頷くだけしか出来なかった。


「─────こいつ等は何故転がったままなのじゃ?」


「『縛』が掛かってるからね!─────それよりも、そっちがここの偉い人?」


 げしっげしっと踏んでいるのは気になるところだが、年長者は空気を読んであえて指摘しなかった。


「ああ、ここの長‥‥‥‥」


「─────おらぁ!無視すんなよ!コイツ規定違反だろ!」


 ─────は?と首をかしげる私に、少年が「冒険者同士が、ギルド内で揉める事は禁止なんです」と教えてくれた。


「へぇ~そうなんだ~─────でも、私には関係ないか~」


 まだまだ元気な頭に、ヒールをゴリゴリ食い込ませる。


「だって私、普通の『一般人』だもん!」


「「「「 ─────なんだそれれぇぇぇぇ───── 」」」」


 あるれぇ?いろんな所からブーイングが来た。


─────解せん。

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