第74話 ぺぺっと

 侍女のサラさんの手によって、私の髪は緩いハーフアップに整えられた。

 私がサラさんに拘束されている間、ユリアさんはセットになっていたであろうヒール付きの編み上げブーツと、腰巻ベルトを見つけだした。


「あと、コレもそうですよね~」


 取り出したのは、短めのマント。ペリースってやつかな。

 腰巻ベルトを付けるのを手伝ってもらい、セットであろうペリースを眺めてみると、まあ、結構派手な刺繍が施してあった。‥‥‥‥着なくてもいいかなコレ‥‥‥‥あ、ダメですか、そうですか‥‥‥‥。


 ─────鏡に映る自分は髪の色も相まって、どこかの国の黒騎士のようだ。


「‥‥‥‥」


「‥‥‥‥どこか攻め落としに行くんですか?」


「‥‥‥‥違うけど」


 あの姫さん、どこを目指してたんだ?まさか、軍帽とかはないでしょうね!?

 意地で着たものの、急に不安になってくる。─────これ大丈夫か?怪しくない?


「色彩は違いますけど、アル隊長達もそれぐらいですから」


「騎士か魔術剣士って感じですよ~」


 ─────あ、そう言えばこんな感じだった。悔しいけど、あっちは身長と鍛えた筋肉があるからな~似合うんだよな~─────ちっ。


 ‥‥‥‥開き直ったもんが勝ちだ!ヒラヒラパステルカラードレスよりこっちの方が十分マシだ!


「そういえば、お姫さんはどうしてるの?」


「実は姫様は、今日は体調がすぐれなくて。お部屋でふせっておいでです‥‥‥‥」


 ─────まさか、昨日の風呂でのぼせたのがまずかったとか?


「姫様はあのお姿になってから、体調をよく崩すようになってしまわれて‥‥‥‥」


「ベッドから出られない日が増えたんです~」


「昨日はお休みになるまで、楽しそうでしたので私達も嬉しかったんですけど‥‥‥‥」


 あ、風呂のせいじゃないのね。私のせいかと思ったよ。

 『呪詛』の影響が体調に響いているってことよね。こういうのは『治癒』とか効くのかな?


「ちょっと覗いていこうか。服も見せないと。あ、シロ君。どこ行ってたのよ」


 廊下に出ると、どこからともなくシロ君が現れた。

 昨夜に続き、毛並みが湿っている‥‥‥‥。昨日よりビショビショじゃないところを見ると、さては誰かに拭いてもらったな?


 サラさんが自分の前を歩きながらも、ちらちらシロ君を気にするので、廊下を歩きながら今回は静か~に、穏やか~に『ドライヤー』をかけてみた。

 

 ─────あ、いい感じにできた。

 キラキラなびく毛並みに、シロ君が満足そうに尻尾をフリフリしながら前を歩く。


「お姫さんどう?─────ぶっ」


─────なんだ?ぺぺっと顔を払う。


 扉から入った途端、何かか顔に触れた。 


「どうしました?」


「なんか、蜘蛛の糸に引っかかったみたい」


「─────え、蜘蛛ですって」


 サラさんとユリアさんが、顔色を変えてあちこちパタパタする。 

綺麗に掃除は出来てると思うよ?


「リオさん?」


 部屋の置かれた寝台の方から、姫様の声がした。

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