第69話 人が駄目になる
「あ゛ぁ~~~生き返る~~」
「さいこうです~~」
只今、新装開店でピッカピカになった『大浴場』で、一番風呂をいただいております。
─────お風呂セット?慌てて廊下に出たら、姫様付き?の侍女さん達と遭遇して、秒で用意されました。侍女さんめっちゃ優秀。
「温度も湯量いいね~、温泉旅行いったの思い出すわ~」
「私はスーパー銭湯です~。いろんな湯舟、いいですよね~」
「あ~私も通ったなぁ、色んな湯舟に入った後に、冷たいのキュ~て飲んでから、休憩室にある寝椅子でだらけるの良かったな~」
「テレビとか付いてて、駄目になる椅子ですよね~」
─────そうそう、すべてが手の届く位置に配置できる椅子。あれは人を駄目にするやつな。
「そう言えば、お姫様は一人でお風呂入っててよかったの?ほら、お付きの人とかに、手とり足取り洗ってもらうんじゃないの?」
「そんなのとっくに止めさせましたよ。『大きくなったから一人でできるもん』って。大体恥ずかしいじゃないですか」
小さな頃からお世話されていたら、気にならないのかなと思いきや、前世の羞恥心が顔を出すので慣れなかったと。
最初は、『大浴場』にお姫様を先に入れようとしたら、「何言ってるんですか、一緒に行きますよ」と半ば強引に入らされた。お姫様という立場の人だからと、一応自分なりに気を利かせたのに、その辺は結構アバウトなんだろうか?
「お姉さんは規格外のお客様ですよ~。私と同格ですよ~」
─────うん、絶対違うと思うけど。しかし、お姫さんのおかめ顔の着ぐるみ頭だけが湯から出ている光景は、なかなかシュールだ。
いや、ホラーか?どっちにしても自分は空気の読める日本人だから、そこはツッコまないよ。
「お姉さん用の服用意しますんで~明日着て見せてくださいね~」
「悪いね、用意してもらって」
そうなのだ、着ていた服はさっき侍女さん達に持っていかれた。洗濯行きだと強制的に。そうなると着る物を自分はもっていない。
お姫さんに相談すれば、ちゃんと用意するから問題ないと言われてしまった。
「うふふ~私、元の世界でも服作ってたんです~。こっちに来てからも自分でデザインして作ってみたんですけど~みんなに着るの駄目だって言われちゃうし~代わりに誰も着てくれないし~だから、ちょ~嬉し~」
─────ん?服を作る‥‥‥‥まさか。
「‥‥‥‥元の世界の服って‥‥‥‥まさか」
「イベントに向けてのあの熱量が、忘れられないのです~」
─────まさかレイヤーかよっ!
「大丈夫ですよ~こっちの世界のデザイン風ですから~ちゃんとした服ですよ~~」
一気に不安になってきた。─────何着せられるの自分。
この歳でコスプレはちょっと‥‥‥‥。でも、この世界の服となれば、どんな服でも否応なくレイヤー気分になるのでは‥‥‥‥。そんな事を思っていると「ふふふふ‥‥‥‥」とおかめ顔が笑っている
‥‥‥‥さっきからなんか変だよな?
「あ───っ!お付きの人─────っ!お姫さんのぼせてる─────っ!」
着ぐるみ頭は無表情だから、全然分からなかった。
叫び声と同時に、どぱぁーんと乱入してきた侍女さん達は実に優秀で、あっという間にお姫さんを湯舟から回収していった。‥‥‥‥速い。奴らできるな。
私は用意してもらった室内用の服に着替えた。なんかこれトレーナーみたいで楽。
廊下に出ると、さっきお姫様を連れて行った眼鏡の侍女さんと少年がいた。
この侍女さんさっき浴室に入ってきた時、眼鏡曇ってたよな‥‥‥‥侮れん。
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