第64話 ほうっ!ほうっ!

要らぬ誤解を受けた私は、かくかくしかじかと経緯を説明した。

 ちゃんと埋葬してきた私を、ちょっとは労わってよ。

そりゃぁ、ちょと派手な柱が出ちゃったけど。


 おっさんはおおよその話は聞いていたらしく、私の説明に納得してくれた。 


「それにしても、アイテムボックス持ちか‥‥‥‥。ひょっとして、まだあるのか?」


 ─────ある。たんまりと。

 押し付けられたとはいえ、遺品だ。

 邪険にできないし、伝手もないし、どこへ届け出るのかとおっさんに訴える。 


 必死に説明する私に、おっさんはため息をついた。


「アル坊達は、昼間の騒ぎの後始末で執務室に缶詰めじゃ。明日、ワシがギルドに付き添おう。─────それで本当にいいのか?タグはともかく、他は拾得した者が所有しても、誰も文句は言わんぞ」


「─────いやいや、そこは遠慮します」


「そうか─────」 


 遺品だからね。いくら拾った者の好きにしていい、と言われてもちょっと後ろめたい。

 グイっとジョッキを傾ける。


 うおォォォォォォォ─────


 ─────ぶっ。


 突然の雄叫びに、そちらの方に視線を向ければ、半裸集団が火の周りで、ヘッドバンキングをかましていた。

 長い髪を振り乱し、狂喜乱舞している姿は‥‥‥‥『怖い』の一言。


「何じゃ、あ奴らは」 


 のっしのっしと半裸集団に近づくおっさん。

 さすがに説教大会だよね‥‥‥‥。


「なんじゃその振りは!よう見ておけ!─────こうじゃ!こう!!こうっ!!」


 ‥‥‥‥ちょっと違った‥‥‥‥。


「‥‥‥‥シロ君。食べ終わったし、私達は行こう‥‥‥‥」  


「お姉さん。もういいんですか~?」


 いつの間にかいなくなっていたウィル少年が、戻ってきた。


「うん、おいしかった」


「姫様が、食後のデザートをご一緒したいそうですが~」


「─────あ、いいね。行く行く」


 ほうっ!ほうっ!と掛け声が響く一種異様な雰囲気になってきた宴会場を、私達は抜け出した。


 案内されたのは、姫様の私室のようだった。こっちこっちと、姫様がテラスのような所で呼んでいる。


「じゃあ、お持ちしますね~」 


 少年が去り、私達はテラス席へ移動した。綺麗な星空が見える特等席のようだ。

遠くから「ほう!」の掛け声が響いてくるが、聞こえない聞こえない。


「ドルク師匠に会いました?」


「会ったよ~どこの世紀末かと思った。─────あのおっさん、師匠なの?」


「体力づくりに武術を習いたいって、ごり押しで教えてもらってました」


 習ってみたいと申し出ても、身内はなかなか首を縦に振らなかったらしい。─────お姫様だもんね。普通は守られて当たり前の存在。


「─────まあ、出来ないよりは出来た方がいいよね」


 ちなみに私は剣の型なんてない。本能の思うままに刀を振るっている。─────あれ、ひょっとして自分はヤバい奴なのか?


「お待たせしました~」


 カラカラとカートワゴンを押しながら、少年がスイーツを運んできたので、ヤバい思考はどこかに飛んで行った。

 少年に給仕されながら、はたと気付く。


「そう言えば、この砦ってメイドさんとかいないの?」


 マールさんとかベテラン勢はみたけど、いわゆるお姫様付きみたいな、侍女さんがいない。今現在も少年が給仕している。


「あ~いるにはいるんですけど、人数少なくて~」


「医療棟を優先させてたんです。私は最低限の事は出来ますからね。でももう明日にでも帰ってきますよ」


 医療棟とやらは、明日にも全室空室になるらしい。─────昼間派手にやっちゃったからな~。  


「それで相談なんですけど。お姉さん『大浴場』入りたくありません?」


─────あるのっっっ!?入りたい!入る!入る!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る