第63話 どうしよう

「それからこちらが~。ご所望の『焼肉定食』?です~」


「─────おおぅっ!」


 コトッとワンプレートで前に置かれたのは、ちょっと色合いが違うが、何と言われれば『焼肉定食』だ。

 米はないが、パンが添えられていて、小ぶりのスープも付いてる。洋食タイプの定食みたいだ。


「なんだ、お前さん。それが食いたかったのか?」


「そりゃぁ、もうっ!」

 

 なんたって、お口が『焼肉』になっていたのだからな!

 ワクワクしながら、お肉ちゃんをいただく。箸がないからフォークでいただきます。うま───い。


 うまうま~とせっせと食べていると。おっさんは、少年から肉を受け取っていた。


「あれからお姉さんの作り方を真似て、みんなで作ってみたんですけど、味見してくださ~い。あ、ちゃんとマールさんが下ごしらえしましたから、大丈夫ですよ~」


 さらに追加されたのは、『フライドポテト』。

まあ、水にさらして揚げるだけのお手軽料理だからね。芽さえ気を付けていればね。


「いい匂いだの。コレは何だ?」


「お姉さん曰く『フライドポテト』です~『ジャ・ガ・イモン』を油で揚げたものです~」


「‥‥‥‥あ、あれは腹壊す奴じゃ‥‥‥‥」


「お姉さんに理由を教えてもらったので~食べても大丈夫になりました~」


 おっさんはビビッていたが、シロ君が一本づつ器用にヒョイパクしているのを見て、安心したようだ。


「ほほう、これはまた‥‥‥‥」


 一言呟いて、もっもっと次々口に入れる。

 ─────ほぉうら、信者がここにまた一人‥‥‥‥。


「あ、そう言えば。それは何?」


 チョイチョイと首元を指す。


「─────これか?」


 首元から細いチェーンのような物を引っ張り出す。そこにタグのような物が二枚通されていた。


「これはまあ、身分証のような物だな。隊員ならば、名前と所属と階級。冒険者ならば、名前とランクとかが刻まれている。ワシはどちらにも登録してある、ちと特殊な例じゃがな」


 ─────ほうほう。だから二枚あるわけね。


「ぼくもありますよ~」


 少年が見せてくれたのは、一枚のタグ。


「これには護法が掛かっておってな。これが外れるのは、引退した時じゃな」


「引退したんじゃなかったの?」


「じゃから、特殊例だと言ったじゃろ」


─────へ~、そうなんだ。よく分んないけどおっさん、伊達に歳食ってないて事だよな~。きっと色んな所に伝手とかあるんだろうな~。


「お主、変な事考えておらんか?」


─────やべぇ。顔に出てたか?ホホホホと誤魔化す。


「まあ後は、冒険者なんかは、それを拾ったらギルドに届ける義務がある。─────行方不明のままじゃな‥‥‥‥」


 一応食事中なので、おっさんなりに直接の表現は避けてくれた。


 なるほど、冒険者なんかはクエスト途中で死亡、全滅するケースもあるわけだ。

 それで、他の冒険者が死体を見つけた場合、死体などはその場で埋葬し、その後処理としてタグを持ち帰り、詳細を報告する事になるらしい。

 そうすることで、クエスト実行中から死亡者になるわけだ。


 ‥‥‥‥ん?タグ?‥‥‥‥


「─────どうしたんじゃ?」


「あ~えっと。‥‥‥‥これ、どうしよう‥‥‥‥」


 ─────ザラァと机の上に、こんもりと積み上げられた、タグの山。 

 

 あれだ。目がやられる柱が現れた時、押し付けられたやつの一部。

 盗ったわけじゃない。押しつけられたのだ。


「‥‥‥‥お主‥‥‥‥まさか‥‥‥‥」


 おっさんの驚愕の顔に、誤解されている事を悟る。


「ちょ、違うよっ!コレは拾った。拾ったのっ!」


 投げつけられたのを、ブツブツ言いながら拾ったのだ。


─────うん、間違いない

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