第3話 グーも正義

見渡す限りの真っ白な空間。何もない空間に鼻を押さえながらうずくまるピンク頭のツインテールと、やたらキラキラした金髪の男がひっくり返っている。

 自分はそれを見下ろしている状況から、浮いていると思われたが、今はそんなことはどうでもいい。


「お前コイツの上司だろ?私にはなぁ~推しに会いに行くという史上最大の使命があるんだよッ!さっさと元の場所にもどしやがれッ!」


「なんだコイツ‥‥‥‥今度は目が出たぞ‥‥‥‥き‥‥‥‥おいアンヘ、コイツどこから持ってきた?」


「‥‥‥‥え、いつもテラ先輩が連れてくる世界から持ってきたんだけど‥‥‥‥あの、本命と一緒に巻き込んで来ちゃったの。エヘッ」


「笑って誤魔化すんじゃねえよ!またあの世界から持ってきたのか!」


「テラ先輩だって『あそこはチョロい』とか言っていつもやってるじゃないですか」


「いやまあ、そうなんだが‥‥‥‥」


 パチィパチパチとイライラとともに私の周りに放電が走る。


「聞いてんのか‥‥‥‥貴様ら」


「おい望み通り戻せっ!なんかヤバいぞコイツ」


「え~減点になっちゃうじゃないですか‥‥‥‥わかりましたよ。‥‥‥‥あれ?テラ先輩、向こうの体、火葬されちゃってます‥‥‥‥」


「な‥‥‥‥」


 パッァァ────ンッ!!!


 突然の落雷が二人を包み込んだ


 ぶわりと何かが二人から漏れだして私に取り込まれていく

 びっくりするのはこれだけの攻撃を受けても死ぬ様子のない二人だ。

 

─────どうやら遠慮はいらないようだ。だいぶ私の思考も人間の縛りから隔離されているようだ。


「コイツっ!ただの魂がおかしいと思ったら、俺等の能力うばってやがるぞッ!」


 へぇ~そうなんだ。さっきから流れ込んでくるのはこいつらの能力ってことね。


「え、じゃあ私のナイスバディがっ!」


 おう、さっきまでタユンタユンしてたのが今はまな板だぜぇ~変なとこに能力つかってんのな~


「俺の必殺『天地の雷』使いやがった!」


 おおぅ、こっちは病気を発症していらっしゃるようだ。主に思春期のにかかる病気な。


「で‥‥‥‥どう落とし前つけてくれる」


 地べたをズリズリ這いずりまわる低い低温ボイスが私から繰り出される


「コイツ本当にあの世界の人間なのか?あそこは何でも「喜んで」っとか言いながらこっちの言いなりだったじゃないか」


「本当ですっ!先に転生した子は喜んで行きましたよっ」



『‥‥‥おろ‥者。‥‥‥かの世界‥ 』


突然第三者の声が割り込できたが姿が見えない。だが二人には覚えがあるらしく、わかり易く慌てだした。


「やだ!封印が解けちゃう」


「死にぞこないの女神が‥‥おいあの魂消すぞ。これ以上能力を持っていかれたらマズ‥─────ぐわぁッ!」


 物騒な発言をした中二病野郎を私は『蹴り飛ばした』


「え‥‥‥‥ちょっとなんで‥‥‥‥あんた」


 ピルピルと震える指で私を指差すピンク頭。人指差してんじゃないよ


「何って、グーで殴りたいから再構築しただけよ」


 手より先に足が出ましたけど。─────追加するから、まあいいか。


「うそでしょっ!私は女神よっ!」


「知らん」


 ピンク頭が、きりもみ回転で飛んで行った。

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