異能はすぐそこに

 僕の名前は稲城与一いなぎ よいち 

学校の帰り道にある天下掘商店街で福引きがあり、

昨日スーパーで買い物した時に引換券を2枚貰ったので、引くことにした。


 スーパーのすぐ近くに長テーブルが3脚並び、天下掘商店街

福引きと書かれてたポスターが貼られていた。


 赤法被をきた茶髪でサングラスの兄さんの前にある

六角形の赤いガラガラを勢いよく時計回りに回し、

赤い色の玉と白い玉が出てきた。白い玉は残念賞のポケットティッシュだ。


「おぉ赤い玉出ましたね。では赤い玉は能力水150mlとなります」

「能力水?なんすかそれ」


お兄さんが怪しいネーミングの水を僕に手渡した。


「実はこれ自分の秘めた力、そうだな…そう、異能をさずけて

 くれる不思議な水なんだぁ~まぁ発動しない人もいるんだけどね」


「異能って漫画やゲームじゃないですか、、有り得ないでしょ

 てかそんな得体の知れない水要りません。ポケットティッシュ

 だけで充分です」


「まぁまぁ邪険にしないでさ、、もう少し話そうよ」


 急に口調がフランクになって、謎の能力水について話してくれた。

僕が水を受け取らずに帰ろうとして時にお兄さんが僕の肩に

手をかけ、驚いた僕が振り向くと、サングラスを少し外してこちらの顔を見てきた。


 その瞬間、体の自由がコントロールされているように体が言うことを

聞かなくなり、「はい、せっかくなら聞きます」と話していた。


「おぉ聞いてくれる感じになったかぁ~嬉しいねぇ。ありがとう」


  お兄さんがそういうと体の自由が戻ってくる感覚が脳を伝わって、

体が理解した。


「さっきのはちょっと僕の異能ね、これで少しは僕の話、信じてくれた」


「正直、理解不能で頭が追いつかないです」


「最初はそういう反応なるわな。でもこの能力水、味は普通のミネラルウォーター

 だし、試しに飲んでみたら。実際興味ない異能?」


  そう言われるとないとは言い切れない。実際、お兄さんがやったマインドコントロールは異能ぽいし、もしかしたら暗示の類かもしれない。


「お兄さん以外もそのいるんですか、、その、、異能を使える人」


「そりゃあ、いるよ、今休憩に入っている女の子もそうなだから」


さも当たり前のことだと言わんばかりに言い切った。


「はぁ」


確かにこのお兄さんだけ異能が使えますなどありない、

見た目は、普通の人間なわけだし。神様とか異世界人ならこの人だけ

異能が使えますと言われれば少しは納得がつくけど。


「佐久間さん、交代ですよ」


「はいよ」


佐久間という怪しいお兄さんに声を掛けて、こちらに歩いてくるのは、


「えぇ、間宮さん」


「!稲城くん」


 夕方の淡い光に照らさる黒い髪、くっきりとした目

グレーカーディガンに赤い法被を着た少女、それは僕のクラスメイトの

間宮桜まみや さくらさんだった。


「えっと~間宮さんはここでバイト?」


「そう、臨時のバイトで入ってるの」


「そ、そうなんだえっとじゃあ学校で、また」


 この場は帰ることは決めていたので、抽選会場を後にした。

僕は間宮さんに「君も異能が使えるの?」なんて聞けるはずないよ。



翌日

 天気は晴れ、5月になり、木々の色が緑に移る季節。

通勤をするサラリーマン、列をなして登校する小学生、

ママチャリを懸命こいで子供を送り届けるお母さん、

朝の住宅街の光景である。


 昨日あれはなんだったのだろうか。ドッキリの類だろきっと。

僕は高校へ行くため、白のヘルメットを被り自転車で住宅街を走り

ながらふとそんなことを思った。


 学校に着き、校門を入ってすぐ右にある屋根付き駐輪場に着くと


「あれ、昨日の少年?」


「!!」


 校門から入ってきた生徒に声をかけられた。 

振り向くと声の主は昨日の茶髪のサングラスのお兄さん,佐久間さんだった。

今日は青の色付きのメガネで、ネクタイは緩くし、ブレザーのボタンを

閉めていない。きちんとネクタイとボタンを閉めている僕とは対極的な

服装をしている。


「いやぁ、昨日間宮に聞いたら、『同じクラスなんです』とか

 いっててさ。まさか会えるとはいや~こんなことあるんだな

 はは」


 僕としては「会いたくないですよ、あなたみたいな怪しい人」と

言いたい気分になったが、「はは、、そうですね」という小市民の回答しか

出来なかった。また、変な力使われても困るし、でもさすがに学校では

使わないよね、多分。


「昼休み、2-Bに来て話さあるか」


「あ~ちょっと昼休みは食堂行かないと」


「なら、話を終わったら俺が奢るよ、ラーメンがいいかな~」


 佐久間さんはご飯で釣ってまでどうしても僕と話がしたいらしい。


「いや、そこまでしてもらわなくても、、」


「ここは先輩ちゃんにまかせなさい!バイトもしてるし、学食くらい

 おごっちゃうよ」

 

 自分の胸をすこし小突いて任せろとこっちにアピールしてくる。

確かにバイトをしていれば学食のワンコインラーメンはおごれる。


「でも、、」


「そうだ、どうせなら間宮も呼ぶか、あいつにも話したいことあったし」


 この場で思いついたとばかりに、間宮さんを誘うこと付け加えた。


「・・・」


 僕らは歩きながら、駐輪場を離れ、昇降口に入った。


 間宮さんも来るのか、それは少し魅力的かな

話を聞いてみたい、彼女も異能が使えるのか否か。

使えなかったらあの話はこの人が噓でついているで終わるんだし、

もやもやしなくて済む。


「そういうことなら、、わかりました」

 

 渋々ではあるが僕は了承した。


「OK、間宮にはLineで言っておくからさ」

 

「わかりました」


「それじゃあ、後で♪」

 

 佐久間さんはこちらに手を振り、鼻歌まじりに自分の下駄箱に向かった。

なんかあの人のペースに飲まれている感が否めないな。

一人でそんなことを思っていると、


「おはよう、稲城くん」


「うぁ、間宮さんか、お、おはよう」


「どうしたの、そんなびっくりして」


「ちょっと考え事して、そんな時に声かけられたから、

 驚いただけだよ」


「そうなんだ、なんかごめんね」


「いいよ、気にしないでこっちが勝手に驚いただけだからさ」


 そういうながら、僕は外履きから上履きに履き替えた。


「ならよかった。それより何で昇降口で考え事してたの」


 間宮さんも上履きに履き替え、廊下へ歩いた。


「それがさっき、昨日の法被のお兄さんに声をかけらえてさ。

 まさか同じ学校だと思わなかったよ」


「法被のお兄さん、あ~間宮さんか。うちの高校の2年生

なんだよね。私はバイトでちょくちょく一緒になることが

あるからさ。そこで知り合いになったんだ。」


廊下を出てすぐ右の階段を登りながら話を続ける。


「そうなんだ」


「で、間宮さんとは何話してたの」


「それが話があるから2-Bに来てだってさ。なかば強引にね」


「あの人そういう強引に話持って行くところあるから、

 話半分で適当に流してもいいよ」


「忠告ありがとう、でも聞きたい話もあるから」


「そっか、そうだよね」と間宮さんは呟いた。




 










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