第6話 ダンジョン地獄完成間近です

 ついに俺も七層になりました。地獄で七層って言うと本格的なイメージじゃありませんか? なんか、他所と混ざってます?


 カタログを拝見しましょう。

 大蛇、大ムカデ、蟻、鼠、腐女死 増えてるじゃないですか。

 大蛇と大ムカデはボス候補だったのに雑魚化ですか。

 牛頭が入ってないってことは、この二体は外れだったんですね。選ばないでよかった。


 でも、なんで急に大盤振る舞い? 次、剣豪十五だからしっかり準備しなさいって。

 しかし、いきなり剣豪十五って。負け戦前提で、負けたらどうなるかのテストですか。ハエと最猛勝はボス戦終了まで追加召還なし。勝てたら勝てたでいいと。

 入って来る人数は十五人固定のようです。地獄って少人数制だったり個別指導のとこも多いですよね。


 では、見た目とカタログスペックを見せて頂きましょう。しかし、なんでこの期に及んで情報の出し渋り、いや、何も不満はありません。

 大蛇はそのまんまで、耐久力と力だけの筋肉馬鹿ですね。剣豪相手はきつそう。

 大ムカデ毒持ちだけど、この毒溶けるやつですか? 苦しいだけですか。却下。

 鉄蟻、床に穴を掘って隠れ、奇襲が出来る。金剛鼠、壁に穴を掘って隠れ、奇襲が出来る。

 この二つ当りでした。飛べないから回避したのに。今更採用するのもくやしい。


 腐女死、四つん這いゾンビだと思ったら、見た目はそんなに悪くありません。

 血の気が引いた肌に所々死斑が出てるだけ。牙と爪は標準装備。色はおぞましい死体らしい黒。何が出来るんでしょう。


【腐女死 臭い】


 それだけ? 大外れか大当りのどっちかっぽい。

 ここまでそれで来たんだ。全裸四つん這い女シリーズに賭けましょう。


 腐女死召還。 うにゃあ、この、もうこれ以上絶対無理ってところに更に増える、得も言われぬ苦痛。

 召還しちゃったんで、ちゃんとした能力教えてもらえますか。


【満腔が絶えられない悪臭を放つ。腐った内臓を便として垂れ流している。亡者は悪臭に対する耐性がない】


 基本的に亡者はあらゆる苦痛に耐性がないんですが。でも、俺としては大当りですね。剣豪対策思い付きました。

 あ、でも馬頭さん大丈夫なの?

 馬頭さんの部屋は別空間なので臭いは入って行かないし、亡者に付いた汚物や臭いも消えるようです。


 では、各層の床を作り変えてから、お出迎えしましょう。

 男女比は前回と同じ男八女七です。

 一層は完成していると思うので前回のままです。

 追加召還なしなので、鍾乳石攻撃の後、ハエ全員特攻です。

 男二、女一仕留めました。


 二層もいじっていません。落とし穴に男女各一落ちた後、出口付近で一人狙いの特攻。一応狙い通り女一脱落。

 三層に落ちた修羅は手足だけ食わせて一旦放置。熱蝋の間で一人狙い特攻をやりましたが、減らせず全滅しました。

 ガラスの間の次の土間は、市松模様の床に高低差があるのに模様の大きさで平面に見える騙し絵を入れました。

 あんまり高いと違和感が出るので、落差は五メートルです。一人が落ちて片足折っただけでした。修羅丈夫です。

 すり鉢の間のボス部屋のダミーを開ける前に出口に気付かれてしまい、復活した野干が再度特攻しましたが、あえなく全滅。


 四層は壁沿いを二人並んで歩ける縁にしてゆるい坂にしました。夜狼が引き摺り降ろしやすくなりました。

 男女各一捕獲。奇襲を警戒されると勝てないので、出口まで生き残りを温存して、出口で特攻をしましたが、成果なく全滅。

 殺傷効率だけではなく、恐怖を与えるのも大事なので、勝てないと判っていても特攻させざるを得ません。この辺は俺に対する責め苦です。


 五層の赤猫は最初の一斉アタックで男二人が飛び掛ってきたのの胴を斬って内臓を浴び、目が潰れました。

 その後、首を斬る→くっ付く→遠くに投げる→持っていると胴が動かない、がばれてしまい、逃げられました。

 

 しかし、目の見えない男二人は六層であっさり蛇女の餌食に。更に全員一人狙いで男女一仕留めました。ここまでは計画通り。


 さて、第七層です。臭いだけなんて、戦闘的にはただ修羅が辛いだけのようですが、腐女死の最大の武器は垂れ流している腐った内臓です。これを投げ付けます。

 宮本武蔵でさえ、島原の乱で農民がめちゃくちゃに投げる石に当って怪我をしているのです。

 目に入ったら終わり。修羅は身体能力が高いだけで、達人的な勘は持っていません。


 近付いてきたのを斬っても、とんでもなく臭い血が飛び散ります。斬った手足、首すら生えてきます。

 弱点は動きが遅いので、走って逃げられることかな。男女各一にボスの間に逃げ込まれました。


 ここまでモンスターの攻撃を一切受けなかった二人です。正に修羅の動きで、男の刀が馬頭さんの首を斬り落とし、倒れた体と首が光に戻って合わさり、一本の剣になりました。


「馬頭鬼の剣か」


 馬頭さんを倒した男が呟きました。 

 これが彼らに与えられた「餌」でした。修羅は餓鬼の飢餓感のように、無駄に良い武器を求めるのです。

 最初から持っている刀も、折れず曲がらず、刃こぼれすらせず、切れも止まらないのですが。


 ここからが本当の地獄です。

 ボスが倒されると、パーティーが解散して互いに殺し合う修羅に戻るのです。刀を手放して剣を手にした男は、斬りかかって来た女をあっさり斬り捨てて扉が消えたボス部屋から出ました。当然、腐女死が待っています。

 途中で倒された者や、ボス部屋での修羅同士の敗者も、勝者がボス部屋を出た時点で再生して外に出られますが、勝者本人はここから歩いて地上に戻らないといけないのです。

 最も強い修羅が最も業が深いのです。

 

 腐女死に徹底的に足を狙わせます。それでも動ける状態で昇りになった螺旋階段にたどり着きました。

階段からずり落ちたら、どこまで登っていても前の層に戻されます。

 修羅はただ前進しなくてはなりません。

 

 階段を登り切り六層に入った男に、蛇女が殺到します。

 男の手が体を離れ、馬頭鬼の剣が床に落ちて消えると、馬頭さんが復活しました。

 でも、このままだと馬頭さん可哀想。

 その内獄卒に昇格出来るんですか。

 負け前提のボスは、亡者を責めて業が溜まった獄卒の浄化ための仕事になるのですか。

 犬に食われるんでしたっけ? そんなのありましたね。

 馬頭さんが昇格したら、獄卒が一時的に弱体化して派遣されてくるんですね。

 ちょっと寂しい。

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