誰のものでもない土地

ええやないかほいで

第1話 アブラヤンナイト

ー誰の土地でもない場所があります。

そこは誰のものでもないのです。ー


 20xx年人類は超生命体となった。ありとあらゆる障害を乗り越え不老不死を手に入れていた。そんな人類が唯一手中にできていないものがあった。それは神のいる土地である。

 高度に発展した科学技術を駆使して森羅万象を知った人類にとって知り得ながら手に入らないのがその土地であった。


 ある日、村の油売りの少年が街へ出た帰り道、いつもと違う広大な平野に出くわした。少年は一瞬の間に逡巡し最後はその平野に引き込まれるように足を踏み入れた。

 だが、何もない。踏み入れたとてそこは何もない平野なのだ。何も無いから何もない平野と言える。少年は徒然に歩いた。

 少年は岩影を見つけるとそこに腰かけた。

「はぁ、疲れた。どれくらい歩いただろう、喉がカラカラだ。」

少年はなにも飲まずにひたすらに歩いていたのだ。とは言っても今あるのは油を売って得たお金だけ。お金を食べることはできない。

「あーあ、この金を水に変えることができたらなぁ」

「それならそのお金を地面に向かって投げてごらんなさいよ」

どこからともなく声がした。少年がハッと振り向くとそこには妖精がいた。

「君は誰だい?」

「私はこの土地。」

「この土地の妖精ってこと?」

「そう、そんな感じ、そんなことはいいから早くそのお金を投げてごらんよ」

「わ、わかったよ、、、」

少年は言われるがまま、地面に向かってお金を投げてみた。

すると、地面がまるで水面の様に揺れ動き、その中から水筒が現れた。

「わぁ、すごいね!君は本当に妖精なんだね!」

少年は驚きながら水筒を拾って水をのんでみた。

「うん、たしかにホンモノだ。喉の渇きが無くなってくる。ところで君は一体何者なんだい?なぜ現れたんだい?何か代りに請求しようってことかい?」

少年は気力が戻ると、思っていた疑問を全てぶつけた。

「違うわよ、そうね、言うなら暇つぶしってとこよ。」

「暇つぶし?」

「そう、この場所には滅多に人がこないからね。」

「そういえば、こんな場所は見たことが無かったんだ、何か気まぐれに現れてはこうやって暇つぶしをしてるってことかい?」

「私はずっとここにいたわよ。それに、私からあなたたちに近づくことなんてしないわ。」

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