第16話 マスコットキャラ2・お悩み相談
マスコットキャラドライくんのダンスという名の格ゲーが終わり、一息ついた。画面に人妻キャスタービッキーが映し出される。
「えっーと、音声トラブルで一部ドライくんの綺麗な声が混ざってしまいましたわね。失礼致しました。視聴者の方々には謹んでお詫び致しますわ。後でスタッフにお灸を据えておきますわね。ふふっ」
はい、かわいい。ビッキーは大学卒業後すぐにこの会社に就職したから今年で十三年目で、結構発言権ありそうなんだよな。ビッキーを上司にしたい人生だったわ。クソッ!
「ドライくーん、素敵なダンスありがとうですわー!」
「ハァハァ……それはよかったドラ……こひゅーこひゅー」
虫の息じゃねぇか! そりゃああれだけ激しいダンス踊ったらそうなるわな! 中身と声を一緒にするからこうなるんだよ!
「少し休憩しますの?」
「いや、金のためなら頑張るドラ……」
マスコットプロ意識高い! もうお天気お姉さん辞めてマスコットの中の人になろう!
「少し休んだ方が良さそうですわね。それではドライくんが息を整える間、ドライくんのプロフィール紹介をしておきたいと思いますわー!」
さすがビッキー優しい。
「はじめにも言いましたけれどドライくんは洗濯王国から来た洗濯精霊なのですわ」
精霊っつーけど見た目はピラミッドに挟まってそうなミイラの亡霊だろ。早く除霊しろ。
「年齢は931歳ですわ」
語呂合わせでクサイだね! 洗濯精霊が絶対選んじゃダメな年齢設定だろ!
「職業は下手人」
職業じゃねぇし、そんな奴お天気番組に出しちゃダメだろ! 早く国際警察に突き出せ!
「特技は資金洗浄」
マネーロンダリングやめろー! もっと他に洗浄するものあるだろ!
「身長は生乾きのジーンズ一本分、体重は汚い洗濯カゴ一杯分ですわ」
嫌な表現だな! もっとマシなのあるだろ!
「体色はコッペパン色ですわ」
なにがコッペパン色だ。かわいこぶってんじゃねぇぞ。強いて言うなら机の中に放置したカピカピのやつだろ。
「あ、色は私が勝手に言ってるだけですわ」
コッペパン最高! コッペパン最高! ビッキーが言うならなんでも最高!
「……どうやらドライくんの準備が整ったようですわね。ではでは、次のコーナーの説明を簡単に致しますわ。続いてはですね、ドライくんのサクッとお悩み相談解決コーナーですの。その名の通り全国から寄せられた相談事をサクサクっと相談名人のドライくんが解決していきますわー」
なにが名人だ。まず人じゃないだろ。でもビッキーが言うなら全て正しいです!
「ドライくーん、用意はいいですのー?」
「返事は“YES”ドラ」
きたねぇコッペパンの癖にカッコつけんな!
「では相談を読み上げていきますわね。……ドライくんこんにちは。最近彼氏が冷たいです。どうしたらいいでしょうか。アドバイスお願いします」
「
チョコかよ。せめて風呂にしろ! てか温度の問題ではないだろ!
「続いての相談ですわ。好きな人から貰った大切なものを落としてしまいました。隠し通すべきか素直に謝るべきか、どうしたらいいでしょうか」
「好きな人も落とすドラ」
どっちの落とすだよ。恋愛的なのか物理的なのか。ま、コイツの場合後者だわな! 多分崖から落とせ的なことだな! お前が落ちろ!
「当方三十歳男性です。現在、私には真剣に結婚を考えている彼女がいます。結婚指輪は給料三ヶ月分のチクワでいいですか?」
いやネタなのかよ! ちょっとまじめに聴いて損したわ!
「がんもどきにするドラ」
せめてリング状のものにしろ!
「受験勉強が辛いです。ドライくん元気ください」
「エナドリ1ケース24本入り買うドラ」
うんうん、これでほぼ一ヶ月は元気もりもりだね! そういうことじゃねぇんだよ!
「拙者大学生でござるが、就活嫌でござる! 働きたくないでござる! 嫌でござる嫌でござる!」
クソ相談やめろ。ただ、ビッキーのござる口調かわいい。そういう面では評価してやろう。
「神妙にお縄につけドラ!」
ノリいいな!
「会社が遠くて出勤が面倒。ワープ装置作って」
「左遷されろドラ」
急に毒吐くな!
「夏でもないのに暑いです。涼しくしてください」
「濡れ衣を着せてあげるドラ。肝が冷えますよドラ」
怖いわ! ブラックなのやめろ!
「ここ数日、雨が続いて洗濯物が乾かせません。何か対策はありませんか?」
「捨てたら?」
洗濯精霊が言うことじゃないね! せめて語尾にドラ付けろ! めっちゃ嫌なやつに見えるだろ!
「晩ごはんは肉じゃがよー」
確定かよ。相談しろよ。ただ、ビッキーが言ってると新婚感出るから良しとしよう。相談者め、命拾いしたな!
「えー、カレーがよかったドラー!」
後から言うな! 離婚しろ!
「ドライくんのパンツの柄はなんですか?」
出たな。参考資料にも似たようなのあったよな。相談ってある程度スタッフが選別してるだろうからわざわざ選んだっぽい。グレーゾーンなセクハラしやがってよぉ、どうせならビッキーが入ってる時に聞けよ。クソッ、人妻の下着教えろ!
「えっーと、カバ柄ドラ」
ドライなんだから乾き物でも穿いとけよ。……いや、待てよ。一問一答の時に好きな動物でカバって言ってたな。まさかコイツ本当に今穿いてる自分のパンツ答えてんじゃねぇだろうな?
コイツならあり得る。でも二十二歳で動物柄なんて穿くのか? 最近の女の下着事情なんてしらねぇしなぁ。最近じゃなくてもしらねぇけど!
……うん、どうでもいいわ! てかムダに考えさせんな! どうせなら人妻のパンツを考察したかったわ!
「以上になりますわー! 独特かつ斬新な問答でしたわね。ドライくん、並びに相談者さん達もありがとうございましたわー!」
「“THANK YOU”ドラ」
だからカッコつけんなカビの生えたコッペパン!
それにしてもコイツの言葉選びの悪さ、マジで毒舌系マスコットキャラにぴったり過ぎだろ。天職だわ。
だから早く転職しろ!
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