第5話 一問一答2・乃和木風華の場合

 一問一答の続き。さっきは俺が答えさせられたから次はこの女の番だ。


「じゃあいくっすよ。名前は?」


「乃和木風華、ふかふかの風華ちゃんでーす!」


 何だよそのキャッチコピーみたいなのは。アイドル気取りかよ。


「血液型は?」


勇敢ブレイブのB!」


 お前の場合BAKAのBだろ。


「年齢は?」


「秘密です」


「身長は?」


「プライベートなことなので」


「体重は?」


「お答えできません」


 スキャンダル起こしてマスコミに追及される女優かよ!


「誕生日は?」


「六月一日!」


 ふーん。無関心。


「自分の性格を一言でいうと?」


「元気溌剌はつらつ!」


 ちょっとは客観視できてんのな。


「好きな食べ物は?」


「ご飯とお漬物」


 武士かよ。いや、いいけどなんか意外だな。


「好きな飲み物は?」


「ダージリンティー」


 武士感なくなったな。


「好きなお菓子は?」


「マカロン」


 お前は武士ではないッ!


「趣味は?」


「ピラティス」


 え、なに? ぴらてぃす? 女体化したピラニア? いや聞いたことはあるけどさ、絵が浮かばない。多分ヨガの親戚だよな?


「好きな本は?」


「歩けメロス」


 走れよ。諦めてんじゃねぇぞ。セリヌンティウス泣いてるぞ。


「好きな音楽は?」


「クラシック!」


 チッ、ちょいちょい上級国民感が顔を出してやがる。


「好きな季節は?」


「夏!」


 だろうね。


「好きな天気は?」


「雨!」


 意外だな。まぁ頭冷やした方がいいし丁度いいな。


「好きな花は?」


「桜!」


 へぇ。無関心。


「好きな異性のタイプは?」


「私の男バージョン!」


 元気だけが取り柄の天然腹黒クソ男だけどよろしいか?


「好きな動物は?」


「私!」


 天然なのか、意図したボケなのか、プライドはないのか、ナルシストなのかとか、ツッコミに迷うごちゃ混ぜ回答やめろ。言葉のねこまんまかよ。


「飼いたいペットは?」


「私!」


 コイツが二匹いたら飼い主がストレスで死ぬだろうな。


「最近のマイブームは?」


「漫画アニメゲーム!」


 よかったね。


「家族構成は?」


「父、母、姉!」


 ふーん。まぁ妹感あるもんな。


「犬派? 猫派?」


「ワンちゃん!」


 俺は猫派だから敵だね。嘘だよ、どちらの派閥でも仲良くしようね。


「ご飯派? パン派?」


「パン!」


 お前は武士ではないッッ!


「外食派? 自炊派?」


「最近は自炊ですね」


 とりあえず鍋が爆発してそう。


「生まれ変わったら何になりたい?」


「お天気お姉さん!」


 やめとけ。お前にはサーカス団員の方が合ってるよ。


「明日地球が滅亡するとしたら最後に何をやりたい?」


「脳を取り出して宇宙に逃げます!」


 運命にあらがうのかよ。主人公ムーブしてんじゃねぇぞ。


「はい終わり。お疲れっす」


「お疲れ様でした! いやー、完璧でしたね!」


 まぁ普通だな。お笑い芸人なら酷評されるかもだが、お天気お姉さんにそこまで面白さは求めてないしな。


「悪くないっすね。少しアレンジ加えても面白いかも知れないっすけど」


「えー、嘘をつくってことですか?」


「いや、嘘は後々のリスクを考えるとデメリットが大きいから“本当のことだけど意外な回答”をすべきだと思うっす」


「うーん」


「好きな本とか他にないっすか?」


「うーん、あ! 魔導書が好きです!」


「ま、魔導書?」


「はい、小さい頃、魔法少女になりたくて魔導書を探し始めたんです!」


 なんかズレた奴だな。まぁいいけど。


「はぁ……それで魔法は使えるようになったんすか?」


 投げやり質問。


「それが読んでもよく分かりませんでした!」


 クソまとめサイトみたいな結論だな!


「とにかく、そんな感じでギャップのある答えを模索したらいいかと思うっす」


 スタッフとか視聴者におもしれー女と思わせたら勝ちだからな。


「なんとなく分かりました! じゃあ頑張って作ってください!」


 オメーが頑張るんだよ!


 それからあーだこーだと揉めに揉めて何とか完成した。


「ふー、やっと出来ましたね! それではもう一回見てみましょう! ステータスオープン!」


 さっき見たアニメの影響受けてんじゃねぇぞ。


 白い目で見ながらメモした紙を眺める。


“名前→乃和木風華、ふかふかの風華ちゃん

血液型→ブレイブのB型

年齢→二十二歳

身長→160センチ

体重→リンゴ三個分と愛

誕生日→六月一日

自分の性格→元気溌剌はつらつ

好きな食べ物→お茶漬け

好きな飲み物→羊の乳

好きなお菓子→マカロン

趣味→ピラティス

好きな本→走れメロス、魔導書

好きな音楽→めだかの学校

好きな季節→黄昏時

好きな天気→雨

好きな花→草、桜

好きな異性のタイプ→まじめ

好きな動物→カバ

飼いたいペット→猫

最近のマイブーム→漫画アニメゲーム

家族構成→父、母、姉

犬派?猫派?→猫

ごはん派?パン派?→パン

外食派?自炊派?→自炊

生まれ変わったら何になりたい?→お天気お姉さん

明日地球が滅亡するとしたら→脳を取り出して宇宙に逃げる”


 ……うん、まぁいいんじゃないか? まじめに答えつつもユーモアがあってさ。ちょっとまじめ成分多いけど、あんまりふざけ過ぎると馬鹿にしてんのかってなるし、そもそもコイツが回答を覚えられなさそうだしな。


「これじゃあ私、ちょっと変な人みたいじゃないですか?」


 お前は元々全部変だろ。


「これぐらい誇張した方がいいんすよ。ナンバーワンになりたいならね」


「ナンバーワン……! そうですよね!」


 目を輝かせている。


 チョロいな。コイツの欲しそうな言葉なんてお見通しよ。


「後は回答を覚えるだけっすね。間違わないように気をつけるんすよ」


「あはは、馬鹿にしないでくださいよ。こう見えても記憶力は良いんですから。なんと、九九を一から九の段まで全部言えるんです!」


 不安過ぎる。大丈夫かコイツ。

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