僕の彼女はビッチギャル
Yuki@召喚獣
本編.僕の彼女はビッチギャル
僕の彼女はビッチギャル
彼女と初めて本格的に会話をしたのは、高校2年の夏の日の夜だった。
その日は楽しみにしていた小説家の新刊が発売される前日だった。近所の本屋は発売日の前日、閉店間際に翌日発売の新刊を店頭に並べると知っていた僕は、閉店間際の夜十時前に本屋に入り、店頭に並べられていた新刊を買って外に出た。
その帰り道に、コンビニの前で座り込んでうなだれている高校指定の制服を着崩し、髪を明るく染めた派手な見た目の少女を見つけた。彼女のそばには大きなボストンバッグのようなものが置いてあった。
それが今の僕の彼女「
佐藤美咲に関して、正直に言って当時の僕は全く興味がなかった。派手な見た目と軽薄な言動の彼女は、高校のクラスではその見た目と同じような男女の友達で騒ぎ、彼氏をとっかえひっかえしたり、彼氏以外の男とセックスしたり、と言った噂話の枚挙にいとまがない。クラスでも大人しく文庫本を開いて読んでいるような僕とは、文字通り生きる世界が違いすぎる人種で、好きとか嫌いとか以前にそもそも同じ人間として認識していなかった。
そもそも興味がなかったのだから当たり前なのだけれども、いつも明るくクラスで騒いでいる様子しか見たことのなかった彼女の落ち込んでいる姿なんて想像したこともなくて、変な言い方だけれど、コンビニの前でうなだれて座り込んでいる明らかに落ち込んだ様子の彼女を見て、ああいう人間でも落ち込むことがあるのだなぁと、初めて僕は彼女を僕と同じ人間なんだなと認識したのだ。
だからというわけではないけれど、見知った顔がこんな夜更けに一人落ち込んでいる姿を見て無視できるほど僕の面の皮は厚くなかったわけで。
「こんばんは。こんな時間にこんなところでどうしたの?」
僕は佐藤さんに声をかけていた。
彼女は突然話しかけられて驚いたのか、勢いよく顔をあげてキョロキョロと周りを見回した。そして正面に立つ僕に気づくと、その大きな目を真ん丸に見開いた。
「……だれ?」
素っ気ない彼女の誰何の声に、僕は思わず苦笑いをした。
一年生のころから同じクラスなのに顔も名前も覚えられていないこと。つまるところ、彼女も僕が彼女のことに全く興味がなかったのと同じで、僕のことなんて全く興味がないこと。存在すら認識されていなかったことに対する苦笑だ。
もしかしたらナンパでもされていると思うのだろうか?
「同じクラスの鈴木悠斗だよ。帰り道に佐藤さんが見えたから、思わず声をかけただけ」
そう言いながら僕は佐藤さんの隣に腰を下ろした。
その間彼女は何も言わなかったが、その明らかに泣き腫らしたであろう瞳を僕に向け続けていた。
「本当は無視して帰ろうと思ったんだけど、明らかに落ち込んでるみたいだったし。こんな時間に一人だと危ないしね」
「……なにそれ。同クラの女子ナンパでもするつもり?」
「そういうわけでもないけど。まぁ、僕にはよくわかんないけど、辛いことがあったら他人に吐き出したほうがいいんじゃない?」
そう言いながら僕はさっき買った文庫本を取り出して、表紙をめくる。
夜は更けていて空は真っ暗だが、背後のコンビニの光のおかげで文庫本を読むには十分な明かりがあった。
「身近な人より、僕みたいにさっきまで顔も名前も知らなかった人のほうが案外いろいろ吐き出せるんじゃない?」
文庫本のページをめくりながら彼女に告げる。
「明日は休みだし、僕は暇だし。佐藤さんが帰るなり、僕に吐き出すなり、何でもいいけど、僕が通りがかったのも何かの縁だと思ってさ」
さすがに言っててちょっと恥ずかしくなったから、文庫本からは目を離さなかった。こうすれば彼女の顔を見ないで済むから。
「……なにそれ。馬鹿みたい」
少しの間だけ沈黙の時間があって、その後に彼女が告げたのはそんな言葉だった。
それからまた彼女は無言になった。
自動車のエンジンの音。ドアを開け閉めする音。コンビニを出入りする人たちの足音。ビニール袋の擦れる音。入店音。それと、僕が文庫本のページをめくる音。
どれだけの時間が経ったのか時計を見ていないからわからないけれど、コンビニの前から追い出される前だったからそんなに時間は経っていなかったのかもしれない。
それくらいの時間が経って、彼女はポツリポツリと話し始めた。
付き合っていた彼氏に振られたこと。両親が離婚したこと。母親に引き取られたが関係がうまくいっていないこと。家出して友達の家にいたが、流石に泊まり切れなくなって出てきたこと。
世間的に言えばありふれているわけではないが、それなりに聞くような話で、それでも本人にとってはこんなところで一人うなだれて落ち込んでしまうくらいにはとても悩ましいことで。
僕にできるのは話を最後まで聞いてあげることだけだった。解決策だとか、気の利いたことを言ったりだとか、そんなことはできなかったけれど、彼女の方もそれを求めてくることはなかったから、逆に良かったのかもしれない、なんて思ったりして。
「話聞いてくれてアリガト」
「どういたしまして」
佐藤さんは一つため息を吐いた。相変わらず僕は文庫本に目を向けていて、彼女がどんな表情をしているのかなんてことは全くわからなかった。
「なんかさ。一つ一つのことは友達とかにも相談したりしてて、友達もあーしたほうがいいこーしたほうがいいなんて言ってくれるけどさ。悩んでること一気に全部同じ人に話したの初めてで、ちょっとすっきりした」
「それはよかった」
「話聞くよ? とか言ってこんだけ話聞いて、あたしにめっちゃ素っ気ないのも鈴木が初めて」
「そっか」
「うん」
そこで会話が途切れる。何か話したほうがいいかなと今更ながらに少し思ったけど、結局何を話したらいいのか思い浮かばなくて僕が口を開くことはなかった。
佐藤さんも特に口を開くこともなく、どうしたもんかな、と思ってるとコンビニのドアの開く音がして「あの、ずっとお店の前に居座られるのは……」と僕たちはコンビニの店員さんに遠慮がちに声をかけられた。
そこでポケットのスマホを取り出して時間を確認して、初めてもう今の時間が夜中の十二時を回っていたことに気づいた。僕の両親は僕の帰りが遅くなってもそれほど心配しないが、流石に十二時を超えたのは初めてで、気づかないうちに何件か母親から連絡が来ていた。
僕はそれに慌てて返信しつつ、文庫本を閉じて立ち上がった。声をかけられて立ち去らずに警察を呼ばれるなんてことはごめんだった。
そんな僕に釣られるように佐藤さんも立ち上がった。バッグを肩にかけ、僕と一緒にコンビニから離れるように歩き出した。
当然だけれどお互いの家なんて知らなかった僕たちは、別に一緒に帰るように歩いているわけではなかったのだけれど、いつまで歩いても帰り道が一緒で。
「あたし、今日はちゃんと家に帰るわ」
「まあ、いいんじゃない?」
「なにそれ、意味わかんなくてウケる」
そう言って、今日見かけてから初めて笑顔を見せた彼女。
「ちょっと、連絡先教えて」
「僕の?」
「他に誰がいんのよ? これも何かの縁なんでしょ?」
「……そうだね」
なんて言いながら連絡先を交換して。
意外と僕たちの家が近かったことを知るのは、この直後だった。
それから、僕と佐藤さんはなんとはなしに会話をする仲になった。学校では話さないけど、帰りの放課後とか、メッセージアプリとか、電話とか。
佐藤さんは週に一度は何故か僕の家に来て、僕の部屋に居座る。曜日はバラバラで、だいたい家に来る前の日くらいに僕にメッセージを飛ばしてくる。
別に僕の部屋にいても何かをするでもなく、スマホを弄ったりネイルを整えたり。僕と会話することもあるけれど、そこまで二人とも相手に干渉しない。だから僕も佐藤さんが部屋にいても気にせず文庫本を読んでるし、宿題をしたりもする。それで夜になったら帰っていくのだ。
「それでさー、三組の太田にコクられたから付き合い始めたんだけどさー、あいつ元カノの自慢とかばっかで話クソツマンネーの!」
今日も佐藤さんは僕の部屋に居座って、そんな愚痴をこぼしている。でもその愚痴を言っている相手は僕ではなくて電話口の佐藤さんの友達だけど。
彼氏に振られたと言って泣いていたあの日から、彼女はそれほど日を置かずに新しい彼氏ができていた。
というか、佐藤さんはよく彼氏が変わる。彼氏をとっかえひっかえ、みたいな噂があったけど、どうやらそれは本当のようだった。
ただ、噂と少し違うところがあるとすれば、噂では彼女のほうが男を選んでいる立場みたいな言われ方をしていたけれど、実際のところは彼女は割と受け身な方だったということだ。つまり、彼女から進んで彼氏を作りに行っているわけではなく、告白されたから付き合うことにした、というのが毎回の彼氏のでき方だ。
ただ別に、告白されたから付き合ってるだけで、相手のことが好きでも何でもないから次々別れるとか、そういうわけでもないらしい。付き合い始めたらちゃんと相手のことを考えているし、好きか嫌いかの恋愛感情的なものは置いておいて、情のようなものは毎回ちゃんと持ってるもんだから、別れる時は割と毎回傷ついている。
「えー? 加茂校のセフレー? ちょっと微妙だったかなぁ。下手糞なわけじゃないけどさーって感じ。相性? っていうの?」
あと佐藤さんには何人かのセフレがいるらしい。彼氏と付き合うことと、男とセックスすることはまた別腹なんだとか。
正直に言って僕にはよくわからないけれども、彼女がそれでいいならそれでいいのだろう。付き合っているのにセフレがいるからと彼氏に振られるのも、それはそれで彼女の自業自得だ。僕から言うことは何もない。
「……ねぇ、今日は下に母さん居るし、そういうこと大声で言うのやめてくれない?」
僕個人の心情としては佐藤さんの性事情にそれほど思うところはないけれども、ここは僕の家で下には母親がいる。僕は何も悪くはないのだけれども、彼女の会話の内容を母親に聞かれるのは憚られたので、そう注意した。
「あ、ごめん。ちょっと鈴木に言われたからこの話止めるわ。またガッコでねー! じゃねー!」
佐藤さんは僕の注意を素直に聞き入れて、早々に電話を切った。こういう素直なところは彼女の美点だった。
「ねぇ」
スマホを僕の部屋のローテーブルの上に置いた佐藤さんは、僕に話しかけてきた。
「なに?」
「鈴木は彼女ほしー! とか思ったことないの? いっつも本読んでたりするけどさ」
こういったことを聞かれるのも初めてではなかった。というか、彼女は年頃の女の子らしく、こういう他人の恋愛話が好きだったりする。
「前も言ったけど、別に欲しくないわけじゃないよ。いい人がいればな、くらいだけどね」
「枯れ過ぎ。おじいちゃんかよぉ」
こういうやり取りも、いつも通りだ。
「ねぇじゃああたしは? あたしはどう?」
佐藤さんはローテーブルに両手をついて、身を乗り出しながら聞いてくる。目が輝いていて、からかいの色を隠そうともしていない。
「そもそも佐藤さん彼氏いるでしょ。浮気相手になりたくないよ僕は」
「ちぇー。ツマンナイの! まぁでも、そりゃそうだよね。鈴木マジメだしー」
「そんなに真面目でもないけど。――はぁ……佐藤さん、今度の彼氏とはうまくやってる?」
そして僕はため息の後に、そんな質問をする。彼女がこういう話題を振るのはそれ自体が好きだというのもあるが、それ以上に今の恋人とうまくいっていないのを僕に話すとっかかりにしたいからだ。
だから、僕の質問の後は彼女はしおらしくなり、おずおずといった感じで今の彼氏のことについて話し始めるのだ。
「えっとね、この間デート行ったんだけど――」
学校ではあまり話さないけれど、学校以外では恋愛相談とかまでする男友達。
僕と佐藤さんの高校生活は、こんな感じで過ぎていったのだ。
高校を卒業して、僕は県外の大学に進学した。高校と中学の教員免許が両方とれる教育学部があって、僕の学力で入れる大学を探した結果がそこだった。
県内でそういう大学が国公立であればよかったのだけれども、あいにくと県外に行かないとなかったのでそこにしたというのもある。
県外の大学ということは当然実家から離れなければいけないので、高校を卒業した春からは一人暮らしを始めた。
そして何故か佐藤さんも同じ大学に進学していた。僕は教育学部教育コース、というやつで教員免許を取得するための学科だけど、彼女は教育学部保育コースに入学を果たしていた。
高校時代、それなりに一緒に勉強をしたりしたこともあったので、彼女が派手な見た目の割にはそれなりに勉強ができるということは知っていた。志望校の話も何度かしたが、第一志望は教えてもらえなかったから、大学は別になるし、一人暮らしをするからこれから会う機会は激減するんだろうな、なんてちょっとセンチメンタルになっていたんだけれど。
大学の最初のレクリエーションで彼女を見かけたときはたいそう驚いた。
「へっへー! 鈴木が驚いてるところなんて初めて見たかも! ドッキリ成功! ってね!」
なんて彼女に言われて、ガックシと肩を落としたものだ。
それと、これは偶然だったらしいけれど、彼女の住むアパートと僕の住むアパートは近所の建物だった。「実家にいたときと一緒の距離感じゃん。ウケる」なんていうのは彼女の弁だ。
彼女は高校の時と同じように派手な見た目をしていて、交際関係もそれなりに派手みたいだった。
サークルにもいくつか入ったみたいで、家でのんびりとしていたかったから勧誘を断った僕とは大違いで、やっぱり
それでも何故か大学に入っても週一で僕の部屋に来ることは変わらず。
そんなこんなで大学に入ってからも僕と彼女の関係は高校の時のように続いていたのだけれど。
大学入学してから二ヶ月くらいたったある日、佐藤さんがなぜかべろべろに酔っぱらって僕の家に訪ねてきた。いやあの時は訪ねてきたというか転がり込んできたというか。
ともかく足元もおぼつかない様子でフラフラだったもんだから、真夜中にインターホンを鳴らした彼女を家に招き入れて、水を差し出し、彼女のバッグの中から化粧落としを取り出し化粧を落として、ベッドを貸し出して寝かせたのだ。
なんでこんな時間に家に訪ねてきたのだとか、どうして未成年なのにべろべろに酔っぱらっているのだとか、ちょっと泣いてたのはなんでだろうとか、いろいろ疑問に思うことはあったけれど、まあそれは明日朝起きたときに聞けばいいだろうと、その日僕は固い床の上で寝たのだった。
翌朝、固い床の上で寝たものだから体がバキバキになって痛む僕は、いつもより早く目を覚ました。今日は休日で、大学の講義もないから本当ならゆっくりと二度寝した後に本でも読みたかったところだけれど、あいにくと今日はそういうわけにもいかない。
体を起こして視線を布団の方に向けると、佐藤さんはすでに目を覚ましていて、ぼーっとスマホを眺めているところだった。
「おはよう」
声をかけると、佐藤さんはスマホから目を離して「おはよう」とあいさつを返してくれた。
「水飲む?」
「飲む」
僕は冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと佐藤さんに渡した。彼女はそれを受け取ると蓋を開け、三分の一程度を一気に飲み込んだ。
「それで、何があったの?」
ペットボトルから口を話したタイミングで、僕はそう尋ねた。
夜中にいきなり他人の家に来るのも、酔っぱらってるのも、泣いてたのも含めての質問だった。
「ねぇ」
けれども、佐藤さんは僕の質問に答えずに、手に持っていたスマホをベッドに置くと、真剣な声音で僕に告げたのだ。
「あたしと付き合って」
結論から言うと、僕は佐藤さん――美咲と付き合うことになった。
急な交際の申し込みに、僕はもちろんいろいろなことを質問しようとしたのだけれど、彼女が僕の腕をぎゅっと握って「お願いだから、何も言わずにあたしと付き合って」と涙を湛えて言うものだから、僕もそれ以上何も言えなくなってしまったのだ。
あそこで無理にでも断っていたら彼女の何かが決壊していたんじゃないかと思わせる雰囲気があったし、それに何より僕は別に美咲のことが嫌いではなかったから、交際をすること自体には忌避感なんて言うものはなかった。
高校時代に言っていた「いい人がいれば」のいい人の中に美咲は見事に入っていた。
ただ、高校時代の美咲はほぼ常に彼氏がいたし、僕自身美咲のことをいい人の中に入れていたとはいえ、別に付き合いたいとか思っていたわけではなかったから言わなかっただけで。
高校の時から聞かされていたから、美咲の性事情はそれなりに知っている。彼氏がいてもセフレがいるだとか。
僕はそういう話を美咲本人から聞いていたうえで彼女の「付き合って」という申し出を受け入れたのだから、そのことについて彼女に何か言うつもりは無かった。
「はい、あーん♡」
付き合いだして最初のころの美咲は何故かとても落ち込んだ様子だったが、しばらくしてからはまた以前のように戻ったと言っていいほど明るくなった。
そして恋人になってからの美咲は、二人きりになるととても甘えてくるようになった。
「ん、おいしい」
「ユートのために愛情込めて作りました!」
「ありがとう、美咲」
「どういたしまして♡」
それと、付き合い始めてから美咲は僕のアパートにずっと居座るようになった。夜も帰らず、僕の部屋に泊まりっぱなしだ。いつの間にか部屋には美咲の着替えや化粧品や洗面用具やらが増えていて、もうこれは同棲と言っても過言ではないような状態になっていた。
ご飯を食べ終えた僕と美咲は、二人で寄り添いながらも僕は本を読んで、美咲はスマホを弄ったりして別々のことをしていた。
時々美咲が僕の顔を覗き込んで唇にちゅっちゅとキスをしてきたり、首筋に甘噛みしてきたりする。
僕の反応が悪いと唇を可愛い舌でぺろぺろ舐めてきたり、耳を噛んでみたりと、スキンシップが過激になっていく。
彼女からそんなことをされると僕も男なので当然情欲の炎がメラメラと燃え上がってくる。
彼女の顎をつかむと顔の向きを固定し、唇にキスの雨を降らせる。先ほど彼女がしてきたように唇をぺろぺろと舐めあげて彼女の口を開かせると、舌を口内に侵入させて彼女の上顎を舐めたり、舌を絡ませたりとねぶる。
「ん……ちゅっ……ちゅる……んちゅ……ちゅう♡」
そうすると彼女の顔が真っ赤になって蕩けるので、僕は彼女を押し倒してキスをしながら服を脱がせていく。
僕が彼女で童貞を失ってから、結構な日数が経っていた。
そんな感じで、僕と美咲は順調に恋人として過ごしていた。
あの日どんな思いで美咲が僕に交際を申し込んできたのかは結局聞けていないけれど、僕は今、間違いなく幸せだった。ある一点を除けば。
彼女が一緒に住み始めてから彼女が僕の家以外に外泊したことは一度もないし、帰りが遅くなることもほとんどない。
サークルも辞めたみたいで、彼女の時間が空いている時はほとんど常に一緒にいる。
ただ、大学での交友関係とか、彼女には彼女の付き合いがあって、そういう友達付き合いがある時は僕とは一緒に行かない。彼女の友達たちと僕では、明らかに人種が違い過ぎるから、僕が行っても気まずいだけだしね。
だから、時々彼女と離れ離れになって、彼女の帰りが遅い時があったりするのだけれど、そういう日に、彼女は帰ってきたら何故か僕にこういうのだ。
「ユート、あたし、今日他の男とセックスしてきたんだ」
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