第39話 家へ帰ってご飯を
戦いが終わったクロウ達は家へと帰る。
アレクシア達があっけなくも討たれた後、子供達は安心感からかすぐに寝てしまった。メル達も疲れた様だったが、明日からすぐに復興を、始めると意気込んでおり、その顔にはどこか憑き物が落ちた様なすっきりとした笑顔があった。
子供らと別れたクロウら一行はネルとマーサの待つ家へと、帰路に着く。
「しかしまぁ。驚いたぜ。もはや驚くことはねーと思ってたが、子供から大人に成長しちまうとは。ネルとマーサが見たら卒倒するな。うん。」
「本当だぜ。あんなに可愛い坊ちゃんだったのに。今はなんだその女にモテそーな顔。羨ましい!」
アッシュとコニーは驚きつつも冗談を言えるくらいには受け入れているらしい。クロウに関してはそんなもんだと言った様子だ。
「クロウ様ぁ。私頑張りましたぁ。たくさんたくさん食べたくもない魂を、血を、しっかりやりましたのよぉ?ご褒美が欲しいのぉ」
ベルは顔を蕩けさせ、クロウの腕に絡みながら歩き耳元で囁きながら移動する。それを歩きにくいよといいながらやんわりふりほどくクロウ。頭を抱えるカストロとガルガンドの顔は苦虫を噛み潰した様だった。
「まぁでも黒の棺はアレだから欠陥品なのよね。」
「あんな容量の少なさでは…。抑えることは愚かなんの助けにもならないですね。それに溜め込むだけ溜め込んで浄化もできない。」
アドラとテトラは黒の棺を思う。過去、黒き魔力に苦しんだ王を助けるためにと開発された黒き箱。懐かしさと当時の悔しさに思いを馳せながら帰路に着く。
数刻歩いた頃。
やっと家が見えてくる。外でネルとマーサが今か今かと心配そうな顔で出迎える。
行きより人数も増え、何より成長したクロウを見て、目が取れるんじゃないかと思うくらいに驚きつつも、皆の無事を喜んだ。
もう抱っこしてやることもできませんねとマーサは言い、ネルはもう立ち合いで勝てねーかもななんてぼやきながら、家へと入る。
増えた守護者達も概ね受け入れられている様で、クロウは満面の笑みだった。
大勢になった仲間達に、そんなにたくさん椅子も机もないと笑って、庭で食事の準備をする。
シチューにサラダ、パンなど、庭で火を起こし地べたに座り、美味しいご飯に会話も弾む。
確かにそこには幸せがある。
こうして小さな幸せを噛み締めながら、一時の平穏を享受するクロウ達であった。
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アクロネシア王国
王都レガリア 王城
白無垢の大きな扉。金細工と多種多様な宝石で彩られた豪華な扉。
その扉を開けると、足が沈み込むほどふかふかな絨毯が真っ直ぐ奥に向かって敷き詰められている。
部屋の左右には歪みのないガラスでできた大きな窓。
部屋の奥にはそれまた豪奢な細工をされたい赤い椅子。
王都レガリアの王城内、謁見の間。
椅子に座り頬杖をついている男。身の丈は180センチくらい。でっぷりとした腹に、贅を尽くした服と真っ赤なマント、頭には王冠を被り、白い口髭を蓄えている。
その男の前には2人の男が膝をつき、臣下の礼をとる。1人は細身の男。貴族らしい華美な服に口には切り揃えられた口髭と、オールバックにした白い髪。片や、若い男。魔法使い然としたマントを羽織り、顔には人好きのする笑みを浮かべて頭を下げる。
「レギアス王に御目通り叶いましたこと。恐悦至極に存じます。」
「よい。我が忠臣であるポーラリア侯の願いじゃ。話くらいは聞いやろう。して?なんの話で来た。」
魔法使い然とした、男は王へ許しを得て話し始める。最近魔の森にて強大な魔力を観測したと。その魔力に黒が混じっているとしるやいなや、王にお伝えしなくてはと馳せ参じたと。
「ふむ。その話が本当なら脅威じゃ。あそこには確かあの女が産みおった魔の象徴の子を流したの。全く忌々しい。」
「王よ。口は災いの元でございます。」
王は嫌悪感を隠そうともせず、ポーラリアはそんな言葉を嗜める。
「王はが安心ください。こちらの男。魔法の腕はピカイチ。このものに今調査隊を編成させております。王の許可をいただきしだい。いつでも調査へと向かわせるつもりでございます。」
「ほう。調査とな?」
「はっ!魔の象徴如きが王の重荷になるなど忠臣として見過ごせませぬ。一刻も早く調査して参ります。まぁ、その時に事故が起こるとも限りません故。王の裁可を仰ぎたく。」
「なるほどなるほど。事故の。」
そう言うとニヤリと笑い合う2人。そんな2人を見て顔には出さないが嫌悪を覚える男。
「よい。許可を出す。くれぐれも吉報を待つ。」
「はっ!ありがたき幸せ!必ずや!」
そうして事態は動き出す。クロウの過去が、クロウの覚醒を持って追ってくる。
新たな厄介ごととクロウの過去。どんな未来が待ち受けるのだろう。
それはまだ。今のクロウにはわからない。
今はただ、仲間と家族と共に一時の幸せを噛み締める。
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