カーストトップから転落したら、陰キャ女子達と仲良くなれた

aaa168(スリーエー)

始まりのマシュマロ

「でも、楽しみだね」


クラスカーストのトップ。

学園生活においての勝ち組を意味する立ち位置。


中肉中背、スポーツも勉学も平凡そのもの。

目立った特徴は茶髪ということだけ。

そんな自分――“朝日 陽あさひよう”の人生において、カーストトップの中に入れたのは一番の幸運だったんだろう。


でも、俺は知らない。

もちろん、知りたくなかったことだけれど。



「陽、お前は別のとこ行けよ」



その位置から転落した時に、どうなってしまうのか。




数分前




「お前ら到着したぞ~早く降りろ」



夏休みが終わり、九月の中旬。

一年の秋――夏休みを終えて少し経ったその日の事。


正午までの校外学習を終えて、バスで三十分程。今目的地に着いたところだ。

ご褒美とも言える、昼食のバーベキュー。


俺達の通う学校は中々にイベント事が多いらしい。

受験前。

中学の友達は、高校説明会でウチの事をそう言っていた。



「翔馬、着いたよ」

「ぁあ? ねみーんだけど」


「いや、早く降りないと」



眠っている彼を起こす。



『佐藤 翔馬さとうしょうま』。

クラスの中心人物。

高身長かつ、筋肉質……元野球部らしく、スキンヘッドがイカツい。

声も大きく、とにかく威圧感がある彼。


さっきのハイキングと写生の時はひたすらにダルそうだった。



「っせーんだよ、陽の癖に口答えすんのか?」

「そういうわけじゃ……」


「またやってる。もう置いてくよ~美咲も早く早く〜」



白菊 真由しらぎく まゆ』。

金髪のウェーブ、モデルをやっている彼女。

優れた見た目にサバサバとした性格。


彼女が俺の変わりにそう声を掛ければ――



「! ああ悪い真由。行く行く――どけ」

「っと……」



すぐに目を覚ます彼。

そのまま、横の俺の肩にぶつかりながら降りていく。



「わっ大丈夫!? 陽君」

「平気だよ本道さん。肩パンって挨拶だから」

「あははっ、何それ」



声を掛けてくれたのは『本道 美咲ほんどう みさき』。


黒髪ショートのバレー部のエース。

美人というよりは可愛い系。

優しくて男女誰にでも分け隔てなく接して、男子の人気で言えばトップ。


ひりつく肩を摩りながら、彼女に笑ってそう言った。



「ふん、お前は何しても平気だな」



後ろから声を掛けてきたのは――『大河原 泰斗おおがわら たいと』。

黒の長髪に端正な顔付き。大企業の息子らしくとんでもないお金持ち。

兄はうちの生徒会長だ。性格は少しキツイけど、翔馬と幼馴染みらしく仲が良い。



「そんな訳ないじゃん。 実はさっきので怪我とか――」

「ちょっ。大丈夫だから」



肩に触れる美咲の手。

こうして、ボディタッチが多いのも美咲の男子人気が高い理由の一つ……だろうけど。



「軽々しく男に触るな美咲! ……朝日、お前もさっさと離れろ!」

「そんな言わなくて良いのに」

「ご、ごめん泰斗」



泰斗の強い声と視線が刺さる。

慌てて離れる――そしてそのまま、バスから降りた。



「ああかったりぃ」

「時間の無駄だな、全く」

「ショボい場所だよね~美咲ぃ」

「ちょっと真由……ま、夏休みの時に比べたら微妙だけどさ」



『佐藤翔馬』。

『大河原泰斗』。

『白菊真由』。

『本道美咲』。


クラスの中心のその四人。

その、スクールカースト最上位のグループに俺は入っている。


4月から夏休みを超えて――今も。



「でも、楽しみだね」



キャンプ場の景色。

自然広がる景色を前にそう呟く。


きっとこの状況が、ずっと続くと思っていた。





「――じゃ、お前ら大体四人組になれ! 別れたら食材取りに来いよ~」














▲作者あとがき


大体朝にうpします。

毎日更新です。


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