第10話 奴隷の吸血姫
(トントン)
扉を叩く音で僕は起きた。
『おはようございます』
扉を開けたのは昨日助けた娘の母親だった。
『昨夜はありがとうございました。昨夜は大変だったので名乗るのが遅れました。私はユキと申します。それと昨夜守ってくださった娘のユナです』
母親のユキさんは落ち着いてるが、娘のユナさんは母親の後ろで隠れている。まだ昨日のことが怖かったのだろう。
話を聞いてみると親子二人でここの一階の酒場と2階の宿を切り盛りしているそうだ。なんとも大変そうだ。それに話していくと僕が次の日の宿代すら無い事をわかってくれて何日か無料で泊めてくれるそうだ。ありがたい。
一通りユキさんと話をしたので僕はダンジョンに行くことにした。
『では、行ってきます』
『行ってらしゃいませ』
……心の中……
『はい、おはよう。シドくん。私のアドバイス通り冒険者になってくれたのね。ありがとう。それに人攫いから少女を守るなんてすごいわ。普通は通報するだけよ。かっこよかったわ』
『ん、まあ』
『そうだ!これからダンジョンに行くのよね。一人で行くのはやめといた方がいいわよ。私みたいに一人で行って助けが来ないで200年待ったりすることになるかも知れないわ』
『そうかもね』
確かに仲間は必要そうだ。いくらルミナスがサポートするからと言っても、常にはできない。この世界で生きていくには仲間が必要そうだ。
『で、でも仲間て、どうやって作れば』
この世界には戦闘できそうな知人が居ない。どうしたものか。
『奴隷があるわよ』
『奴隷?』
ルミナスが急に変な提案してきた。
『そう、奴隷。奴隷なら主人を裏切ることは無いわ。裏切ったら最後死ぬもの。そこら辺の冒険者よりもよっぽど信用できるわ』
『いや、でも』
前の世界だとそんな事をすれば犯罪だから抵抗がある。
『その感じ。奴隷は嫌なのね』
『ギルドに行って仲間を作ってみるよ』
『そうね。作ってみるといいわ。ただ、ちゃんと信頼できる人にしてね。貴方に死なれたら私も死ぬんだから』
『うん、わかった』
……ギルド……
『あ、お、おはようございます!シド様!』
ギルドの扉を開けるとちょうど箒で掃除していたアヤさんがいた。
『おはようございます。アヤさん。あの、ご相談があるのですが』
『え?、わたしに?、ありがとうございます』
アヤさんが何故かお辞儀してきた。
その勢いでふわっとお花の良い匂いがきた。
なんとも可愛らしい香りだったので驚きだ。
『ん?シド様?』
香りを嗅いでいたらアヤさんが不安そうに見てきた。
『いや、その。アヤさんの匂いが良い匂いだったので』
『え、そ、そんな!…………あ、そ!相談ですよね!ではカウンターに』
((きゃーーシド様に良い匂いだって言ってもらった!!!。昨日は散々だったけど、頑張らなくちゃ!))
一瞬アヤさんの顔が赤くなったと思ったらすぐに僕に背を向けてカウンターの方へと歩き始めた。
『で、その、ご相談とは?』
『実は仲間を探していまして。何人か冒険者を紹介してくれませんかね?』
『仲間、ですか。確かに必要ですね。ですが、ここのダンジョンは一階層から魔物の難度が高いダンジョンなのでシドさんのような銅プーレとの人を仲間に引き入れてくれる人はいないかもしれません。シドさんがとっても強いのはわかります。ですけど、難しいと思います』
なかなか仲間を作るのは大変なようだ。
『そうですか』
『すみません。お役に立てなくて』
『いえ、ありがとうございます。…………あ、そういえば、その奴隷とかを仲間にするとかは良くないですかね?』
ルミナスの言っていたことを聞いてみる。
『ど、奴隷ですか!?は、はい制度上問題ないのですが。そ、その本当に奴隷を?』
『はい、知人が奴隷は主君に忠実だと、聞いたのですが』
『奴隷はそうですが、全然奴隷をそのような方法で買う人はいません。もっと別の理由で……』
なんだかアヤさんはモジモジして少し恥ずかしそうに言っている。何かまずいのだろうか。
『え〜シドくん♡奴隷買うの?そんなに溜まってるならアヤちゃんで満たしてよ〜』
カウンターの奥の扉からユリさんが出てきた。
『ち、違うよ!ユリ!シド様はそんなことじゃなくて!冒険の仲間として欲しいて言ってるの!!!』
アヤさんは真っ赤になりながらユリさんをポコポコ叩きながら言った。
『そ、そうなのね。アヤちゃん。ごめんね。シドくん変な早とちりして。そういうことなら奴隷を買っても良いんじゃない?』
『そうですか、ありがとうございます』
どうやら奴隷を買っても問題無さそうだ。
……奴隷市場……
『キャ!』
『う!』
『げ!』
ギルドのユリさんに教えてもらった奴隷市場にきた。そこらかしこでうねり声とか泣き声が聞こえる。匂いもきついしで気分の悪いところだ。
『お客さんだね、私はここの奴隷商人をしている者だ。何かお探しの物はあるかな?』
不気味な男が話かけてきた。
『いや、その一人、奴隷を探しているんだ、できれば安い』
(手持ちの資金が無いからね)
『ふむ、そうですか。当店ではここの貴族様発行の借金制度があります。ので少しお高めのでもできますが』
(借金か、お金ないしするか、けど少額にしよう)
『いや安めがいい』
『なるはど。まあ、そのような趣味の方もおられる。ついてきて下さい』
そう言って男は建物の中に案内していった。
……奴隷商店内……
『うわ』
店内に入るとそこらじゅうに裸の女性が鎖をつけられて立っていた。
なんだかんだで初めて女性の裸を見た。
局部の毛すらはっきり見えてしまっている。顔が燃えるように暑い。恥ずかしい。初めて雑誌以外で胸の全体や、陰部の全体を見た気がする。
『お客様、楽しんで頂けているようで何よりです。これらの商品はうちでは高級品です。発育も良く、若い。とてもいい商品です』
(ここでわかった。ここの店は戦うような奴隷を置いていない。明らかにピンク色の世界だ)
『え、遠慮、し、しときます』
僕は帰ろうとした。
『いえいえお客様、奥にお客様向けのがありますので』
帰ろうとする僕をその男は物凄い力で引っ張って行った。
……店舗の奥……
牢屋のようなものが並ぶ空間に入った。
『これらが、お客様が求めていらしゃった安めの商品たちです。どれも問題を抱えておりまして。が、どれもいいとこはありますよ』
ここはさっきの店の外よりもひどい匂いがする。アンモニア臭、腐った何かの臭い本当に最悪だ。
そして牢屋の中には何人かの奴隷が鮨詰めだった。みな薄い汚い服を着て怯えている。
『これなんてどうでしょう、体は小さいですが顔は綺麗ですよ。これなんて……』
男は次々と紹介してくる。
なんとも不快だ。さっさと出てきたい本当のこと言って出ていこう。
『あの、ダンジョンに連れて行くので戦える人を探しています』
『奴隷を戦闘員に?は!、面白いことを言いますな。そうですね、他より多少頑丈なのがあります。最近、人族かと思ったら吸血鬼だったのがいましてね。太陽に当たると死にますが、太陽さえなければ普通の人の何倍も頑丈です。私でも躾けに苦労しました、というよりできませんでした。ただ誰に対しても攻撃的で夜の相手はできませんな』
男はつらつらと言い並べながら案内してきた。
『ここですな』
男は一番端にある牢屋を見て言った。
僕は牢屋の中を覗いた。
中には薄手の汚れた服を着て一人体育座りをする髪の長い女がいた。正直暗くてよくわからない。
(ダダダダダダダダ)
少し彼女を眺めて目が合ったように思った時だった。
きなり彼女が四つん這いで物凄い勢いで牢屋の前にきた。
『あ』
僕はすぐにわかった、彼女の特徴的なワインのように赤い瞳、血や埃などで汚れているがすぐにわかるブルーベリーのような夜空のような細長い綺麗な髪で。
彼女はダンジョン都市に来たばかりの時に助けた吸血鬼の女性だった。
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