第9話 人助け

『す、すみません。アヤさん』

アヤさんいくら僕のことを疑ったからてそこまでする必要ないでしょ


『んぐ、うう……』


『ごめんねシドくん。今アヤちゃん混乱してるから変な事ばっかりしてるね。ちょっと落ち着かせるから待ってて』

そうユリさんは言ってアヤさんをカウンターの奥の扉の奥へ連れて行った。


さっきまでアヤさんの下着に触れていた手はなんか湿っぽい。

(スン)

ちょっとだけ気になって嗅いでしまった。

なんとも言い表せないツンとするような少し酸っぱいような匂いが鼻にきた。

(僕て、変態だな)



『ごめんなさい!シド様!先ほどは見苦しいところをお見せしてしまい。本当にすみませんでした!!』

カウンター奥の扉から出てきて足早に僕の前まで来て、アヤさんは深々とお辞儀して言ってきた。


『いや、アヤさん。顔を上げてください』


『いえ。私はシド様に無礼を働きましたし、あんな汚い物を触れさせてしまいました。本当にすみませんでした!』


『いや、気にしてませんから』


『いいや、気にした方がいいよ。シドくん。この子いつ下着変えたと思う?』

ユリさんが僕に聞いてきた。


『え?』


『この子最近忙しくて3日も同じ下着つけっぱなしなのよ』


『はえ?』

(3日?)


『そ、それは、うううう』

なんかアヤさんは膝から崩れて落ちて床に頭を埋めてまた泣き始めた。


『ま、シドくん。この子最近頑張ってたから。許してあげて、今回は私が登録の手続きするね。あとシドくんの担当はアヤちゃんでいい?……この子こう見えてサーポート能力このギルドで1番よ。だからお願いね。さ、行くよアヤ』

そう言ってユリさんはまたアヤさんを連れて行った。

(なんかユリさんアヤさんのこといじめるの好きなのかな?)





『シドくん♡』

しばらくしてユリさんがカウンターに出てきて僕を呼んだ。


『はい、ユリさん』


『んーシドくん。私のことは呼び捨てでユリて、言ってほしいな』

彼女はカウンターから少し乗り上げて両肘を机について両手で頬を支えながら上目遣いで言ってくる。

(かわいい)


『あ、そ、そうですね。ゆ、ユリ?』


『んふふふ。はい♡シドくん♡』

すごい笑顔でユリさんは答えた。


その後、僕はユリさんから何枚かの書類を貰ったり書いたりした。


『最後に、はいこれ、シドくん』

ユリさんが銅色のプレートを渡してきた。


『シドくんは新規だから星1の銅プレートね。だけどシドくんは強いからすぐに銀プレートとかになりそうね』

さっきのユリさんから貰った書類に書いてあった冒険者のランクだろう。

冒険者のランクは大きく分けて3つ銅、銀、金のプレートに分かれる。

さらに銅と銀ではそれぞれ星の数で5段階に分かれるそうだ。



『ありがとうございます』


『じゃ、終わったことだし、私の家に行こうか』


『へ?』


『シドくん宿代もったいないし、私の家行かない?』


『え、いや。遠慮しときます』

(なんかユリさんは危険そうだからやめとこう)


『嘘。冗談よ。揶揄っただけ。気にしないで。じゃ、バイバイ、シドくん。また明日も来てね』

((最初の挨拶で動揺してたけどシドくん以外にガード固いわね。これならアヤちゃんの婿さんとして十分ね))


僕はユリさんに見送られてギルドの外に出た。



……ギルドの外……


『さて、どうするか』

今は夜だ。野宿も良いができればベッドで寝たい。

とは言っても金もない。剣を売るのも良いが、それはしたくない。

僕は諦めて酒屋と酒屋の間にある裏路地で寝ることにした。


……裏路地……


酒屋の裏路地はちょと汚いが耐え切れるぐらいだ。

『んー明日からお金稼ご』

僕は建物の壁に寄りかかった。


(バリーン)

僕の真上でガラスが割れるが聞こえた。


(どーん)

『いで』

と思ったら頭に激痛が走った。


『ん?』

驚いて閉じた目を開けるとそこには口元を布で抑えられた少女と黒ずくめの男がいた。


『んんんんんん!!』

少女は何か言ってるがわからない。


『ち!』

男は僕を睨んでいる。


『やめて!うちの娘を返して!!!』

上から女の人の声が響いた。


『くそ』

女性の声に気づいた黒ずくめの男は少女を持って逃げ始めた。


(は、まずくね?)

僕は逃げる男を追いかけた。


(なんか僕早くね?)

少女を持ってるとはいえ僕と男の距離はすぐになくなった。


(どん!)

『うげ』

『んんんんんんん!!』

僕は勢いそのままに男に体当たりした。

男は飛ばされ、捕まっていた少女はなんとか捕まえた。


『てめー!!』

飛ばされた男はそのまま僕に向かってナイフを長てきた。が、なぜた飛んでくるナイフが遅く感じる。


(ス)

僕は難なく飛んでくるナイフを避けた。


『なんだ?なんだ?』

『外が騒がしいぞ?』

ゾロゾロと近くの建物から人が出てきた。


『お、お前、人攫いだな』

『大人しく掴まれ』

どうやら黒ずくめの男は人攫いらしい。


『くそ!』

そう言って男は素早く建物を登り消えていった。



『お前さん、その子は?』

近くにいた人が聞いてきた。


『いや、あの男から助けたんですが』

(なんか、怪しまれている?)


『そうか!それはよくやった』


『よいしょ』

僕は少女についていた布を外した。


『あ、ありがとう、お兄さん』

どうやら何も問題無さそうで安心だ。



『ユナー!!』

後ろからさっき聞こえた女性の声が聞こえた。


『ママー』

捕まっていた少女が声のした方へ走っていった。


『ユナ、無事だったのね。よかった』

どうやら二人は家族のよおうだ。二人とも抱き合っている。


『ありがとうございます。娘を守って下さって』


『いえ、たまたまですよ』

(なんだかこの世界に来て人助けすること増えたな。感謝されることが増えて嬉しいや)


『何か、お礼をしたいのですが。何かお困りのことなどありますか?』


『お礼か』

(困ってる事と言えば宿と金がないことだ)


『宿を探しているのですが、あいにく手持ちのお金が無いんですよ。借金して泊まれるところはありますか?』


『宿?それでしたら。私たちの宿にお泊まりください。お代はいりません』


『本当ですか!?ありがとうございます!』

(よっしゃー野宿しないでよくなった!!)


……とある宿……


助けた娘の母親について行くと酒屋に入った。


『ここは一階が酒屋、2階が宿になっています。どうぞ、この部屋をお使いください』

2階に上がってすぐの部屋を案内された。


(ギギギギギギ)

『ありがとう。お兄さん』

部屋の扉が閉まる瞬間、助けた女の子がお礼をしてきた。




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