空蝉の声と心

極みなる世界

1.

蝉は、夏の時期絶え間なく鳴いている。

たった一ヶ月の命。

されど、一ヶ月の命。

自分たちは、それを長く感じる。

梅雨が終わり、八月の終わりまで鳴いている。

その期間は一人だけでは鳴き続けるには、とても長すぎる。

一人ではなく他のものに引き継がれるからこそ鳴き続けていられる。


蝉が鳴けるようになるには、七、八年の年月がかかってる。

土の中で自分を成長させ、活躍ができるその時を見計らって、土から出てくる。

そして、最後に殻を破って、自分という存在を確立させる。


そこに残った殻には、もう何も残っていない。

鳴くことさえもできず、これから先もない。

何も取り柄のない、虚空の状態。


自分たちは、空蝉だ。


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空蝉の声と心 極みなる世界 @kiwaminarusekai

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