俺と私の契約期限

@Chaden

一章 出会い

プロローグ 最後の希望

「おい!一匹奴隷が逃げたぞ!」


「どこに行きやがった!」


「あっちだ!追いかけろ」


 雷鳴や雨の落ちる音、そして叫び声が鳴り響く中、ルルはただ自由を求め走っていた。


 5年前、ルルがまだ8つの時に彼女の王国が戦争に負け、奴隷として戦勝国の帝国に連れて行かれた彼女はただ一度のチャンスを見つけ、牢から脱獄した。


 靴も履いていないため足裏からは血が流れ出ている。


 だがルルはその痛みは感じることなく、ただひたすらに走っていた。


 森へと逃げたが時間が経つに連れどんどんと追っての数も増えてきている。


 いつ見つかってもおかしくない状況だがルルは危険領域と呼ばれる大森林へ進んでいった。


 ★


 長い間ろくな食事も貰えていないため、身体の機能が衰えていたルルは疲れて身を隠していた。


「見つけたぞ!」


 その声が聞こえたルルは逃げるために走り出したがその声は嘘だった。


 近くにいるかも知れないと思った兵士がただ叫んだだけだった。


 その兵士は奥で枝の折れる音を聞き、そこに逃げた奴隷がいることに気付いた。


「こっちだ!この奥にいる!」


 その声を聞いた兵士たちは続々と集まってきて、その5分後に逃げていだ奴隷を視界に収めた。


 ★


「射て〜〜!!」


 その合図と同時に大量の矢が飛んでくる。

 その矢はルルの肩や背中に刺さったが立ち止まることなく走り続けた。



 自由を求めて。




 走り続けた彼女は森の中の洞窟を見つけ、そこに入っていった。

 その洞窟は広く、ずっと奥まで続いていた。


「ここだ!ここに血痕ががあるぞ!」


 兵士たちは背中の傷の血痕を下に居場所を探し当て、洞窟に入っていく。

 既に奥の方にいた彼女にもその声は聞こえており、大量の鎧が擦れる音も洞窟に響いていた。


「はあっ、はあっ……」


 洞窟の最奥に着いたルルはそこで驚きのものを見る。

 そこには巨大は門があったのだ。


「お前!もう逃げられんぞ!」


 その門に驚いていると追っての兵士たちがその場に到着した。


「逃げる奴隷など処刑だ。射て〜〜!」


 その声に合わせ多数の兵士が弓を彼女に向けた。


 ここで死ぬんだと思った彼女は目を閉じ、死ぬのを受け入れようとしたがその時は一向にこない。


 恐る恐る目を開けた彼女の前に広がっていたのは固まって動けなくなった兵士たちだった。


 正確に言うと兵士たちの動きが止まっていると思うほど遅くなっている。


「ふむ。貴様が今回の契約者か」


 その声を聞いて振り返ると後ろには一人の男が立っていた。


「……だれ?」


 ルルは男に聞く。


「貴様、もしやここがなにか知らずに来たのか?」


「逃げてきただけ。貴方の名前は」


「見たところ、もう死にそうだな」


 男はルルの質問には答えずに背中から流れている血の量、そして今の状況を見てそう言う。


「逃げてきたということは死にたくないのだよう?どうだ。俺と契約すれば助けてやろう」


「契約?」


「そうだ。貴様の望みと対価を言え」


「望みは……自由。対価は私の魂」


「貴様のちっぽけな魂で俺が動くと思っているのか?」


「……今はちっぽけでも後で大きくなる。逃した魚は大きいと公開するのはそっちの方」


「ククク……。クハハハハハハハハハッ」


 それを聞いた男は大声で笑う。


「良いだろう、気に入った。俺にそんなに生意気なやつは初めてだ。俺の名はシンヴォレオ。【契約の魔人】と呼ばれるものだ」


 男は拳を出す


「私はルル」


 女も拳を出す。

 男と女の拳はぶつかり、そこからまばゆい光が出でき、その光が洞窟を覆った。


 ★


 こうして1人の奴隷の少女、ルルと【契約の魔人】シンヴォレオとの物語は始まった。

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