第三節 竜巻はあらゆるものを巻き込んで
第二十話
「清原王、その娘は」
「
「清原王!」
「――嘉乃、大丈夫だ」清原王は嘉乃を引き寄せ、優しく囁いた。
「清原王、でも」
「大丈夫だ」
清原王がもう一度言ったとき、
「
「清原王、それは……」
眉をひそめた
「
清原王は嘉乃を抱き締めた。
「清原王……しかし、混乱を招きます」
「分かっている。それでも、どうしようもないんだ」
「藤氏が、何と言うでしょう?」
「……分からない……いや、分かる。恐らく、激昂するだろう。藤氏とは対立することになる」
「でしたら」
「それでも、私は、嘉乃以外は考えられない」
「せめて、
「無理だよ、
清原王はますますきつく、嘉乃を抱き締めた。
「清原王」
「……
これから行わねばならないあらゆることを思うと、頭が痛くなった。
しかし、同時に
このような清原王は初めてだ、と。
ずっと従順でおとなしく、言われたことを文句ひとつ言わずに
この方は、藤氏の姫との婚約を破談にする意味を充分に分かっている。分かった上で、嘉乃と結ばれたいと言っているのだ。共に生きていきたい、と。
不器用で真っ直ぐな方だ、と
真摯で純粋で――そして実は強い意志を持っていたのだ。
自分の意志などない方かもしれないとほんの少し不安を抱いていたが、実はそうではなかったのだ、と知って、
「分かりました。それではそのように準備いたしましょう」
「
「大変ですよ?」
「……分かっている。――すまない」
「いいえ。――あなたですから、お支えしたいと思うのです」
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