第二節 真澄鏡
第十八話
村での成人の儀は質素なものだった。普段より少しきれいな着物を着て、
各村にあり、ご神体のような存在だった。
だからもちろん、
一瞬、
しかし、
立会人を務めた
そのとき。
嘉乃は呼ばれた気がして、立ち止まって振り向いた。
振り返って
「え?」
嘉乃は小さな白い花を手にとった。
「ユキヤナギ? ――どうして?」
ユキヤナギは、ふわふわと舞い、嘉乃を取り囲み、渦のようにぐるぐると回った。
――声が、嘉乃の頭に響いた。
運命の子たる予言の王を、産み給ふ娘よ
運命の相手と
栄えたる瑞穂の国の
予言の王を産む?
運命の相手と
このユキヤナギ?
ユキヤナギは、嘉乃の周りをぐるぐると何度か回ったあと、ふっと消えた。
「嘉乃―! 何しているの? 行くよー!」
運命の子たる予言の王を、産み給ふ娘よ
運命の相手と
栄えたる瑞穂の国の
運命の相手と出会い、運命の子を産む? わたしが?
瑞穂の国の
運命の相手の
運命の相手? って誰だろう?
「嘉乃!」
「ごめん、いますぐ行く!」
駆けてゆく嘉乃の背中で、小さな白い花がふわりと舞っていた。
嘉乃はこの出来事を誰にも話すことが出来ないでいた。誰にも言ってはいけないことのように感じていたのだ。
家に帰り、文字の力があるか試してみたけれど、文字の力はないようであった。
しかし、その後、何かの折に、小さな白い花がユキヤナギが、ふわりと舞うようになった。
嘉乃は、その小さな白い花を見るといつも、
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