第11話

腐乱研究所殺人事件 file11


よーし、シャワー浴びに行くぞ!階段を四階から一階に降りるのは地味にきついし、なんか外は曇ってきてるけど、なんとかなるでしょう。LET'S GO!


いや、待てよ月影 一織。もしかしたら、シャワーが壊れているかもしれない。ぬか喜びになるかもしれない。その覚悟を決めておけよ。やっぱどうでもいいな!とにかくシャワーを浴びたいんだ!


そんなこんなで、情緒不安定になりつつ(殺人事件のせいでおかしくなったのではなく、ひたすらシャワーが浴びたかっただけ)、シャワールームへ向かいました。ルームというより、ハウスといったところでしょうか。


柵で囲まれた土地の中に、シャワールームはありました。なんで今までそこに一切触れていなかったのかって?ここに来たときは研究所で隠れていたし、窓から外を見ていなかっただけです。気づいていない、ただそれだけだったのです。


服を脱いで、念の為持ってきた着替えも置いて、シャワーを浴びました。気持ちいいですね。昨日から色々と起こっていたので、気持ちも落ち着きます。


そういえば、資料室にある読んでない資料を読むことを勧められたんでした。研究所に戻ったら、資料室に向かいましょう。


つかの間の休息を過ごしたところで、何かが落ちてきました。曇り空ですし、雨の一粒や二粒ぐらい降ってきてもおかしくないですよね………


…………雨降っとるやんけ!何で!?何で私がシャワー浴びてすぐに雨降り始めたの!?確か天候が崩れるのは日曜日からだって…日曜日今日やんけ!やってしまった。昨日のうちにシャワーの場所を尋ねておくべきでした。


とにかく、急いで戻りましよう。まだ降り始めたばかりですし、そこまで強くないです。まだ、なんとかなりそうですね。


そして、研究所へ走って戻ろうとしたその時、何か、変なものを見つけたような気がしました。どういうわけか、小さな水溜まりのようなものができていたのです。確かに、雨は降っています。しかし、まだ降り始めたばかりですし、大雨というほど強くもありません。どれだけ小さくても、水溜まりはできないはずなのです。もしかすると、今回の事件と何か関係があるのでしょうか?


とにかく、このことはしっかり覚えておいて、一旦研究所に入りましょう。急いで体を拭かないと風邪をひいてしまいます。こんなところで体調を崩したら、その後が大変そうですし、避けたいところです。


私は、結局ビショビショになりながら研究所に戻りました。せっかくシャワーを浴びたのに、台無しになった気分です。


濡れた体を拭いて、着替えた服を自分の部屋に置いて、資料室へ向かいました。昨日は純さんも着いてきましたが、今回は完全に一人です。資料室に着いた時点では、私以外の人は誰もいませんでした。


何か読めそうなものはないかと探してみたのですが、あまりありませんでした。もはや、誰かが意図的に行ったとしか思えません。それほどに、めちゃくちゃな状態になっていました。


ただ、いくつかは読めそうなものも残っていました。忘れていたのかは分かりませんが、暇つぶしにはなりそうなので、ありがたいですね。え?学校の課題をしないでいいのかって?いいんですよ、単位がなんとかなる程度に遅れて出せば、どうにかなります。高校生活を一年過ごしたので、そのぐらいは慣れました。


さて、一体どんなことが書かれているのでしょうか?どうせなら、この研究所のことをもっと知りたいです。人造人間の噂なんて、どこから出てきたのかさっぱり見当もつかないですし。


私は、残っていた資料を、面白そうな題名のものから読んでいきました。しかし、内容はさほど面白くありませんでした。私が薬学についての知識を全く持ち合わせていないのもありますが、それ以上に期待はずれだったのが大きいでしょう。噂にまつわるものでもあればよかったのですが、そういうわけにもいかないようです。


そんな中で、たったひとつだけ、一際興味をそそられた、そして、事件の解決に繋がったものがありました。その資料の題名は「後悔」。そして、書いた人の名前は、「サツキ」。


…さつき?確か、彩月って、研究所に着いたときには死んでいた、吉崎さんの名前のはずです。そんな彼女の綴った資料とは何なのか、読んでみました。


???「私たちは大罪人だ。開けてはいけない、パンドラの箱とでも言おうか。それに手を出した。取り返しのつかないところまで来てしまった。今更引き返せないとは分かりきっている。


しかし、どうしろというのか。私もおかしくなってしまったのかもしれない。どうか、私たちを殺してほしい。恨んでいる人がいるのなら、その人の手で。どこまでも腐乱しきった人間の命など、どこにも価値などないのだから」

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