第10話

すると、隣の部屋から、葉月さんが起きてきました。そんなに騒がしくしたつもりもないのですが、もしかして結構騒がしくなっていたのでしょうか?


葉月「ん?誰かと思えば探偵ちゃんじゃないか。こんなとこで何してんだ?」


一織「っ!何でもないです」


葉月「え?まさか、やましいことでもあるのか?」


なんでそこまで飛躍した発想に行き着くんですか!それに、こっちはそれどころじゃないんですよ!


一織「いや、そういうわけではなくて…」


葉月「なんだ、違うのか……ん?なんだ、その、赤いやつは」


一織「あっ、それは…!」


葉月「まさか…血か?………は!?ちょっと部屋の中を見せてくれ!」


一織「………わかりました」


黙っていたところで、そのうちバレるとは思っていましたし、見せることそのものは全く問題ないのですが、あんなものを見て、無事なのでしょうか。


葉月「師走先輩!おい、なんとか言えよ!」


一織「…無駄ですよ。彼は、とっくに死んでいます」


葉月「死んでる?なんでそんなことをハッキリと言い切れるんだよ!」


一織「先ほど、体に触って、すっかり冷えきっていることを確認したので…」


葉月「なんだよ、誰がやったんだよ」


やがて、騒ぎを聞きつけて、続々と集まってきました。こんなことを考えるのは良くないですが、犯人がいると考えると、どうしても疑いの目を向けてしまいます。


そして、集まった人たちは、大雅さんの死体を見ました。ある人は怯え、ある人は困惑し、またある人は喜びました。


竜二「死んでるのか?おいおい、マジかよ。最っ高だな!」


涼「ちょっ、それは言っちゃだめだろ」


竜二「どうしてだ?俺はこいつが死んだところで、悲しむこともない。むしろ、死んでくれて嬉しいよ」


涼「お前!」


めい「ほらほら、りょーくん、おちついておちついて」


涼「あぁ、そうだな。少し頭を冷やしてくる」


カンナ「ねえ、これって、本当に死んでるの?」


葉月「死んでるよ。そこの探偵ちゃんが言ってたし、俺もさっき確認した」


純「これも人造人間の仕業か?それとも、僕たちの誰かがやったのか?」


一織「…今はあまり考えないで起きましょう、純さん」


やっぱり、人が殺されて、正常でいられる人なんていないでしょう。この人たちの様子を見ていると、そう思わされます。すると、純さんがこんなことを言い出しました。


純「この死体を最初に見つけたのは誰だ?」


一織「えっと…」


葉月「探偵ちゃんだよ。で、横で何か聞こえたから見に来たら、探偵ちゃんがいたんだ」


カンナ「もしかして、犯人は一織ちゃん!?」


一織「は!?」


え!?私が犯人!?冤罪ですよ!私が人殺しなんてするわけないでしょ!


フラン「カンナ!?アンタ、何いってんの!?」


カンナ「だって、一織ちゃんが最初に見つけたんでしょ?だったら、一番怪しいのは一織ちゃんよ!」


純「待て。それはいくらなんでも短絡的な発想すぎる」


葉月「でも、カンナの言うことも一理あるだろ?」


純「確かに一理あるんだが、疑わしいというだけで、犯人だという決め手にはならない」


一織「純さん…」


純「それに、動機がないはずだ。僕以外は初対面だから、殺す理由がどこにある?」


カンナ「そんなの、一織ちゃんがサイコパスだったら関係ないでしょ!」


純「ははっ、無理っぽいわ、これ」


諦めないで、純さん!私が捕まったら、推理できるひとがいなくなりますよ!


フラン「まぁまぁ、焦りすぎも良くないんじゃないかな」


カンナ「フラン!?アンタまでこの子をかばうの!?」


フラン「かばうってほどじゃないけど、そうやって互いに疑い続けたら、真犯人の思うつぼかもしれないしさ」


カンナ「確かに、それもそうだね…。ごめんね、一織ちゃん」


葉月「俺からも謝らせてくれ」


一織「いえ、いいですよ。誤解が溶けたみたいですし」


フランさんのおかげで助かりました。もし彼女がいなかったら、私はどうなっていたことか…


フラン「ところでさ、一織ちゃん。こんなときに言うのもあれなんだけど…」


一織「ん?どうかしましたか?」


フラン「もしかしてさ、昨日シャワー浴びてない?」


一織「え」


フラン「いや、こんなこと女の子に言っていいのかなとは思ったんだけど、どうしても気になっちゃって」


カンナ「待って、フラン。アンタ、シャワーの場所説明してないんじゃない?」


フラン「…あ!そうだ!ごめんね、一織ちゃん」


一織「いや、いいんですよ」


シャワーあったんかい!たった今、乙女の尊厳を破壊された気分ですよ。あるって分かったのでもう安心ですけどね。

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