第8話

次に調べるのは、三階にある研究室です。人造人間の開発実験についての資料に目を通したばかりなので、どうしても怪しいという印象しか感じませんでした。


研究室に入ってすぐのところで、大きなベッドを見つけました。鉄パイプや鉄板で作られたもので、寝心地は良くないでしょう。これは、実験のために使われたものだと思います。資料どおりなら、この研究所で行われていた実験は非人道的なことであり、そのようなことをする人たちなら、被験者に配慮していなくてもおかしくはないと思います。


ただ、この研究室、綺麗すぎて怖いんですよね。血はついてないし、壁や床もヒビがそこまで目立たないです。設備を壊された形跡は一応あるのですが、そこまで目立っていないです。「実験は失敗に終わった」という結末だけではないような気がします。


また、実験で使われたであろう道具がいたるところに散らばっていました。このとき、別に研究室は綺麗ではないのだと思いました。たまたま壁や床がボロボロになっていないだけで、部屋そのものは荒れていました。


さらに言えば、倉庫や資料室も、色々なもので散らかっていただけで、壁や床は特になにもなかったのです。きっと、実験室だから、人造人間によって何かされたとでも思い込んでいたのでしょう。存在するかすらも怪しいのに、信じてしまうだなんて、探偵って案外ちょろいもんですね。


そして、実験室を後にして四階に上がろうとしたところで、廊下、厳密に言えば窓を見ることになりました。実験室に入るときにはわざわざ見なかったので気づきませんでしたが、廊下の窓ガラスが割れていました。雨が降ろうものなら、間違いなくビショビショになってしまいます。


まぁ、そんなことはきっとどうでもいいので、四階に上がりましょう。というわけで、四階です。ここは、一人一人の部屋となっていて、それが十室あります。全員が部屋で寝ることができます。


中はベッドと机、椅子、そしてゴミ箱ぐらいしか置いてありませんでした。窓はベッドの近くに会ったのですが、何故か内開きになっていました。クローゼットもありましたが、中には何も入っていませんでした。


そして、ここで明らかにおかしな点があります。ドアの鍵です。部屋の内側からは鍵を開けることも閉めることもできません。外側からなら可能なのですが、これでは安全性に乏しすぎます。疑ってはいけないと思っていますが、もし私たちの誰かが殺人鬼なのだとしたら、落ち着いて寝られなくなってもおかしくなかったです。


この研究所の構造について語ることと言えばこれぐらいでしょうか。研究所という名前ですが、結構小さいですね、この建物。こういうことを言ってしまうと、フランさんに怒られてしまいそうなので、言わないでおきますが。


各々が自由にしていたら、時間はあっという間に過ぎてしまいました。研究所に入ってすぐに死体を見たので、気が滅入ってしまっていてもおかしくはないのですが、意外と平然としていられる人も多くいました。さすがにオカルト研究会の人たちは駄目なようでしたが。


私たちは、一度スペースを確保してから倉庫で話をしました。ここにいた吉崎さんの死体は、誰も使わなかった四階の部屋に運ばれました。


「今日一日を過ごして、どうでしたか?」カンナさんの発言から私たちの会話は始まりました。


フラン「正直キツいなぁ…まさか人が死んでいるだなんて想像もしていなかったし」


葉月「それは同感。今は落ち着いてきたけど、さすがにいきなりあんなもの見たら、精神的に疲れるわ」


大雅「は?落ち着いた?お前ら正気か?人一人死んでんだぞ。なんでそんなことが言えるんだ!?」


竜二「おやおや大雅さん、そんなにイライラしちゃってどうした?そうやって落ち着きをなくしているようでは、モテないぞ。ほら、冷静になれよ、シャブでもキメてよ。ハハハッ」


大雅「何だと!?この!」


涼「やめておけよ、大雅。そうやって挑発に乗るから言われたい放題になるんだ。それに、お前はなんでそんなに落ち着きがないんだ?」


大雅「あぁ!?なんだよ、涼。お前まで俺をバカにしてやがんのか!?」


めい「たいがくん、こわいよー。ほら、しんこきゅー、しんこきゅー」


大雅「ああ、本当にイライラするな!大体、お前らなんかに指図なんてされてたまるかよ!」


こう言って、大雅さんはどこかへ行ってしまいました。どうせ自分の部屋に戻ったとか、その程度のものでしょうけど。

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