第6話

私たちは、研究所の構造の理解のために、研究所の中を探索することにしました。あわよくば、そこから今回の事件について、何か得られるといいのですが。


構造としては、北側に階段があって、一階に倉庫、二階に資料室と開かずの部屋、三階に研究室、四階に宿舎となっています。開かずの部屋についてですが、フランさんも「そんなのあったんだ…」と言っていたので、何なのかは分からないままでした。


ひとまず、宿舎に荷物を置くことにしました。東側が、階段の近くから涼さん、めいさん、純さん、竜二さんになりました。奥の部屋は、鍵が無くなっていたので入れないようになっていました。そして、西側は、階段の近くから、フランさん、私、大雅さん、葉月さん、カンナさんになりました。


荷物を置いたところで、私は、ほとんど無理やり純さんを連れて倉庫へと戻りました。目的は、彩月さんの死体について何か知ること。こんなことを平気で行う高校生がどこにいるんでしょうね。


改めて見てみると、彩月さんは倉庫に入ってすぐのところで死んでいたと気づきました。何で入ってきた段階で気づかなかったのかというと、死体そのものは気づいていたけど、入ってすぐのところだということをすっかり忘れてしまったというだけです。大した理由なんてありません。


彼女の死体の近くには、何種類もの薬が散らばっていました。錠剤や液体はもちろんですが、注射器、さらには葉っぱまでありました。調べようと触ろうとしたところで、純さんに止められてしまいました。


一織「え?どうして止めるんですか?」


純「どうしてって、 もしかして、目の前のこれが何なのか全く予想ついてないのか!?」


一織「これって、そんなに危ないもの何ですか?この葉っぱ」


純「危ないも何も、そいつが麻薬だとか、そういうやつだったらどうするんだ?」


一織「麻薬…」


そういえば、竜二さんが、オカルト研究会は麻薬の常習犯だとか言っていたような気がします。確かに、それが本当のことだとしたら、危険だなんて言葉では済みませんね。迂闊に触ろうとして危なかったです。やっぱり純さんを呼んできて良かったです。


倉庫の中を調べてみると、室内全体にある棚の大きさが随分と目立ちます。他のものがほとんどないというのもあるでしょうが。


そして、その棚の中身は、研究で使っていたと思われる薬剤が多くを占めていました。ここからいくつかを取って、彩月さんは薬の摂取をしていた可能性が高いと気づいたところで、ある仮説にたどり着きました。


彩月さんの死因は、薬の過剰摂取、オーバードーズというやつでしょう。この仮説は、倉庫での調査によって、事実となりました。


他にあったものといえば、非常食や工具などでした。非常食は、長期保存ができるから、研究をするうえで便利なのでしょうか?いまいち詳しくないので、そこは分かりません。工具は、研究所内の多くの設備を治すのに使えそうです。今回で、そうピンポイントで壊れるのかは別として。


こうして見てみると、なんだか不気味なものを覚えてきました。恐らく、殺人事件が起きたからというだけで、この時なら大して怖くはないはずです。人造人間の噂こそありますが、現状では結びつくものが何も無いですし、根も葉もない噂なのではと思っていました。


そんなとき、純さんが、彩月さんの死体について色々調べていたようで、そのことを教えてくれました。というか、いつの間にそんなことを…?あなた本当にWebライターなんですか?


一織「随分と死体に慣れていそうですけど…」


純「死体慣れ!?結構物騒なこと考えてる

な…」


一織「あっ、いや、これは、その」


しまった。声に出してしまっていました。


純「慣れてはないけど、この死体について話せそうなことがあるんだ」


一織「何ですか?」


純「そんな大したもんでもないんだが、目立った外傷はおろか、血の一滴もないんだ。死体を少し動かしたが、本当にどこにも血がついていない。どう思う?」


一織「そうなると、死因はオーバードーズあたりの可能性が高まりますね」


純「オーバードーズねぇ…。どこで覚えたんだそんな言葉」


一織「仕事柄…ですかね」


探偵しているせいで、物騒な高校生みたいになっていますが、私から手は出さないので安心してください。


さて、先ほどの純さんとのやりとりで、彩月さんの死因は確定したものと言えます。しかし、こうなると困るのが、殺意がないということなのです。このせいで、これからの連続殺人をすっかり予測できませんでしたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る