第7話

はな試合決まったぞ!!」

「あ、会長、傲慢Arroganceのですよね?」

「他に何がある?」


いやいや貴方、総合格闘技の方はどうなってるのよ?確かなんか考えある的な事言ってたと思うんだけど?

ジト目で見ていると「ウォホン」と咳払いして会長は言い訳を始めた。


傲慢Arroganceの試合が決まったらそっちの調整とか色々忙しくなるだろ?だから変に他で動くのもと思ってな・・・」

「本当は?」

「色々手を尽くしたが、お前のデビューからの5連勝がインパクト強過ぎて誰もオファーに答えてくれん」

「さいですか・・・」


まぁ予想通りと言えば予想通りなんだよな~

私は強い人と戦えることを喜ぶタイプなのでそんなの率先して戦いたいが、普通は逆で敬遠される。

それが世の中と言うものである。

気を取り直して傲慢Arroganceの方のお話を聞くこととした。


「それで、傲慢Arroganceの方は決まったんですよね?」

「ああ、決まった。対戦相手は上崎かみさき阿音あおと選手だ!!」

「そんな力入れて言う程凄い選手なんですか?」

「あ・・・本当に自分を鍛える以外他の選手とかには興味無いよなお前・・・」

「さ~せ~ん(汗)」

「まぁいい、上崎かみさき阿音あおと選手は空手出身のストライカー打撃タイプの選手で立ち技中心であるが、他にも色々かじっていて寝技も苦手としていない感じの選手だな。そして、傲慢Arroganceの看板選手の一人だ!!」

「へ~・・・上崎かみさき?何か聞き覚えあるような無い様な?」

「お、流石にお前でも知っていたか?」

「いや~格闘技では無くて何処かで聞いたような・・・」


う~ん、何処かで聞いたような気がするが、何処でだか今一思い出せない。

その内思い出すかもしれないなと、今日の目的のスパーリングへと気持ちを切り替えた。


音奈ねな、試合決まったわ」

武神たけみはなとの試合決まったの?」

「たけみ?」

「ああ、あの女の本当の名字みょうじね」

「へ~そうなんだ・・・」

「お姉ちゃん、あんな子はボコボコに打ちのめしてもう二度と立ち直れないようにしてあげてね」

「分かったは・・・でも何か彼女にうらみでもあるの?」


上崎かみさき阿音あおとあきれた。

妹の音奈ねな曰く、今付き合っている彼氏の元カノが武神たけみはなさん、今度私の対戦する武神ぶしん選手とのことである。

彼氏は別れたのに未だ元カノの武神ぶしん選手のことを引き摺っていて、妹との仲が中々進展しないらしい。

別れてくれたことに最初は感謝していたらしいが、ここまで彼が元カノの事を引き摺ると恨みに思い始めて、調べてみれば私の所属する傲慢Arroganceの出場選手を狙っていることが分ったらしい。

そこで私である。

完全に逆恨みだと思うが、妹の頼みだし仕方ない。

私自身は武神ぶしん選手に恨みはないが、妹の為に彼女には華麗に散ってもらいましょう。


上崎かみさき音奈ねな上機嫌じょうきげんである。

自分自身でも逆恨みであることは解っているが、彼の心を離さない武神たけみはなという存在が許せない。

もしあのまま彼女が彼と結婚したとしたら何時か彼女を殺してしまうようなそんな予感すら最近は感じていた。

もしもはないが、間違いなく計画的に殺しに掛かったと思えるほど彼女の事を憎んだとだろう。

座枯すわがれ祐平ゆうへいが魅力的な男性か?」と聞かれたら万人が「そこまでじゃない」と答えるだろう。

私にとっては最高に魅力的な男性に感じるというだけの話なのだが、それを他人に説明しようとしても言語化できないが兎に角愛している。

もう彼女、武神たけみはなには自分の全てを賭けているであろう格闘技で夢破れてボロボロになって欲しい。

幸いなことに姉がその世界では有名人で、丁度良いことに彼女と対戦することが可能であった。


「大晦日、日本中にその愚かな姿を晒して貰うわ」


彼女は薄笑いと共に更にはなを貶める策謀を巡らせる事とした。


「香子姉、朱里さん御陰で試合決まりました!!」

「「おめでとう」」


今日は推薦状のお礼と傲慢Arrogance出場決定のお知らせを兼ねて私のおごりで2人を焼肉店に誘っている。

2人とも私の出場は当たり前のことの様に考えている様であるが、多分、上崎かみさき選手が対戦を望まなければ落選したんではないかと思っている。

上崎かみさき選手との対戦決定の連絡時に傲慢Arrogance事務局の方より彼女が対戦を望んだことで本決定したことを伝えられたので間違いないだろう。

彼女にもお礼を言いたい位であるが、対戦するのに「ありがとう」もないだろう。

切欠をくれた2人を存分にもてなそうと思う。


「香子姉も朱里さんも食い過ぎじゃね?」

「え~存分にもてなすんじゃなかったの?ねぇ朱里さん」

「そうだよね~華はそう言ってた、聞いてたよね~香子さん!!」

「ぐぬぬぬぬ~」


ここは高級焼き肉店だよ?遠慮と言うものがあるでしょ?は。

特上牛タン、特上ロースに始まり最上級に特上のオンパレード、確かに美味しいが、お財布に優しくない!!

もう開き直ることとして、私も食べたいものを食べたいだけ注文し3人仲良く肉を貪り食べた。

非常に高級肉は美味しく食が進むこと進むことお会計は怖いがこれはお礼だ仕方ない!!

結局、「今日は華のお祝いだから」と言って2人がお会計してくれました。

傲慢Arroganceのファイトマネー入ったら今度こそ私がおごるからねと心に誓った。

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