浜木綿
ガブリエラ、きみは人として生まれてくるには清らかすぎた。人々の悪意に翻弄され、妬み嫉みに心を痛め、それでもこぼれる美しい笑顔に、誰もが陶然として言葉を失う。
きみは、清らかなものが遍くそうであるように、とても繊細に見えた。微笑みに翳りが見え始めてから、きみがああなってしまうまで、瞬きをする速度のように感じた。きみはあまりに美しすぎた。
ねえガブリエラ、どうして天使として生まれてこなかったの。もしくは、天使だったけれど人間の世の中におりたったの。どうしてそんなことを……きみがボロボロになって永久の眠りに就くのはわかりきっていたよね。どうして、どうして。
ぼくはきみを見送った日の気持ちを忘れない。美しいきみが人の悪意にめちゃくちゃに踏み躙られるのを誰よりも憎んでいたから。きみが人ゆえに弱くて、日毎病んでいくのを誰よりも悲しんでいたから。枕元に散らばった白い錠剤に目を奪われて、ぼくは涙も出なかった。
いまはただ、きみに手向ける花を探して浜辺をあるいている。
浜木綿の白い光を集めたらまた会えるよね。 ねえガブリエラ。
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