散華

花びらがひらひらと舞い散るさまは美しいかもしれないが、わたしにはどうも違う世界が見えているらしく、恐ろしさすらをも感じる。


華が散る、と書いて、散華……。ものは言いようというが、この言葉を言い出した者は、言葉を選ばずに言うと馬鹿だ。特攻を考えた人間は馬鹿だ。戦闘機に乗って、もしくは爆弾に作られた搭乗席に乗り込んで、自分の意思で自分の死を選ぶことは美しいか? 血や肉片が飛び散る様は花びらのように見えるか? お前に同じことができるか? それでもなお散華などと抜かせるか? 彼らはこの国に殺されたのだ。国のために死んだのではない。殺されたのだ。


わたしはなぜかいつもこういうことを花が散るのを見て考えてしまう。前世、そういうことに選ばれた青年のうちのひとりなのかと思ってしまうくらいには、真剣に考えてしまう。彼らがそんな無謀な死を選ばざるを得なかったあの大戦を経て、いまの世界は彼らの瞳にはどう映るだろう。たしかに平和かもしれない。けれどもこれでいいのだろうか。


この国の在り方が間違っているなどと大層な口を利ける者ではない。そういう話をしたいのでもない。


ただ、わたしだったら、一〇〇%死にに行く自分を、立派だ英雄だ美しいと言われて、ムカつかない自信はない。そんなことを、毎年考えてしまう。


願わくば、彼らに胸を張れるくらい美しい国を、これからも。



桜花散るその儚さに恐怖して人間魚雷に思いを馳せる

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