メビウスソフト1mg

雨に打たれるのに任せて、向かい合って立ち尽くしている。


「いつまでそうしてるつもり?」


俺は苛立って棘のある声できいた。お前はなにも答えない。お前はいつもそうだ。なにも答えないことで、俺が苛立って立ち去るのを待っている。賢者は黙し、愚者は語る……だっけか。お前はそうやって賢人ぶってるのな。


「いい加減にしろよ」


思わず胸倉を掴んだ。その拍子にお前の胸ポケットから煙草のソフトパッケージが落ちた。1mgなんて吸ってるうちに入らねえだろって、前言ったよな。なんでもかんでも俺の真似。

掴んだ胸倉を離し、ふらついたお前はなにを思ったか、ずぶ濡れの煙草の箱を踏み躙った。


「……前から思ってたけど、君、……いや、なんでもない」


初めてお前は俺に背を向けた。




ずぶ濡れの煙草の箱を踏み躙る 大丈夫だよ 君はおかしい

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