マジックアワー

夢の切れ端に似ている、と思った。

夕間暮れの空を見ていた。


あのちぎれ雲は、昼と夜と、どちらの時空に存在することになるのか。


わたしのちいさな疑問など気にも留めぬ様子で、飄々と人間たちの営みを見下ろしている。

……いいよね、おまえたちは。

呟きがくちびるから洩れていた。

――そうだ、雲を羨んだところで空を飛べるわけでもない。“思考回路の無駄遣い”だ。


背中のかばんが重くなった気がした。親と先生たちの期待が参考書の形をしてかばんに詰め込まれている。夢なら、醒めてくれ。



浅い夢は昼と夜との混濁のしののめ色の雲の切れ端

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