第11話 同窓会
月に一度の恒例になっている友達との飲み会は決まって同じお店にしていた。
料理が美味しくてお酒の種類が沢山あるイタリアンレストラン。
お店の前で待ち合わせをして、揃ったら入るのがいつもの流れ。
待ち合わせ時間の5分前だったが、
すでにジアン、ソア、ユリが来ていた。
「アミ??何それー!めっちゃ似合ってるじゃん!」
「アミぃ!(笑)」
「ギャー!!」
と、3人が駆け寄ってきて新しい髪色を見て驚き騒いだ。
「あ、すみません。初めましてぇ。あははっ。」
手を繋いだままになっているユンに、ジアンが挨拶した。
ソア、ユリも後に続き初めましてと会釈した。
「あ、はい。初めまして。」
と、ユンも会釈した。
声を低く変えていて笑ってしまった。
「ちょっとやめて?(笑)」
ユンの顔を見上げて笑うと、伊達メガネの奥で思いっきり笑った。
顔を近づけ笑い合う“距離感”に3人は
顔を引きつらせてドン引きしていた。
3人が何を考えているのか手に取るよう分かる。
1ヶ月前のウソクとの壮絶な別れ方を
4人には話している。
ユンがまだ好きな事、大事なデータを消されて再起不能な事。
しばらくして、ちょっとだけ立ち直って大学に行ける様になった事…。
この飲み会も延期して貰っていた。
なのに舌の根も乾かぬ内に、目をハートにして顔全体に「好き」の文字を書き
“新しい彼氏”
を、真っ直ぐに見つめて笑っている。
『この男は何者なのか?』
3人は上から下までユンを観察していた。
程なくして、テヨンがやって来た。
「アミ!ヤバぁ!(笑)ギャハハ!可愛いじゃん!」
「ありがとう(笑)」
「あ、彼氏さんですか?初めまして。」
「はい、初めまして。」
また声を変えている。
やっぱり面白くて顔をユンに向け笑った。
テヨンもまた距離感に戸惑っている様だった。
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一通り注文を終えてなかなか言葉が出ずに、むず痒い時間が流れた。
4人は手袋やマスクを取らないユンに困惑している。
「彼氏さんは何歳ですか?」
「同じ歳だよ。」
代わりに答えた。
「ぷはぁ!(笑)もうダメだ!面白すぎる(笑)」
ユンが素早く手袋・ニット帽・伊達メガネを取った。
「お前たちさ(笑)早く顔見せろよ!って顔すんなよ(笑)」
そう言われた4人が状況を飲み込めず苦笑いした。
4人の顔を1人ずつ見て、ユンはマスクを取り
「久しぶり。」
と、笑った。
4人の息が完全に止まった。
目をまん丸にして動きが止まっている。
呼吸法を忘れたかの様にアワアワしている。
その姿を見て、ユンと私はハイタッチをした。
「う、うそ…アミ…あぁ、良かったぁ…。」
ジアンがそう言うと泣き出してしまった。
すでに他の3人は泣いていた。
その時、タイミング悪く飲み物が来て
顔見知りの女性店員が気を使いながらグラスを置いた。
「そうじゃ無きゃ、おかしいよね?おかしいと思ったよね?」
ユリが震えた声で同意を求めた。
3人はうんうんと頷いている。
「何で泣くのよ…」
予想もしない反応にもらい泣きをしてしまった。
「何これ(苦笑)」
女5人が泣いている。
ユンがキョロキョロと人の目が向いていないかを確認した。
涙を拭いながらテヨンが口を開く。
「昔、付き合ってない詐欺してたじゃん?」
「付き合って無かったんだってば(笑)」
「今はちゃんと付き合ってんのね?」
「付き合ってるよ。」
と、ユンが言うと私にキスをした。
2秒程のキスの後見つめ合い、笑った。
「それはそれでウザいんだけどぉ!!」
とジアンは言い放ち、4人は笑いながらまた泣いた。
「みんなには心配かけたよね。本当にごめんね。もう、大丈夫だから。私たちは大丈夫だよ。」
「え!?もしかして結婚しちゃう!?」
と、ソア。
「するよ。」
ユンが即答するとジアンが
「しなかったら次は承知しないからな?」
と睨んだ。
「え、ジアちゃんってこんなだっけ(汗)」
とユンは苦笑いをした。
「だってさ、3年の時どんなに大変だったか…どんどん痩せてっちゃうしさ。アミが平気なフリするから敢えては聞かなかったけどアミがおかしかったの、私たち気付いてたんだよ?」
「トイレに行く時、生理用品持って行かないのも気付いてたし。あんた生理止まってたでしょ?」
「え…何で?…うぇ…(泣)」
有り難さと、申し訳なさで涙が滝の様に流れた。
その後をソアが引き取る。
「アミ絶対食べてないしあんまり寝てないね。ってなって、アミに栄養付けさせないとって4人で毎日交代でお菓子持って行ってたんだよ。貰ったからとか、余ったからとか言ってさ(泣)」
「あ!なんか、重たい物ばっかり食べてた!
チョコブラウニーとかチョコパイとか!」
記憶が蘇る。
「持って帰ろうとするから、5人で食べるの!って食べさせてたんだよ。」
とユリが涙をポロポロこぼしながら言った。
「そうだったんだ…(泣)あれは、そうだっの?(泣)」
「うぇ?ユンくん…もしかして泣いてんの?」
テヨンが声をかけると
「みんな、ごめん。あぁ、俺、最悪だな。」
目頭を押さえて下を向いた。
たまらずユンを抱きしめた。
「今ちょっとこの人ダメなんだよね。みんな、ごめんね。ありがとう。もう、やめてあげて(泣)」
「女で寄ってたかって責めるのは可哀想だからこれくらいにしてあげるよ。とりあえずアミはずっとユンくんを好きだったよ。幸せにしてあげてね。」
「…わかってる。」
「さ、乾杯しよ!」
テヨンが明るく声を掛けて何とか乾杯をした。
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「あ!あれ!そうだ!突然アミを投稿する様になったインスタ!あれ、ユンくんって事か!?」
「あぁ!ベッドの上のとか!(爆笑)こいつ超アミ好きじゃん!って思ったんだけど、ユンくんなんだね(笑)じゃ、遠慮なくフォローしちゃお(笑)」
テヨンとジアンが言うと、4人ともスマホを出した。
「あ、新しいの上がってるー。」
とユリが私の手を見ようとしている。
今日のユンの投稿は、スタバのカップを持つ私の左手だった。
「今日みんなを驚かせたくてさ、私はなかなか投稿出来なかったんだよね。白さでバレるから(笑)」
「直ぐにわかっただろね(笑)」
テヨンがユンを見て言った。
私もさっき撮った写真がある。
スタバのカップを左手に持って飲んでいるユンを斜め後ろから撮った写真。
輪郭だけで顔は映ってない。
キャプションを付けずに投稿した。
速攻、4人からのハートを貰った。
その時だった。
「なんだ、お前!今そんなんなってんの!?」
と、超絶イケメンに頭を指さされて言われた。
「きゃー!!!超イケメン!」
「はぁ??(怒)」
ユンに睨まれた。
ソジンだった。
隣にはちょっとだけ“可愛い”に“ワイルド”が入った、こちらも超絶イケメンのデヒョンまで居る!!
女子5人はパニックだった。
テヨンが椅子から転げ落ちた。
お店の人に注意される程、大騒ぎした…。
高校の時の学校一の人気者3人が揃うと、
女子優勢だった雰囲気がガラリと男子優勢に変わる。
相変わらず最強の3人だった。
「何? 何で?」
ユンに聞くと
「呼んでおいたんだよ。」
と得意げに笑った。
「2人付き合い出したって?(笑)とりあえず祝いに来てやったぞ。」
「やっとだよね(笑)おめでと。」
ソジンとデヒョンに祝福された。
思いがけない同窓会となった。
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近況報告や思い出話し、連絡先交換であっと言う間に4時間が過ぎた。
1軒目はここでお開き。
「2次会行くよね?」
「行くだろ、そりゃあ。なぁ?」
ほろ酔いのソジンとジアンが全員に同意を求めた。
「俺たちパス!行くとこあるから、また今度な。」
「はぁ?どこだそこは!」
ソジンがユンに絡んだ。
「ラブホに決まってんだろ。」
「あぁ!もう!それはそれで、やっぱりウザい!」
ジアンが叫ぶと、皆んなが笑った。
「お前たちはとっとと消えろ!バイバイ!」
そう言いながらもソジンの顔が嬉しそうでホッとした。
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「ふぅ…」
客室に入るなり私はベッドに倒れ込んだ。
「ユンくん寒いぃ!」
「はいはい。直ぐに暖房つけますね。」
「ユンくんコート!」
「脱がせば良いの?」
目を瞑ったまま、コクンと頷いた。
「あれぐらいで酔うとか弱過ぎだろ。」
コートを脱がせて貰ってベッドに潜り込んだ。
「ユンくん…」
「次は何だ!?」
「抱っこ…。」
ユンもコートを脱いでベッドに入り抱きしめてくれた。
「飲み過ぎちゃったよぉ。ふぅ。頭痛い、お腹痛い、気持ち悪い。」
「大丈夫?」
「たぶん…ふう〜ん。」
「アミ酔ってると、もっとエロいな。」
「ん〜。ごめんだけど、やれそうにないぃ。」
「えー?じゃあ、どうしたら良いの?」
「1人でやって。」
「むなしっっ。お前バカだろ(笑)あ、わかった朝やる。」
「お前の方が、バカだぁ……」
―― スーッ、スーッ。
「ん?アミ?」
――スーッ、スーッ。
「うん。可愛いから許す。」
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――ピピッ、ピピッ、ピピッ
――ピピピピッ、ピピピピッ
「ううん。」
アラームの音で起き上がると、ユンも起きた。
アラームを止める。
「はぁ?5時?」
「アミ、もう大丈夫?」
「うん、ちょっと頭痛いけど。」
「やれる?」
「したいの?」
「…………。」
「じゃあ、ちょっと待ってて、シャワー浴びて来る。」
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部屋を出てエレベーターに向かうと使われていて3階に上がって行った。
「2階だから階段で降りよ?」
――コツン、コツン
「付き合って1週間経ったね(笑)」
「あ、そっか、月曜日だったな。」
「怒涛の1週間だったわ。」
「あはは。確かに。」
――チンッ、ウィーン
「え?」「え?」「え?」「え?」
エレベーターから出て来たカップルと鉢合わせしてしまった。
4人同時に「え?」と、固まった。
私とユンは良い。
誰と鉢合わせしたって、やましい事は何もない。
クリーンな状態で付き合っている。
問題は目の前の2人だった。
「マジかよ。これは詳しく聞く必要があるかもな(笑)」
ユンが笑っている。
私はこの状況を笑えなかった。
「ソジンくん!」
「はい。」
「一夜限りとか、酔っ払ってとかって無かった事にしたりしないよね?」
「アミ!良いんだって。私も酔ってたし!」
「ジアンそうゆうの嫌な人じゃん!」
ソジンとジアンだった。
「ソジンくん、ジアンを傷付けたりしたら許さないからね?」
ソジンはジアンに向き合うと、
「連絡するから。」
と言った。
4人はいつもの月曜日を始める為に帰路についた。
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