オネェ兄貴は重度のブラコンです〜弟信者の兄は恐い〜
朱鷺乃 紗菊
第1話 兄貴帰還
「1000年よ?!1000年もの間故郷に帰る方法が見つからないなんてッ!あんまりよぉ...」
最後に地球にいた日、確か2023年位
ゲートと言われるものが開いた。
そこに巻き込まれたアタシはそのままこの世界、武林と呼ばれるここに飛ばされた。
弱ければ殺され搾取される、そんな世界でアタシは死なないように鍛錬を積んで来た。
1000年間もの間。
そう、1000年。
さっきも言った通り1000年。
「もう帰りたいよぉやることないわよ!もうっ!」
アタシは駄々をこねるように腹を立てていたら
ピロンッ
通知音のようなものが鳴った。
まるでプロジェクターで空中に移したような画面?みたいなのが現れてこんな文字が映し出されている。
<おめでとう!!武林転移者最後の生存者になったよ!>
「なによこれ。どういうこと?」
<報酬に対象者を惑星‘地球’に転移させてあげるよ!>
「ほんとに何これ。何様よ。生意気な!」
アタシは楽観的な文脈の目の前にいるヤツに腹を立てる。
<まぁそう腹を立てないでください。すぐお返ししますから!>
そう文が出ると一瞬にして光に包まれた。
───────────────
「あ、ら?ここは?」
見知らぬ部屋に出る。
周りを見渡すとふとカレンダーが目に入る。
「あらぁ綺麗な花の絵ね〜って待って、2033年...?10年?たった10年しか経ってないの?!」
あまりの衝撃に声を大きくして叫んでしまった。
千年の時を過ごしたアタシには10年は短すぎるぐらいだった。
「誰だッ?!」
剣を持った男がでてきた。
見覚えがあった
声も見た目もアタシの知っている子では無いけど、アタシの心はこう言っている。弟だと。
「不法侵入者め!俺が誰だか知ってて入ってきてんのか?!後悔させてやるよ!」
剣を構えてこちらへ走ってくる。
が、そんなの関係ない。
自然に口が動いていた。
「獅音...?ホントに獅音なの?!」
そう言うと弟はピタリと動きを止めて
「え、何ストーカ系のキモオタ?ガチ恋勢?服も髪もやばいし...え、なんかキモ...」
という。
辛辣な言葉にアタシは久々に精神的ダメージを負った。
「グハッ...アンタ...ほんと昔から切れ味すごいわね...」
「え、、いやなになになに、昔からって...妄想癖??いやマジ無理...」
次々に罵声が来る。
「いやてかそんなことより不法侵入してるしハンターとして俺暴力行使するけど許せよ?」
「あらまぁ。10年ぶりとはいえ兄の声を忘れてしまうだなんて...アタシ悲しいわ...」
分かりやすーく悲しんでいる演技をしてみる。
「え怖、妄想癖もここまで来るとひでぇわ...」
待ってゴミを見るような目でこっちみてる。兄に向かって失礼な!
「はぁここまで言わなきゃかしら。白藤 蓮。アタシの名前よ。もう忘れた?」
「な、なんで兄貴の名前を...どこでも言ったことないのに...」
「だーかーらー!アタシが本人なのよ!いい加減認めなさい!何?岸華の方も言ったらわかる?」
腕を組んで上から聞くように言ってみる。
「ほ、ホントに兄貴なの...え?嘘...ホンモノ...?」
「ホンモノよ!てかこんな口調の人そうそう居ないでしょ!」
「じゃあ俺の名前覚えてる?!」
「おーとまてぃっくししおうしおん」
真顔で言ってやった。
正直、武林に転移して最初の頃キツすぎて精神的にヤバかったからそんな時獅音にとっては黒歴史なはずのこの言葉を思い出すだけですごく元気付けられた。
魔法の言葉だ。アタシは大好きな言葉。けどちょっと恥ずかしいので悟られないようにしてみた。
まぁ案の定獅音は顔を真っ赤にしながら
「そ、それ知ってんのは兄ちゃんだけだ...ほ、ホントに兄ちゃんなのか...」
剣を下ろしながらボロボロと泣き出した。
アタシは優しく抱き寄せた。
「なんで...なんでこんなに帰ってくんの遅いんだよッ、今まで...今までずっとずっと待ってたのに...あんまりにも遅いから死んじまったのかと思っただろ...」
顔を見られないよう必死に隠しながらもまるで子供のようにわんわん泣いている。アタシはそっと頭に手を乗せて声をかける。
「本当にごめんなさいね。苦労掛けちゃったわね。本当に...本当にごめんなさい」
アタシまで泣いてしまった。
アタシも手で顔を隠した。こんな所見られたくないから。
(泣いたのなんてほんと久々...900年振り位よ...ホント...ホントに...)
考えれば考えるほど涙が出てくる。
武林での辛い日々全てを包み込むたった1人の家族の優しい温もり。
(人の温もりを感じたことすら久々ね...)
とか色々綺麗事を並べたけど理性には勝てない。
(うちの弟可愛すぎるッ!!!何この子!うさぎみたいにしょぼくれても〜可愛いぃぃぃぃ!!1000年ぶりだから尚更可愛いわぁ〜癒されるぅ!!ずっとこうしていたい!!この服もう絶対洗濯できないわ!獅音の涙が染み込んでるんだもの!!)
多分この心情がバレたら引かれるだろう。
辛辣な言葉でグサグサ攻撃される。うん絶対。
───────────────
ダイニングテーブル椅子に向き合って座っている。
「ズビッ」
「ちょっとぉいつまで泣いてんのよ〜もうアタシは居なくなったりしないわよ〜!」
ずーっと号泣している獅音を元気づけるように声をかける。
もうかれこれ30分は泣いてる。
(昔から泣き虫なのは変わってないのね)
ちょっと、てかだいぶ嬉しい。可愛い。好き。だが、兄としてどうにか泣き止ませてあげなきゃ行けない。
「とりあえず鼻水拭きなさい。そして落ち着きなさい」
持っていた手ぬぐいで涙と鼻水を拭いてあげる。
「うぅ...ズビッ...」
やっと泣き止んできた感じ。
「も〜泣きすぎよ!目真っ赤じゃない!大丈夫?」
「ホントに...兄ちゃんが目の前にいる...信じられない...ズビッ」
アタシが持ってた手ぬぐいをとって鼻をかみ出した。
「ふぅ...落ち着いた...ありがとう、兄ちゃん。」
「ふふ。いいのよ!」
アタシは顔に肘をつきながらニッコニコで見つめる。
泣き止んだ時の顔も可愛い。
「あ、そうだ!」
獅音は何かを思い出したようにポケットからスマホ...(多分)を出し、椅子からたった。
「兄ちゃんごめん!ちょっと大切な電話だから!」
そういい、部屋から出た。
(アタシより大事な電話ってなによ!)
ちょっと嫉妬した。
(でもそうね、10年だもんね、当時8歳だったから今は18かしら。大学受験も控えてるわね。でも何よりアタシを覚えててくれたの嬉しかったわ。)
時の流れは残酷だな〜と思う。
武林ではアタシにとって時は無限だったから。
衰えを超越する武の境地で、骨と筋肉が武功を発するのに最適な状態に転じ、外見も全盛期の若々しい姿に変化するという都合のいいもの。
この境地に達したせいで寿命なんてものは無くなった。故に時間は無限だったのだ。
ただやはりこっちに戻って来たからにはそうやって会得した技とかも全て無くなっているのかと思うと少し虚しい。そう考えているとそう考えていると、獅音が戻ってきた。
「兄ちゃん出かけるよ!」
「えぇ?!急に?!アタシもう少しゆっくりしたいのだけど...」
「兄ちゃんが知らないといけないことが沢山あるの!今の世の中10年前とは段違いだからね!そこら辺の知識のスペシャリストが兄ちゃんと会いたいって!」
早口だ。そんなにすごい人なのか?
なんだか負けた気分で悲しい。
「とりあえずその服目立つから俺の服着て!」
1枚のタンクトップと短パンを差し出してくる。
「その長い髪はどうしようもないけど服ぐらいは変えられるからね!」
(アタシの服そんなへんかしら?)
でも確かに和服っぽい感じだし今だと多分洋服が主流だろうからおかしいか...
「でも流石にアタシタンクトップ1枚は恥ずかしいのだけれど...」
服を脱ぎながら言う。
「仕方ないじゃん。兄ちゃんでかいから俺の服着せたら100パー破れる。」
それもそう。
「てか兄ちゃん筋肉凄ぉ、服の上からじゃ分からなかったけどムキムキだね」
アタシの腹筋を触ってくる。
(鍛えておいてよかったッ!!)
心の底からそう思う。
「着終わったわよ。」
「着れたんだよかった〜!あ、この服洗濯しとくかr....」
獅音がアタシの来ていた服を運ぼうとした。
「いいえ、!遠慮しておくわ!置いておいてちょうだい!」
「えーでもさ〜」
「お願いッ!!」
(あれは獅音の涙が染み込んだ服!洗ってはダメよ!手ぬぐいもちゃんと持っておかなきゃ!!)
「もーわかったよ。じゃあ行くよ。」
獅音はアタシの手を引いて扉へ向かい、外へ出た。
───────────────
「な、何よここ!でデカすぎやしない?!」
あの後、獅音に連れられ車に乗ってからついた先はすごく大きいビルだった。
「あ、アタシに会いたいって人ここにいるの?!」
「うん。あ、あと俺用事あるからこの人についてって!じゃ、
獅音は走ってどこかへ行った。
そして車を運転していた黒服の女性がこちらを向く。
「では白藤様、マスターがお呼びですので行きましょう。」
「あ、分かりました。」
黒服の女性とビルの中へと入った。
「凄いセキュリティですね...」
門番...じゃなくて警備員さんかな、が沢山いる。入口だけでも37人はいる。
それぞれスーツを着ているけどなかなかの強さだと思う。
(何よりこの黒服の女性、只者じゃないわね)
そう思いながらついて行く。
エレベーターへ乗り込むと黒服の女性がパネルに手を当てると、一瞬で最上階に付いた。
「こ、これは?」
「転移魔法です。マスターに会うためにはこの魔法が必要なため簡単に会えないのです。」
“魔法”という言葉に少し引っかかった。
(魔法って...それはおとぎ話じゃないの?武林にも魔術や呪術はあったけど...ゲートが関係するのかしら?)
色々考えていると、エレベーターの扉が開いた。
「マスター白藤様をお連れしました。」
「あぁ、うん。ありがとう。」
こちらに背をむけた赤い髪にオレンジの毛が混じったような特殊な髪色でスーツを着た人がいる。
声と体格的に男性っぽいけどまだわからない。
しかもさっきの黒服の女性より数倍、いや十数倍はただならぬオーラを放っている。
(強いわね。)
そう考えていると
「白藤様、中へお入りください。」
黒服の女性はそう言い、エレベーターの中へ入った。
「久しぶりだね。僕のこと覚えてないだろうけど。」
そう言いながらゆっくりと振り返った。
「僕は
「朱...一...?」
アタシにはこの人も見覚えがあった。
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ここまで読んで頂きありがとうございました!
このお話は初めての投稿で文書的に分かりにくかったり誤字があったりなどあるかもしれませんが、もしそういう所を見つけた場合コメントを宜しくお願いします!!
後、アドバイス等や、続きが気になる!面白い!と思ってくださった方はフォローやレビュー、♡などもよろしくお願いします!厚かましくてすみません!
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