ヤンキー彼氏とちょっと怖い先輩彼女の話。
桜空 ゆうき
第1話ヤンキーに絡まれた話。【Prolog】
「喧嘩売る相手間違えんなよ。今日は先輩と久々のデートなのに…。」
俺、桃瀬 葵人モモセアオトは巷で有名なヤンキー校に通う二年生。
ヤンキー高校と言うだけで色んなやつに絡まれるため喧嘩だけは強くなった。
「ほんとよく絡まれるな…。」
ボコボコにされたヤンキー達が足元に転がっている。
今警察きたら終わるな…。
「てか時間やば!!先輩待たせてんのに!!」
俺はヤンキー達を置いて先輩の元へと急いだ。
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「先輩!遅れてすみません…!!」
「そんな急がんくても良かったのに。」
息を切らして現れた俺を心配するように顔を覗かせたのは俺の彼女である先輩、紫乃宮 律シノミヤリツ。
大人らしい見た目に関西弁の口調が目立つ。
「その怪我…どしたん?大丈夫?」
「あー…ここ来る前にヤンキー𓏸𓏸高校のヤンキー達に絡まれちゃって。でも、大丈夫です!」
心配かけまいと元気よく言う。
「𓏸𓏸高校…。」
割と知られたヤンキー高校の名前に驚いているようだった。
「家で手当てしよっか。今日はお家デートってことで、映画でも観よ?」
今日は先輩が行きたがっていたカフェに行く予定だった。
「…大丈夫です!俺元気ですから!」
先輩だいぶ楽しみにしてくれてたし、悲しませる訳にはいかない。
「桃瀬くんが元気でも私が心配やから、ね?」
「……はい、この埋め合わせは今度必ずするんで。」
「桃瀬くんに会えるだけでよかったからいいんよ。」
先輩には敵わない…。一生大切にします!
「あ、その前に電話してもええ?すぐ済むから。」
「俺ここで待ってますね!」
先輩は少し離れた所に行って電話をかけ始め、五分も経たないうちに戻ってきた。
「おまたせ、じゃあ行こっか。」
「はい!」
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「飲み物取ってくるから適当に座っとってな。」
「ありがとうございます!」
先輩の家に来たのは二か月ぶりくらいだった。
前回と景色に代わりもなく安心感がある。
ピコン
不意にスマホが鳴った。
「優太からだ…。」
同じクラスのヤンキー仲間、優太からのメッセージだった。
「…え?!」
「桃瀬くん、大丈夫?」
驚きのあまり大きな声を出して心配される。
「俺が今日絡まれたヤンキーのとこに弥生組が乗り込んでるらしくて…。小さいヤンキー校になんで組のヤツらが…?」
弥生組というのは全国屈指の族人。とにかくでかい組織で目を付けられたら終わるという噂がある。
「怖いな…桃瀬くんとこも気ぃつけてな。」
疑問が残る話題だったがデート中であるため気にしないようにした。
「映画観たいのあるんやけどそれでもええ?」
「俺はなんでも大丈夫です!」
先輩から渡されたオレンジジュースを受け取りながら言った。
先輩の飲み物はコーヒーだった。
なんか、、俺かっこ悪い!!?
「これこれ、結構前に買って観とらんままだったんよね。」
「…ガチっすか。」
明らかに怖そうな表紙に恐怖を覚える。
「まぁ、怖そうやけど二人で観たら大丈夫かもしれんからさ。」
「…頑張りましょ。」
何言ってんだ俺。
思っていた通りいきなりゾンビが出てくるわ人が殺されるわで散々な目にあった。
ピリリリ
「な、何ッ!?」
「ごめん、私のケータイやわ。続き観とってー!」
「早く帰って来て下さいね?!」
クッションを抱きしめながら言った。
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「…ピッ彼氏くん待たせとるから手短に。」
ゾンビ映画に怖がる彼氏の桃瀬くんを置いてキッチンで電話に出る。
『宮野です、紫乃宮さんに頼まれてた𓏸𓏸校のヤツらボコしました。』
電話の相手は私の側近であるみーちゃんこと宮野。
年上ながら私を慕ってくれている。
「そっか、ありがと。まだ𓏸𓏸高校おるん?」
『居ますけど…何か用事が?』
「リーダーに代わってくれん?」
向こう側でガサガサと音がする。
『お前が主犯か!!…なんでいきなり乗り込んできた?!何もんだ!!』
「あまり怒鳴らんで下さい。傷に響くでしょう?」
桃瀬くんには伝えていないけど、
「私は弥生組当主、紫乃宮 律。」
『弥生組…ッ!』
「喧嘩を売る相手、間違えんとって下さいね?」
『俺は何も…ッ!』
少しの沈黙の後ボコッと殴られ倒れた音がする。
みーちゃんが殴って気絶させたんかな。
「みーちゃん怪我しとらん?色々ありがとね。」
『当主のお望みなら何なりと、では失礼します。』
電話を切る。
本当によくできた側近やな…。
「ぎゃー!無理無理!」
「ここまで聞こえとるし…戻ろ。」
少し頬が緩む。
桃瀬くんには申し訳ないけどもう少しだけ、何も知らんままでおってね。
これは、ヤンキー彼氏とちょっと怖い先輩彼女のお話。
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