第362話 勝ち取った決勝行きの切符
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
無失点記録を持つ鉄壁の守備相手に2点を先行される。
それも後半の終了が迫る時間帯、戦う最神の背に重くのしかかる現実。
「まだやろ!1点取って立見が崩れたらまだ分からへん!!」
もう駄目だと心が折れかける選手が出てくる中で想真が叫ぶ。
1点を取って差を詰める、そうなれば希望がまた出てくる可能性があると賭けて折れかけた心を奮い立たせて最神はセンターサークルにボールを置きに行く。
一方の立見は明が決めた2点目のゴールを喜び合ったままだ。
「(とりあえずギリギリまで焦らしとこ)」
相手に合わせて急がず、2点差を付けて弥一は最神の心が焦るのを感じつつ明の得点を祝福。
立見が戻らないのでキックオフが出来ない、主審が注意に行こうとすれば弥一が「戻って戻ってー」と手を叩き皆がポジションへと戻る。
これを見た主審はふう、と軽くため息をついていた。後少し長引けば注意かカードが出されたかもしれない。
残り少ない時間で最神は急ぐ、ショートパスの繋ぎやドリブルではなく一気に長いパスなどで時間をかけず攻めたいというプレーは意識しなくとも出ていた。
「2番右来てるー!」
SDFもより攻撃参加に上がり、左サイドから立見ゴールへと走る。
その姿が弥一に見えてすかさず指示を出す。
「おおっし!」
『最神、八神から左へと長いパスが出た!だが立見の3年DF田村がインターセプト!立見集中力を切らさない!』
やらない、1点も。
フィールドに立つ立見全員の共通した気持ちとなり、それが強固な守備として表現されて最神の猛攻を跳ね返す。
「(くっそぉぉーー!!)」
想真は最後の意地か、ボールを持つと40m以上離れた位置から右足のロングシュートを放った。
大門が反応するが彼はそのボールを見上げて見送る。
想真のシュートは矢のような勢いがあったもののゴールバーを大きく超えてゴールを捉えられなかったのだ。
後に主審の長い笛、試合終了のホイッスルが吹かれた。
『立見高校2年連続で決勝戦進出!選手権2連覇まであと一つの勝利と迫って来ました!』
『最神も健闘しましたが立見が一歩上を行ってましたね、ナイスゲームでした!』
「っしゃ!あと一つで頂点再びだ!」
「此処まで来たらもう勝ってスッキリ卒業しよう!」
「たりめーだろ!」
大事な準決勝での勝利に間宮、影山、田村の立見3年組が喜び合う。
彼らにとっては泣いても笑っても次の決勝戦が高校ラストゲームだ。
「勝って3年の先輩達を大学へと旅立たせようー♪」
「お前は祝勝会のご馳走目当てじゃね?」
「えー?そんな飯飯キャラじゃないですけどー!」
弥一がそこに盛り上げようと声を出せば仲間に茶化され、締まらない感じになり笑いが出て来ていた。
「負げだぁぁ〜〜〜!」
同じ頃、最神側では敗退が決まり想真が大粒の涙を流して大泣きしていた。
2年連続で準決勝敗退、それも同じ相手に敗れる。今度こそリベンジと強い思いで臨んだ試合だったが一歩及ばず舞台を去ることが確定。
「だぢび〜!ぶっどばぞうどおぼっどっだどにぃ〜!」
「成長しても負けてめっちゃ大泣きする泣き虫は全然直ってへんな…」
「昔からですか、あの大泣きは」
「サッカーやゲームとか勝負事で俺があいつに勝つ度泣き喚くんや、ま…そんな負けず嫌いやからこそ此処まで伸びたんやろうけども」
フィールドで泣きまくっている弟、直人は昔を思い出しつつ最後まで戦った想真に心でお疲れさん、と声をかけてやれば残念会として後で飯に連れてってやろうと泣く弟を見ていた。
立見2ー0最神
歳児1
緑山1
「立見が最神に勝利ねぇ、まあコロッと負けて敗退したら困るなと思ったけど…いらない心配だったね?」
「うるせぇ」
スタンドで立見の戦いを見届けた牙裏の春樹と狼騎、牙裏学園はこの後に此処国立競技場で八重葉と戦う為に会場へと来ていた。
それは八重葉の方も同じであり、牙裏のいるスタンドとは反対側の方に八重葉学園の面々は居る。
「(神明寺…すぐにそこへ行くから待っていろ)」
一足先に決勝へと進んだ立見、それに続かんと照皇は自分達八重葉も決勝の切符を掴むと決意を固めていた。
立見と最神の試合の後に八重葉と牙裏の試合が行われるので彼らは荷物を纏めてロッカールームを開けておく。
立見はこの準決勝の八重葉と牙裏の勝者と決勝を戦う事が確定、会場に残って彼らを偵察しようとスタンドから試合を見守る。
「試合まで時間がある、その間に各自エネルギー補給をしておくように」
薫からそれぞれへと弁当が支給されていく。
準決勝の勝敗が決まってから間もない時、摩央やマネージャー達といった裏方は人数分の弁当を用意する為に動いていた。
運動後になるべく早く食事を取るスタイルはこういう所でも例外ではない。
「でっか〜」
山盛りの白飯、大きな豚の生姜焼きの下にミートスパゲティがあって小さなスペースに漬物がちょこんと入ったボリュームある弁当には弥一も見て驚く。
「あれ、あたしらも同じ弁当…!?」
「人数分買っちゃったし、食べないと勿体ないからね〜」
選手達の弁当がそれかと思っていた鞠奈だったがマネージャー達も同じボリュームある弁当だった。
好きな物ばかりの上に味が美味しいので食べられるが太る、それを気にしつつ彩夏と共に弁当を食べ進める。
「八重葉と牙裏か…どっちが勝つんだろう?」
「去年だったら八重葉、かもしれなかったけどな」
大門にとっては食べ慣れた量の大盛り弁当、苦も無くあっさり食べ終えて食後のお茶を楽しみつつ準決勝の相手はどっちが勝ち上がるか。
まだ弁当を食べている優也とこの試合がどうなるか話していた。
「総体の時もぶつかって確か八重葉が競り勝ってたよな、ただ牙裏はあの時からメンバー変わったから今回どうなるか…」
だいぶ満腹が近づき、一旦箸を置いてスマホを見る摩央。
総体での八重葉と牙裏の試合は両ストライカーが点の取り合い、4ー3と八重葉がこの撃ち合いを制したものの照皇が狼騎のタックルを喰らって負傷。
そのせいで決勝の立見戦は欠場している。
「今回どっちが勝つんだろうなぁ、弥一」
試合の行方がどうなるか、摩央は右隣に座っている弥一へと目を向けた。
「あ〜満足〜♡」
その弥一は山盛りの弁当を平らげ、お茶を飲んでまったりとした一時を過ごしている。
これから決勝を戦うライバルが決定するという時でも相変わらずな様子だ。
弥一のいる立見と戦うのは八重葉か、牙裏か。
開始の時は刻一刻と迫る。
ーーーーーーーーーーーーーーー
此処まで見ていただきありがとうございます。
大盛り豚の生姜焼き弁当美味そう、先が気になりこの作品を応援したいとなったら作品フォロー、☆評価ボタンをポチッと押して応援していただけると嬉しいです。
弥一「気付けばサイコフットボール1周年までもう5日を切ったよー!」
大門「迫って来てるね!なんかいよいよって感じがして来た…!」
優也「今更焦っていてもしょうがないだろ、来るもんは来るからな」
摩央「て言いながら優也、お前も何かそわそわしてんじゃね?」
優也「気の所為だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます