第338話 東京予選の決着
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「最近は高校サッカーに関して触れて行ってますレベルアゲアゲチャンネルー☆お馴染みマリーが今高校サッカーで最も熱い立見高校について触れちゃうよー♪」
明るいBGMと共に動画が始まり、新たにサッカーのジャンルへ踏み入れたマリーが軽快なトークで話していく。
「元々は1人の学生が部を立ち上げた事から始まった立見高校サッカー部、スポーツ名門校なのに今まで何でサッカー無かったんだろうねーというツッコミはさておきー!」
「部が出来てから3年目、此処から立見の快進撃が始まった訳なんだよね☆その立役者は彼無しでは語れない!めっちゃ小さいけど無敵なDF神明寺弥一君!彼が加入してから立見はとにかくもうゴールを奪われていません!」
テンションを上げてマリーは立見、弥一について触れていた。
「去年は公式戦で全試合無失点!守備力はかの有名なイタリア、カテナチオを思わせる程でそれは今も続いていてギネス記録打ち立てる気か!?というぐらいに立見や神明寺君はあり得ない事をやっちゃってる訳だねー☆」
「それが今年は攻撃力もとんでもない!氷神詩音君、玲音君の双子と石田半蔵君と緑山明君といった凄い1年の活躍がもう止まらないのなんのと、最近始まった選手権では2桁得点で相手を下し続けて準々決勝も音村学院を10ー0!準決勝で北村を6ー0と2桁は準決勝で途切れた、けどそれでも大差で滅茶苦茶強い事に変わりないってのー!」
「このまま決勝戦の桜王も勢いで倒し東京A代表の座も昨年と同じく勝ち取って行くのか!?レベルアゲアゲチャンネルはこれから立見や高校サッカー追って行くよー、この動画が面白いと思ったら高評価、チャンネル登録でチャンネルのレベル上げちゃってねー☆」
最後まで明るく軽快に話し、マリーの今回の動画は終わりとなった。
「はぁ〜…編集終わった…疲れたぁ…」
何時も通り自宅で動画の編集をしていたマリーこと鞠奈、髪はボサついており眠そうな顔で睨みつけるようにパソコンのモニターを見る姿は動画の姿と全く違う。
ファンには見せられない一面だ。
「何か気付けばあたしマネージャー頑張っちゃってるし、神明寺君の密着動画未だ撮れないままサッカーのジャンル取り入れちゃったけど…まあまあ伸びてんなぁ」
レベルアゲアゲチャンネルで新たにサッカーを取り入れ、付け焼き刃の知識で触れていけば爆発的な伸び、とは言えないが確実に再生回数は稼げている。
「あ…やば、もうこんな時間。寝るか…」
時間を確認すれば就寝時間はとっくに過ぎており、鞠奈は寝る準備をのろのろと進めていた。
早めに寝ておかないとマネージャー業務に差し支えてしまうから。
自分でも気づかないうちに鞠奈は立見サッカー部の一員として染まりつつあった。
立見の決勝の相手は準決勝で真島を下し、勝ち上がって来た桜王。
かつては東京No1と言われて東京を代表する名門校だが、立見の台頭から東京最強の座は遠ざかってしまっている。
今の立見は強いが彼らも名門校の意地があり、立見を此処で止めて全国へ行くとリベンジに燃えていた。
「これ負けたら初戦敗退と同じだからな、絶対勝って今年も全国カチコミだ!」
「立見GO!!」
「「イエー!!」」
立見は何時も通り円陣を組んでから間宮の掛け声、その後に各自散って位置につく。
桜王のリベンジか、立見が再び返り討ちか。
今試合開始の笛が鳴る。
ピィーーー
「(立見の攻撃を抑えるには、まずこの司令塔の1年はマークしないとな)」
今や桜王の要となっている2年の冬夜、前回も彼は明をマークして途中まで封じ込めていた。
今回は最後まで封じ続けようと明にピッタリくっつく。
明は動き回って振り払いに行くが、陸上で鍛えた走力を持ち優也と争った冬夜を振り切る事は出来ない。
「(相変わらずこの人のマークは嫌だな…!)」
明からすれば身軽で素早く動ける冬夜はやりづらい相手、自分よりもスピードで上回られると相手がバテない限りフリーには中々させてもらえないだろう。
加えてGK高山と桜王の守備陣も健在で、立見の攻撃を跳ね返していく。
だが、その一方で桜王に攻撃のチャンスは中々巡って来ない。
立見の攻撃が続き桜王の守備に息継ぎを与えさせていなかった。
「(去年とかは総合力で俺達が上回っていたのに、いくら優秀な1年が入ったからって…立見の奴ら何時の間にこんな強くなってんだ!?)」
半蔵の高角度から振り下ろされたヘディングシュートを左手1本で弾き出し、ピンチを救った高山は頬に伝う汗を腕で拭っている。
自分達も決して遊んでいた訳では無い、日々の練習の積み重ねで実力は増しているはずだ。
しかし立見の成長がそれを上回っていた。
他ではやっていないであろう合気道、速い速度でボールを撃ち出すサッカーマシンによる練習の積み重ね。
更に総体を制し、プロユースの横浜に練習試合で勝利した事で各自が自信を持って堂々とプレー出来ている。
「攻めてこ攻めてこー!敵さんこっちの攻めすっごい嫌がってるよー!」
その中心人物である弥一は後押しするように、行け行けと声を出し続けていた。
そして弥一の桜王が立見の攻めを嫌がっていると聞いて桜王守備陣はギクッと内心で動揺してしまう。
防ぎ続けているとはいえ心身共に疲労へと追い込まれ、弥一は彼らが辛い事を心で見抜き、跳ね返されようがしつこく攻撃に出るよう指示。
すると一瞬桜王の守備に綻びが出たか、左サイドにスペースが空いてボールを受けた玲音が前を向かないままヒールで左の空いてるスペースへと蹴る。
そこに玲音に代わって上がっていた翔馬が追い付き、左足でシュート並のスピードがある低いクロスをゴール前へと上げた。
桜王からすればクロスにしては強めのボール、このスピードで日々練習をしている立見にとっては慣れた球だ。
これに飛び込んだのは詩音。
左足で合わせたダイレクトシュートはタイミング良く当たり、ゴール左隅へ飛べば高山の長い腕のリーチを持ってしても取れず、攻め続けた立見がついに桜王のゴールネットを揺らした。
「やりぃーー!」
大事な決勝戦での先制ゴールを決めた詩音、飛び上がって喜びチームメイト達も駆け寄り喜びの輪を作っていく。
立見の攻撃を此処まで凌いできた桜王だが、彼らの怒涛の攻めによってついに守備をこじ開けられると痛い先制点を奪われてしまう。
無失点記録を持つ立見相手にこの1点がいかに致命的か分かっており、桜王に重くのしかかってくる。
「さあさあ、後はじっくり守って完封と行くよー♪」
弥一は明るくマイペースにじっくり行こうと周囲へと伝え、その声は冬夜にも聞こえていた。
「(守りに入る気か、だったら今度はこっちが攻める番だ)」
立見が守備寄りになるなら攻撃のチャンスが増える、前に出るしかなくなった桜王にとっては守備固めは追い風となる。
攻勢に出る桜王、そこに積極的前線へと出る冬夜。
パスが出されボールを受け取った直後だった。
「と見せかけてカウンター!」
「!?」
冬夜の死角に忍び寄っていた弥一がトラップした瞬間を狙い、ボールを冬夜から奪取したと同時に速攻を仕掛ける。
前に出たという事は今明はフリー、攻撃から守備へと桜王の意識が切り替わる間に弥一は明へとパス。
今なら冬夜のマークは無い、明は前を向いてドリブルを実行すると止めに来る桜王の選手をパスと見せかけたキックフェイントの切り返しで躱し、そのままゴール前へ突き進む。
明の目から見てシュートコースは見えた、そう判断するとプレーに迷いは無い。
右足でボールをしっかり当てて振り切れば細身の体からは想像つかぬパワーあるミドルが放たれ、高山が両腕を伸ばしながらダイブするもゴール左上隅を捉えたシュートには届かなかった
ゴールネットは豪快に揺らされ、立見の貴重な追加点が1年で立見の背番号10を背負う明によってもたらされる。
「(じっくり守るって言っておいて…俺とした事があいつの言葉に惑わされた…!)」
リードされた焦りもあったか弥一の周囲への言葉に騙された冬夜、迂闊に前へと出てしまった事を後悔する。
「(やれやれ、敵の時にあいつの心理戦はあまり喰らいたくないな)」
幼馴染が弥一の心理戦を喰らったのを見て少し同情しつつも後半、少し疲労の色が見えた翔馬に代わり優也が左SDFとして出場。
すると後半終了間際、相手のパスをインターセプトした優也が弥一へとパスを預けた後に左サイドを一気に駆け上がる。
これに弥一は優也へと彼でなければ届かないギリギリの位置へと、味方に容赦無いスパルタなパスを左サイドのスペースへと右足で強めに蹴った。
「(弥一め、また…!)」
相変わらず優しくないパスだと内心で思いつつ、優也は全速力で走り弥一のボールに追い付き左足でトラップして足元に収めるとそのまま桜王のエリア内に侵入。
後半アディショナルタイムで足が重くなっている桜王守備陣、優也は1人躱し高山へと迫れば彼が飛び出して来た所を高山の左脇の下を狙って右足でシュート。
これに気付き高山が左脇を締めるも既にシュートはすり抜け、今日3度目の揺れるゴールネット。
「さっすが優也!頼りになるー♪」
「あんな厳しいパス送ってよく言う…!」
「他にはあんなの蹴らないよー、その速さなら行けるって思ったからさ♪」
後ろから弥一が優也へと飛びついて冷静な優也の分まで喜びを見せていく。
優也によるダメ押しのゴールで桜王の集中力はぷっつりと切れてしまい、負けを確信する。
このまま試合は終了、最後の点を決めた優也へと歓喜の輪が作られて、東京Aブロックを制し選手権出場が決定の立見はその喜びを味わう。
先制点を決めた詩音、3点目を決めた優也と呼ばれてインタビューに応える。詩音は明るい調子で応じており、優也は何時も通り冷静な対応を見せていた。
詩音がすぐに立見の歓喜の輪へと戻る中、優也は記者達のある声が聞こえて足が止まる。
「おい、今岐阜の方で決勝凄い事になったぞ!牙裏が…」
「(牙裏…?)」
優也はその中に記憶があった。
総体でベスト4まで勝ち上がり八重葉と激闘を繰り広げていたダークホース校だ。
立見が2年連続の選手権出場を決めている間、岐阜の方では旋風が巻き起こっていた。
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冬夜「去年とか互角に戦えていたはずなんだけどな…すっかり差をつけられちまった」
優也「選手としての個々の差は開いてないだろ、SDFとしてまたお前強くなっているのは間違い無いし」
冬夜「というかお前もそのポジションやるなんて俺に憧れでもしたかー?」
優也「身近な奴を参考にしただけだ」
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