第291話 夏の開幕から突然の出会い
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
開会式から翌日、それぞれの1回戦が始まっていた。
陽射しが最も厳しいであろう昼を避けて午前からのキックオフをどの会場も迎えていく。
「お、琴峯の対戦相手は泉神だ。懐かしいねー」
「そういえば立見…去年の総体1回戦の相手がそこでしたよね…」
「ああ、徳島の高校だよ。キャプテンの泉谷さんを中心に堅い守備を持ち味としてたなぁ」
立見の試合は明日の2回戦が初戦だ、今日は主にスマホでの試合観戦となる。その中で琴峯と泉神の試合が始まりそうなので弥一はスマホに流れるライブ配信を見ていた。
去年の事について振り返る明に大門は泉神について教える、今年は頼れるキャプテンの泉谷がいないがそれでも去年に続いて全国に連続出場を決めており地力を付けて来たのが分かった。
「一緒に北海道の豚丼食べたっけなぁ、あれ美味しかったな〜♡」
「え、豚丼?」
「此処別に追求しなくていいから」
弥一が北海道で食べた豚丼の味を思い出していると詩音は一緒に食べたというのに気になったが、話を広げなくていいと摩央はそこで話を断ち切る。
「今日は食堂に豚丼あったら頼もっと♪」
思い出して舌や腹がそれを求めてしまったか弥一はこの後の昼食を豚丼にしようと決めて琴峯と泉神の試合を見ることに集中。
スマホに映る画面には琴峯と泉神が試合を開始を待つ姿を捉えていた。
今年の泉神も堅守が持ち味であり琴峯と当たると決まれば入念に室への対策を練って来てこのフィールドに立つ。
190cmを超えるDFは用意出来なかったがそれに匹敵する長身のCBは2枚揃えている、彼らで室を封じてロースコアで勝つというのが泉神のゲームプランだ。
「向こう、お前対策で大型選手多く入ってるな」
今年から琴峯のキャプテンを任された巻鷹は向こうの大きな選手2人を見て明らかな室対策だと思った。
「関係無いですよ、此処でぶち破れないと世界で戦うなんて無理ですから」
「お前…ちょっと見ない間に頼もしくなりやがってー!」
フランスで大型選手と競って来た室、国際大会での優勝と経験が彼を強くさせて巻鷹は頼もしい後輩の背中を軽く叩く。
室はあれぐらい破れないと世界で戦えない、そう考えており対策をされても世界で大型DFと戦った室は怯まず前を向いて居る。
そしてキックオフの笛が鳴れば琴峯ボールから始まり泉神ゴールを目指し室は突き進む。
ボールは後ろの方で回しており、室のアシストを多く記録している巻鷹にもボールが来ると読んでそちらのマークも泉神は疎かにしない。
だが琴峯は自軍の最終ラインに近い位置から一気に縦へとロングパス。
絶対的な高さがある室だからこそ昔ながらのシンプルな縦パス1本が活き、そこからチャンスを作っている琴峯の戦法だ。
今回室には高さあるDF2枚、1人が室へと付いており空中戦で競り合う。
「うおおっ!」
「ぐぅっ!」
力強さが増した室の競り合い、相手DFを押し退けて頭で競り勝てばポストプレーで味方の選手へと落としチャンスを作る。
これは相手DFが琴峯のシュートを体で防ぎCKへと流れた。
セットプレーのチャンスに巻鷹が向かうとこのキッカーは彼が務めるのが分かる、右CKからで得意の右足を放り込んで来るだろう。
「(知ってて止められるもんなら…やってみな!)」
なんの迷いもなく巻鷹はターゲットを決めていた、相手も何処に蹴るか分かっている、それでも巻鷹は狙いを変えるつもりは無い。
右足で正確にして高いボールを室へ送るとそれに合わせて室はジャンプ。
マークに付いている長身DFよりも更に高く飛んでおり、先に空中で頭に触れたのは室だった。
そこから高角度のヘディングを思い切り地面へと叩きつけ、跳ね上がって来るシュートにGKは手の下を抜かれる。
ボールはゴールへと入っており室の豪快なヘディングで琴峯が先制、室は暑い中で声援を送ってくれる琴峯の応援団へと向けて右腕を上げて応えて見せた。
「おー、相変わらず見事なヘディングだぁ」
「ああやって室さんは撃つのか…」
室によるプレー、それに繋がったゴールを見て弥一は良いヘディングだと関心しており同じ長身ストライカーとして半蔵は室のプレーを参考に見ている。
そこから室を中心とした攻撃陣は勢いに乗ると、室が来ると見せかけて快速の右サイドハーフ巻鷹がDFの裏へと素早く抜け出してたまらずDFがファール、エリア内でのファールとなってしまい琴峯はPKを獲得。
巻鷹がこれを沈めて2ー0、ただ泉神も意地を見せる。
後ろからロングパスを狙う選手からボールを掻っ攫い一気にGKと一対一に持ち込むときっちりゴールを決めて来る。
2ー1とされてしまうがその直後に巻鷹からのアーリークロスを室がバックヘッドで難しいボールを合わせ、再びゴールネットを揺らす。
「この時間帯で2点差にされるのは相手さんとしては心に来るかな?」
「メンタル的にはかなり来そうだ」
スマホで試合を眺める間宮と影山、時間帯を考えれば琴峯勝利の可能性が高い。
しかし室は2点じゃ満足せず更に得点を狙って行く。
そこに交代を告げる声が聞こえた。
「室、お前此処までだ。すぐ休め」
「あ、はい」
琴峯はこの2点差を守りに来て明日に備え室を此処で下げる。
35分ハーフといえど1回戦からいきなりフル出場で飛ばしてはバテると判断したのだろう、室は2得点で交代となった。
琴峯はこのリードを守り切り3ー1で勝利、2回戦へと駒を進める。
「これ反対側は琴峯の可能性あるかもだぞ」
「うーん、最神に琴峯に八重葉…何処上がって来ても強い事は確実ですよね」
試合を見終わった田村と川田がそれぞれ話し、立見と反対側のブロックは琴峯かもしれない、今日の試合を見る限りそれもおかしくなかった。
「じゃあお昼行こうか♪ご飯ご飯ー、豚丼ー♪」
「昼飯は逃げないだろ、落ち着けよ」
昼の時間となって弥一はルンルン気分で食堂へと向かい、優也はその様子に軽く息を吐きつつ彼へとついて行く。
「あ、あの!神明寺弥一さんですか!?」
急に自分の事を呼ぶ声に気づき弥一はそちらへと振り返った、そこに居たのは帽子を被った小柄な赤髪の少年だ。
「そうだけど君は?」
「牙裏学園の1年で三好五郎って言います、初めまして!ご活躍は拝見してます!」
「あ、こちらこそー」
礼儀正しく挨拶してくる五郎に弥一も挨拶を返す。
「あの…神明寺さん」
「何か話あるみたいだけどー、それならご飯でも食べながら話そうよ♪食堂来る?」
「え?あ、はい」
自分に用がありそうな五郎に対して会ってまだ一分と経っていないにも関わらず昼食へと誘う。
まずはご飯の時間優先な弥一だった。
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詩音「誰あの1年ー?」
玲音「絶対神明寺先輩のファンだよねー?」
摩央「ファンか…憧れって可能性はあるかな、あいつ結構ファンいるし」
半蔵「神明寺先輩は他校の者ともああいう感じで食事に誘うのですか?」
大門「誘うっていうかご飯の時間優先しただけかな…?」
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