第271話 攻守で圧倒の日本は止まらない
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
時を遡って日本のキックオフ、フランス時間の昼12時きっかりに試合は始まりスウェーデンがボールを持って攻め込む。
『大柄な体格に加えて足元の技術に定評ある選手を揃えたスウェーデン、優秀なタレントは揃っています。後は結果が欲しい所!』
「3番上がっててフリーだ!気をつけろー!」
「おお!」
最前線から相手DFが上がって攻め上がる姿が見えれば室はDF陣へと声をかけ、政宗がその動きに注意して相手の攻めを自由にさせない。
「あいつロングスローあるで!ごっつ飛ぶから皆気ぃつけぇ!」
スウェーデンのスローインでボールを持った選手がロングスロー得意だと光輝が皆へと伝えて警戒させる、そしてロングスローがゴール前へと飛んでスウェーデンの長身選手が詰めに行くと190cm近い長身の番の頭が先に当たってボールをヘディングでクリア。
「詰めてるよー!藤堂さん!」
そこに弥一の声がかかるとセカンドボールを拾おうとしていた想真よりも一歩速く10番のミカエルが詰め、その位置からミドルシュートを撃ってくる。
ゴール右下へと飛ぶがこれを藤堂が地面に倒れこみながら飛んで来たシュートをしっかりとキャッチ、スウェーデンの序盤から仕掛ける猛攻を守り得点を与えない。
『日本危なかった!青山のクリアボールをスウェーデンの10番ミカエルが狙っていましたがUー19日本ゴールを守る藤堂が素晴らしいセーブ!頼もしい守護神にしてキャプテンだ!』
『世界に比べて日本はGKのレベルが低いと言われてきましたけど、この世代は素晴らしいですね。藤堂君が居ますし高校No1と言われた工藤君とか逸材が揃っていますよ』
「ナイスディフェンス!守備陣その調子だ!」
今のシュートは藤堂としても防ぎやすいボール、楽なシュートにまで相手の攻めを追い詰めたDF陣を褒めつつ藤堂は右の辰羅川へと思いっきり右腕を振りかぶってスローイング。
「行け行けー!今ならスウェーデンの右薄いよー♪」
相手の左SDFは上がりからまだ戻りきっていない、攻めるなら今だと弥一は後ろから辰羅川の背中を押すようにコーチング。
弥一に言われずとも辰羅川は右に隙があると狙っており、今そのチャンスが来てすかさず大きくボールを運ぶドリブルを見せる。スウェーデンDFはゴールの方へと戻って1人が辰羅川へと迫ると大きく蹴り出した隙を狙いスライディングに行く。
だがこれは彼の誘い、ボールが離れたらすかさずDFは狙いに来るだろうと罠を張っていた。そして獲物はその罠に引っかかる。
スライディングがボールに当たる前に軽くボールを浮かせて躱すと自らもスライディングを回避、この辺りの技術はプロのユースチームで身に付けた物だ。
スウェーデンのゴール前へと迫ればスタンドの歓声は大きくなってくる、このまま右サイドを独走かと思えば辰羅川は此処でゴール前へと右足でクロス。
高精度の右足によるアーリークロスはハイボールで室の元へと飛んでいた。
相手DFのカーマイルと同時にジャンプし、高さ勝負は身長195cmを誇る室の方が相手より高い。室はこのまま狙いには行かず、バックヘッドでファーの方に構える照皇へと頭で送っていく。
これに頭で照皇が合わせようとするが先にGKのゴーグが飛び出してパンチング、照皇の頭よりゴーグの拳がボールに当たる方が速くエリアの外の左側タッチラインへとボールは流れてそのままタッチラインを割ろうとしていた。
スローインだ、となった瞬間ラインを割るギリギリで優也がボールを足で止めており、プレーは途切れず続行される。
『これはラインを割っていない!流れを断ち切らせない歳児!』
GKが飛び出している今ならガラ空き、だが優也の前には右サイドハーフのクヌートが立ち塞がり撃たせまいとしていた。
「(三津谷、空いてる!)」
この時に優也はゴール前、外側の中央を走る光輝がフリーだと気付き右足で速いボールを送る。これにクヌートの長い脚が伸びて行くが僅かに及ばず。
光輝は優也からのボールを左足でワントラップすれば右足でミドルを放つ。GKは飛び出してパンチングした時に着地出来ず地面に倒れたせいでまだ戻りきれていない。
それをカバーするようにDFがゴールを固めるが光輝のシュートを弾くと日本にとってはラッキーな事にこれがスウェーデンゴールへとそのまま飛んでいったまま、コースが変わっただけで弾ききれなかった。
ボールはスウェーデンのゴールマウスへ吸い込まれるように入り、日本の先制ゴールが決まるとスタジアムの観客による歓声が場内を包んでいく。
『決まった日本先制ー!!パンチングで弾き出したボールを歳児が拾って三津谷へと繋ぎミドルで決めてくれました!』
『GKが着地出来なかったおかげでゴールが空いていたのが大きかったですね、歳児君も諦めずに繋いでくれましたし幸先良い先制です!』
日本は光輝と優也を中心に先制した喜びの輪が広がり、決勝戦を目指す日本にとっては非常に大きなゴールだ。
1勝が欲しいスウェーデンはキックオフで再開後に再び攻勢へと出る。
「8番囲むで!」
想真の掛け声と共に想真、優也の2人でスウェーデンの8番バルトサールを囲んで行けば想真は小さな体でガツンと肩からぶつかって行けば相手は力を入れて強靭な肉体でチャージを跳ね返していく。
だが想真の相手で気を取られていたバルトサール、優也は想真へと意識が向き切っている相手の隙を突くとボールを奪い取る事に成功。
守備の連携プレーで浅い位置からボールを取ると大きくボールを自ら前方へ蹴り出し、それを自慢のスピードで追いかける運ぶドリブルを見せて優也はカウンターに出る。この時司令塔の光輝にはよりマークが厳しくなりパスを出すのは困難だった。
「優也右右!タツさんフリー!!」
そこに再び弥一からのコーチング、DFの位置から見て右の辰羅川はフリーの状態。敵の守備が左寄りになっている今、そのまま左に攻め込むより変えた方が良い。
弥一の言いたい事を優也は察したか、前方から来る相手DFに対して優也は左足でボールを蹴ろうとしていた。そこまで左足でのキックを優也はあまり得意としていないがそういう事を相手は知らない。
蹴り出して来ると思いそのコースを読んで立つと蹴ると見せかけてのキックフェイント、そして右足で蹴りやすい体勢を作れば優也は右足で辰羅川の居る右へサイドチェンジ。
これを辰羅川が右足でトラップすれば今度はそのまま右コーナー目掛け一直線でドリブル。今度はシンプルに右足でのクロス、高いボールが上がってそれに合わせて室が飛ぶ。
しっかりと額でボールを捉えれば思いっきりヘディング、空中戦で競り合うDFの上を行く頭でのシュートはゴーグも手に当てられず先制ゴールからそう時間が経たない間に日本が教科書に載るお手本のようなゴールを決めてみせた。
『日本の巨人高い!室の叩きつけるヘディングによって日本2点目ー!決勝進出に大きく前進するゴールです!』
『乗ってきましたね日本、この調子で得点重ねられそうですよ!』
「っしゃー!」
室は得意のヘディングを決めれば大きくガッツポーズ、アシストを決めた辰羅川共々祝福を受けていた。
2点を先行されたスウェーデン、早々に取り返そうとなるが弥一の声はそれを阻む。
「タツさん右狙ってるよー!」
「政宗10番マークー!」
「想真カバーよろー!」
スウェーデンの攻撃の先を行く弥一のコーチング、自ら動く事なく仲間に指示を送り効率的に動かして相手に攻め込ませる事を許さない。
同級生でも年上でも関係無しで弥一はガンガン指示を出して仲間を動かし、守備の指揮者となっていた。
攻めあぐねるスウェーデン、そこに光輝がボールをキープしていたミカエルからボールを奪い取ればその位置から右足でスウェーデンのDFラインの間を抜く地を這うグラウンダーのロングスルーパスを送る。
それに反応し走るのは照皇だ。
スピードも兼ね備える彼はこの速いボールに追いつきGKと1対1を迎え、冷静に飛びつく相手を躱せば軽く左足で流し込む。
日本が前半で3点目、フランスの観客達はゴールが決まり歓声が沸くと同時にどよめきも起こっている。こんなにゴールを決められる国だったのかと。
『日本前半で早くも3点目ー!照皇きっちりとGKとの1対1を決めてくれました!』
『三津谷君の取ってすぐにあのスルーパスもまた凄いですね、日本はこれもう勢い乗ってます!』
前半アディショナルタイムで3点の差を付けられ、スウェーデンは下を向いてしまう。このまま2点差でハーフタイムならまだ希望はあっただろうが3点差での前半終了は心に重くのしかかるだろう。
そして日本の攻撃は止まらない、後半も押し気味で試合を進める日本。スウェーデンは交代で流れを変えようと試みるが今の日本の勢いを止めるまでには至らず。
辰羅川から室へのアーリークロス、これを室はDFと空中戦で競り合いながら頭で落とすとそこに走り込む想真。
右足で思い切りミドルを打ち込みGKゴーグがこれを弾くと詰めていた照皇、思いっきり頭から飛び込むダイビングヘッドで弾かれたボールを押し込み4点目。
更にダメ押しは後半20分、DFからボールを奪った照皇がそのまま再びGKと1対1になり前半のリプレイを見てるかのような相手を躱して左足で流し込むゴールが再び生まれる。
このゴールで照皇はベルギーのアドルフに続きハットトリックを達成、照皇は途中交代となり此処で仕事は終わりだ。
後は日本のDF陣がこれを最後まできっちりと守り、アディショナルタイムはそう取られる事なく試合終了を迎えて日本は全勝で終えて照皇は全試合ゴールの快挙、更に守りは4戦無失点と抜群の成績でグループAを首位通過していた。
同じ頃アメリカはコスタリカ相手に3ー0で勝利、この結果グループAは1位日本、2位アメリカだ。
日本5ー0スウェーデン
照皇3
三津谷1
室1
「ハットトリックやったの俺だけってなってたのに日本もやってきたのか」
試合を終えたベルギーのロッカールーム、ナイジェリアとの試合は3ー0でアドルフの2ゴール、ルイの1ゴールでグループBの首位を決める。
2位は地元フランスとなり3位争いはアメリカ対フランスだ。
アドルフは試合を終えるとグループAの速報を聞かされ、日本がスウェーデンを5ー0で下した事以上にハットトリックを決められたのに対しての方が驚きが大きかった。
「こいつか、ショウオウって言ったっけ。こいつは抑えとかないとな、それだけでなくでっかいもう1人のFWも厄介だ」
「…ああ」
スマホの試合動画で動きをチェックするアキレス、こいつは厄介だという言葉に物静かなドンメルは小さく頷く。
「何点差で勝って来ようが関係ない、どうせこっちが日本の攻撃も守備も両方ぶっ潰すのに変わりは無いんだ」
大差で勝ってきた日本に対してルイは大きな驚きは特に無い。
ベルギーの優勝に何も支障はないといった感じで水を勢い良く飲み干す。
この試合でたいして目立つ動きを見せなかった存在、だがアドルフは知っている。目立たない彼こそが実は最も厄介な存在である事を。
それはチームメイト時代に知っている。
「(いずれこうなると思ってたけど早いもんだ、まあベルギーが勝つけどな)」
弥一の存在を警戒するアドルフ、それでも祖国の誇りがあり代表で負ける事は出来ない。
アドルフもまた強い愛国心を持つ男、ベルギー勝利の為なら力を注ぐ事は惜しまない。日本戦も加減無しで戦うつもりだ。
ベルギー3ー0ナイジェリア
アドルフ2
ルイ1
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想真「オリンピック始まったなぁー」
弥一「だねぇ、開会式凄かったなぁ。こっちのUー19の開会式とかもそれぐらい派手にー…」
想真「無理やろ、規模が違い過ぎるわ。10の国が参加に対してあっち何カ国出てる思っとんねん」
弥一「僕らも飛び級で五輪代表なってたらなぁ、とにかく向こうの先輩達には是非頑張ってもらおう♪」
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